通常保育よりも時間を短縮して行う慣らし保育。段階的に延ばすことで子どもの不安を軽減するねらいがあるようですが、スムーズに保育園の環境に慣れるためには、どのようなスケジュールで行なえばよいのでしょうか。今回は、慣らし保育の目的や進め方のポイントを紹介します。また、困ったときの対処法もまとめました。
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慣らし保育の進め方とは?
慣らし保育とは、短時間から段階的に時間を延ばし、通常保育へと移行することをいいます。
新しい環境は、子どもの心身にとって大きな担となることが考えられるため、一人ひとりの様子にあわせて少しずつ保育時間を調整しながら、園生活への不安や戸惑いを和らげていくことを目的としています。
まずは慣らし保育の期間と、おおよそのスケジュールを確認しましょう。
期間
慣らし保育の期間は、園の方針や保護者の就労状況などによって異なりますが、数日~2週間程度が一般的な目安のようです。
ただし、予定していた期間が終わっても、子どもの様子によってはさらに延長という場合もあるようです。
特に0歳児から1歳児の新入園児にとっては、短時間でも保護者と離れることを不安に感じ、なかなか慣れないこともあるかもしれません。
子どもの様子をよく把握したうえで保護者とも相談し、期間を決めるようにしましょう。
スケジュール
慣らし保育は、主に以下のようなスケジュールで進めるようです。
- 2時間保育
- 午前中まで
- 給食まで
- お昼寝まで
- 午後のおやつまで
- 通常保育
保護者の勤務状況によって早朝や夕方に延長保育を予定している場合は、慣らし保育にそのスケジュールを組み込むこともあるようです。
一方、子どもの様子によってはスムーズに進まないことも考えられるでしょう。その際は保護者と相談して再調整するなど、柔軟な対応をとることが大切です。
慣らし保育の目的
慣らし保育には、子どもに対するねらいだけでなく、保護者や保育士にとっての目的もあるようです。それぞれの内容をくわしく紹介します。
子どもが園生活に馴染むため
慣らし保育の目的やねらいとして、「子どもが少しずつ園生活に馴染むこと」が挙げられます。
親元を離れて、初めて出会う保育士さんや友だちと過ごすのは大きな試練となるかもしれません。まずは短時間保育から始め、「必ずパパやママが迎えに来てくれる」という安心感を知ってもらうことが大切です。
そのため園では、少しでも子どものストレスを軽減し、スムーズに新しい環境に慣れていけるような援助が必要になるでしょう。
保育士が子どもや保護者との関わり方を知るため
保育士にとっては、これからどのように子どもと関わっていくのか知ることが目的と言えそうです。
子ども一人ひとりの性格や好みなどを把握するためにも、慣らし保育の期間が重要になるでしょう。
また、保護者の方と子どもの様子についてできるだけくわしく伝え合うことで、信頼関係を築くための第一歩となるかもしれません。
子どもや保護者の不安を和らげるためにも、慣らし保育の間に関わり方のコツをつかめるとよいですね。
保護者が子どもを預けることに慣れるため
保護者が子どもを預け、新生活に慣れることも目的の一つです。
「保育園に子どもを預けるとどんな生活リズムになるんだろう」、「仕事と育児を両立していけるだろうか」と、不安を抱えている保護者も多いかもしれません。
そのような気持ちを受け止め、保護者の方が安心して子どもを預けられるようにしていくためにも、慣らし保育は重要な意味をもっていると言えそうです。
目的を押さえたところで、次に進め方のポイントを紹介します。
慣らし保育を進めるときのポイント
慣らし保育の進め方として、どのようなポイントを押さえればよいのでしょうか。
入園前に子どもの様子を聞く
慣らし保育を進めるにあたって、事前に新入園児の保護者から子どもの様子をしっかりと聞いておくことがポイントです。
それにより、受け入れ前に家庭での生活に近づけた保育環境を整えられるかもしれません。どのような遊びが好きなのか、苦手な食べ物はあるか、就寝時のクセはあるかなど、できるだけくわしくヒアリングしましょう。
