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こんにちは、保育ライターの佐藤愛美です。
過去に保育園や子育て支援施設の職員として働いた経験を活かし、現在はライターとして保育や子育てに関する情報発信を行っています。
新年度を迎えるとともに、新たな保育園で再スタートを予定している方もいるのではないでしょうか?学校を卒業した後に新卒で採用されるのと、何年かのキャリアを経て新たな保育園に転職するのとでは心持ちが違います。
私も転職をした時には、再び1からスタートを切るにあたり、新しい職場の人間関係にうまく馴染めるか不安でした。
転職者のジレンマ:積み重ねた保育士経験○年、転職先では新人
過去に勤務した保育園でキャリアを積み、確かな技術と知識を身につけてきた場合、転職の際には「また新人からスタートか……」と葛藤するのではないでしょうか。
私が転職した時にも、新たな職場には自分よりも年下で経験年数の浅い保育士がいました。しかし、転職先では自分が後輩になるのです。
さらに、保育士は他業種に比べてチームで行う仕事が多いため、すでに職員同士の人間関係がしっかりとでき上がっている可能性が高く、中途採用で飛び込むのは少なからず勇気がいるものです。
新卒の保育士であれば「先輩!何でも教えてください!」という姿勢ですんなりと溶け込んでいきやすいのですが、それなりの経験年数があれば、上司や同僚からの期待の眼差しも浴びることになり、プレッシャーも感じます。
新しい職場でうまく軌道に乗るためには、どうしたら良いのでしょうか……?
ポイント1:まずはその園のルールを知る
保育園が10あれば、10通りのカラーがあり、保育理念や仕事のルールもさまざまです。おおよその雰囲気や理念は転職をする前に調べているので分かっているとは思いますが、細部のルールなどは職員になってみないと分からないものです。
例えば、A園では、クラスだよりは手書きで、担任がある程度自由に作成して良いものだったけれど、B園では、パソコンで作成し、園長の方針によりイラストは一切使用しない決まりがあることを知り、園によってこんなにやり方が違うのかと驚いたこともあります。
子どもたちへの関わり方も園によって違います。
子ども同士のトラブルが起こった場合、保育士は極力介入せず自力で問題解決をする力を育もうとするC園。マンションの一室で保育を行うD園は、怪我を防ぐため、トラブルがあればすぐに保育士が介入すべきと考えられている。
……といったように、前の保育園で当たり前だと思っていたルールが、新たな保育園では全く通じなかったりします。
私も、転職後に何の疑問も持たずに前の職場のやり方で保育を行ったところ、先輩保育士から叱られたことが多々あります……。
しかし、園によって保育の仕方が違うということは、自分の引き出しを2倍に広げるチャンスでもあるのです。
1か所の保育園でのやり方を貫くより、複数の保育園のアイデアを身につけることで、保育士としてのスキルアップにも繋がります。
しかし、どうしても納得できない園のルールがあれば、真っ向から批判するのではなく、なぜそういうやり方をするのか理由を尋ねてみましょう。新しい発見があるかもしれません。
ポイント2:年下の先輩とは「教える」「教えられる」の協力関係を作る
自分よりも経験の浅い保育士に、保育のことを教わるなんてちょっと複雑な気分……。と、思ってしまうのは仕方のないことです。
これまでは後輩指導をする立場だったのに、1年目や2年目の保育士に「教えてください」と頭を下げるのは、正直なところ抵抗がある……と感じる人も多いのでは?
しかし、年下の先輩と上手に関係を作ることで、以下のようなメリットがありました。
・「分からない」「なんで」という気持ちを共有しやすい。
→園のルールや方針などに対して感じている疑問を、共感してくれやすい存在です。「私も最初は疑問に思ったんですよ!」と打ち明けてくれたことも。
・園に関することは教わる、子どもに関することは教える。
→自分よりも長く勤めているため、園に関する決まりごとなどは遠慮なく聞いてみましょう。(自分より年下だと、聞きやすいという良さも……)
逆に、子どもへの関わり方に関しては、過去の経験から教えてあげられることが多いはず。教える・教えられるの相互関係が作りやすいのです。
・年下の保育士は新しいアイデアをたくさん持っている。
→手遊びや工作など、新しい遊びは常に生まれ続けています。自分が学生時代に学んでいなかったことを、年下の保育士が知っていることもあります。
年齢に関係なく、知らないことはどんどん教わったほうが得です!
ポイント3:環境整備や雑務などを、初心に戻って丁寧に行う
保育士経験が長くなってくると、保育室の環境整備や細やかな雑務などは後輩に任せっきりだった、という方もいるでしょう。
私が転職先ではまず行ったのは、初心に戻り、雑務を丁寧に行うことでした。
忙しい保育士にとって、トイレ掃除や保育室の整頓は早く手放したい仕事かもしれません。しかしそれらは、担任の手で丁寧に行うことにより、子どもたちの安全や衛生を改めて考えるきっかけにもなるのです。
特に新しい職場では、どこに何が置いてあるのか、注意が必要な場所などがすぐには分かりません。子どもたちが保育園にいない土曜日や登園前の時間を使って、じっくりと環境整備を行うことで、園のことを知る良い機会にもなりました。
また、子どもたちに直接関わらない仕事を一つずつ大切に行うことは、他の職員との信頼関係を築くための一歩にもなります。
ポイント4:部活経験や出身地・・・自分の「引き出し」をアピールしていく
転職先の保育園のルールを身につけていくだけでなく、自分がこれまで培ってきたものをアピールしていくことも大切だと感じました。
転職者の歓迎会を開いてくれる場合は、他の職員とフランクに話して自分のことを知ってもらうチャンスです。出身地、学生時代の部活、前の職場での遠足の場所など、話しやすい話題を選ぶと、自然と会話が広がっていきます。
「○○出身ってことは、あの手遊び知ってる!?」
「吹奏楽経験者なの?じゃあ発表会は保育士で演奏をしようよ」
などなど、自分をアピールすればそれだけ興味を持ってもらえます。保育士たちにとっても、転職者は刺激的存在のようです。自分の中になかったアイデアや技術が相互作用を起こし、これまでにできなかった保育が実現するかもしれません。
「新人だから」と恐縮し、自分の引き出しを出し惜しみするのは、転職先の保育園にとっても損失になるのです。
自分のペースで新しい職場に馴染もう
転職をすることにより、人間関係や仕事内容が変わるだけでなく、ライフスタイルにも変化が起こります。最初のうちは大きな環境変化に戸惑うことが多いかもしれません。
私は過去の転職先でスタートダッシュを頑張りすぎて、1か月後には体調を崩したこともあります……。
自分のペースを大切にしながら、新しい園で自分らしい保育が行えるといいですね。
ライタープロフィール
佐藤愛美
元保育士のフリーライター。現場で働く保育士や、保育園に関わる保護者や地域の人々に向けて、リアルな情報発信を行っています。
好きな場所は沖縄の離島。「地域活性化×子育て支援」というテーマにも興味があります。