また、保護者にも育児についての悩みや不安、就労状況などを伺い、進め方について話し合っておくことが大切です。
少しずつ保育時間を延ばす
慣らし保育は、以下のような例に沿って段階的に進めるとよいかもしれません。
- 最初の3日間:9時~11時(2時間保育)
- 2日間:8時半~12時(給食まで)
- 2日間:8時半~14時半(お昼寝まで)
- 1日間:8時半~15時半(午後のおやつまで)
- 2日間:8時半~16時(終日保育)
上記は10日間で慣らし保育を進める場合のスケジュール例です。子どもの様子や保護者の就労状況によっては、前後するかもしれません。
このようにはじめはごく短時間の保育からスタートし、様子を見ながら徐々に時間を延ばしていくと、目安が明確になり保育士さんも園生活の流れを把握しやすいでしょう。
【ケース別】慣らし保育で困ったときの対処法
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スケジュールや進め方に沿って慣らし保育を行ないたくても、子どもが泣いたり食事をとりたがらなかったりするなど困るような場面があるかもしれません。
ここでは、ケース別の対処法を紹介します。
子どもが泣いているとき
安心できるような言葉かけをする
保護者と離れることに慣れていない新入園児(特に0歳児~1歳児の乳児)は、登園時から大泣きすることも考えられます。
子どもの姿を見て、保護者の方も預けることに罪悪感を抱いてしまい、なかなか離れられないケースもあるかもしれません。
しかし、そういった場合は保護者に対して「部屋のなかには他の保育士もいますし、しっかりとお預かりしますから大丈夫ですよ」といった安心できるような言葉をかけて預かりましょう。
そして保育室に入ったら、不安で泣いている子どもの気持ちに寄り添い「さみしいよね。でもママはちゃんとお迎えに来るから大丈夫だよ。それまで先生といっしょに遊ぼう」と前向きな言葉をかけることが大切です。
状況に合わせて、接し方を変える
なかには一日中泣いている子どももいるかもしれません。
その場合は抱っこしたり、興味のありそうなおもちゃを見せたりと、できるだけ不安が和らぐような対応をすることで少しずつ落ち着いていくでしょう。
給食やおやつを食べないとき
慣れない環境のなかで、給食やおやつを食べたがらない子どももいるかもしれません。
保育士として「しっかり食べさせなければ」と思いがちですが、無理に食べさせてしまうと、子どもが食事そのものにストレスを感じるようになりかねないので避けましょう。
慣らし保育では完食を目指すのではなく、子どもが楽しんで食事をとることが大切です。一口食べたら「おいしいね!」と声をかけたり、思いきり褒めたりと、楽しい気持ちになれるような声かけを意識しましょう。
また、園の食器を使いたがらないケースもあるので、家庭で普段使っているスプーンやフォークを持ってきてもらうのも一つの対処法かもしれませんね。
お昼寝をしないとき
慣れない環境だと、なかなかお昼寝ができないという子どももいることでしょう。
保護者の方に家庭での寝かしつけ方法や入眠時の様子を聞いておき、個別に対応できるようにしておくことが大切です。
家庭で寝るときにいつもそばにあるものを持ってきてもらうなど、できるだけ「普段通り」眠りに入れるよう援助しましょう。
また、0歳児など午前と午後にお昼寝をすることが生活リズムになっている子どももいるかもしれません。無理に園のリズムに矯正するのではなくて、家庭の生活リズムに合わせられるよう環境を整えることがポイントです。
慣らし保育が終わり、園生活に慣れたら徐々に午後のお昼寝のリズムに合わせていきましょう。
慣らし保育は子どもの様子に合った進め方にしよう
今回は、慣らし保育の目的や進め方のポイントを紹介しました。
子どもと保護者両方にとって、お互いに初めて離れて過ごす慣らし保育。0歳児でもすんなりと園生活に馴染める子どもや、なかなか慣れずに泣き続けてしまう子どもなど一人ひとり様子はさまざまでしょう。
そのなかで大切なことは、「保育園は安心できる場所」だとわかってもらうことです。子どもの不安な気持ちに寄り添い、家庭との連携を密にとりながら、慣らし保育の援助ができるとよいですね。