保育園ではさまざまな絵本を読み聞かせることでしょう。実際に絵本を読むことで子どもたちにとってどのような効果があるのを考えながら、年齢に合わせた絵本を読むことが大切になりそうです。今回は、0歳児向けの絵本の選び方を詳しく紹介します。子どもへの効果もまとめたので参考にしてみてくださいね。
子どもの「読む力」を培う土台となるのが「読書」ですが、読書が好きになるかならないかは、幼い頃の絵本との関わりが大きく影響します。今回は、そんな読書体験の基礎ともいえる「絵本」についてご紹介します。
読んであげたい絵本の選び方(0歳児)
◯ポイントは絵の色や輪郭がはっきりしているもの・リズムの良いもの
赤ちゃんは生まれた時には視力が弱く、成長とともにどんどんと良くなっていきますが、1歳を過ぎても0.2ほどしかありません。
そのため、絵は大きく輪郭がはっきりしていて、色が目立つものが赤ちゃんの興味を惹きます。
逆に聴力はとても発達しているので、耳に聞こえ良いものが良いです。
繰り返し言葉や擬音が多くリズミカルで、赤ちゃんにとって好きなものが短く書かれているものがオススメです。
また読み聞かせの際に、色んな人が読んであげるのは効果的ですが、最初のうちはお腹にいる時から聞いていたママの声で読んであげたほうが、赤ちゃんは安心して聞いてくれます。
◯子どもにしかわからない謎の世界【もこもこもこ】
もこもこもこ
作:たにかわ しゅんたろう
以前にfacebookでご紹介した時にも大反響があった【もこもこもこ】。
最初は「しーん」。
地面の一部が盛り上がって「もこ」。
「もこもこもこ」「にょきにょき」。
大人には謎の世界観ですが、わかりやすい絵と擬音の数々で子どもの心はわしづかみ。
保育園で一日中読んでいるという保育士さんもいらっしゃいました!
◯【じゃあじゃあびりびり】
自動車は「ぶーぶーぶーぶー」、犬は「わんわんわんわん」。
赤ちゃんにもわかる身の回りにあるさまざまな音がつまった絵本です。
イラストもカラフルで赤ちゃんの興味を耳と目と両方から満たしてくれます。
少し大きくなると真似して声を出してくれるので、大人と子どもと一緒に楽しめる作品です。
◆絵本読み聞かせの効率
◯コミュニケーションに最適!
絵本の読み聞かせは、その絵本を読んでいる時間を共有する事。
保育士と子ども、もちろん母と子、父と子という関係をより深める事ができます。
物語の中の喜び、悲しみを分かち合う事が、共感を呼び、強い絆を生みます。
お昼寝の前、夜寝る前、「この絵本を読んで」と子どもがねだる事もあれば、「この絵本を読むね」と保育士・保護者が言い、お互いの興味を引出して、愛情を深めましょう。
◯心の成長、想像力を刺激する
絵本の読み聞かせには、子どもの脳の大脳辺縁系を活発にする働きがあります。
大脳辺縁系が活発になると、喜怒哀楽の感情が豊かになり、やる気を生み出しますので、言葉をもとに自らイメージし、想像の翼を広げます。
言葉をもとに空想の世界を楽しむなんて、いい事ばかりでしょう。
また、子ども同士の遊びの幅も広がりますし、その結果コミュニケーション能力も向上。
知識も身に付くので、本当にいいことばかりです。
◯ボキャブラリーが増える
子どもたちは、読み聞かせによって、耳で聞いた言葉を自分の言葉にして行けるのです。
小学校に入学した一年生の話す言葉を聞けば、その違いは歴然。
読み聞かせをたくさんしてもらっている子は、表現が豊かで、言葉づかいも上手だとか。
絵本によって身に付くものは、本当にたくさんありますね。
絵本が起こしたある「奇跡」について
◯実話
絵本の読み聞かせは大切!という事は広く知られていると思いますが、その絵本の力で重い障がいを乗り越えた親子の実話がある事をご存知でしょうか。
クシュラは1971年ニュージーランドで生まれた女の子です。
生まれつき染色体に異常があり、生後すぐに身体や知能に重度の障がいが見つかりました。
染色体に異常が起こると内臓・視聴覚・形態・知能・運動などあらゆる部分に障がいを伴います。
「自分で物を持つ事ができず、目で何かを見る事も難しい」
「呼吸器官に異常があり、1時間も寝ている事ができない」
「一年の間に幾度も危篤状態になり、手術や入退院を繰り返す」
他にも数えきれない非常に複雑な疾患があり、当時同じ障がいを持つ人は生後一年以内に90%が死亡すると言われていました。
回復はもちろん育つ事さえ絶望的と診断されても、クシュラの両親は希望を捨てませんでした。
何も反応を示さないわが子を抱え、懸命に治療法を探し続けました。
その中で、かすかな希望の光を見つけました。
昼も夜も眠る事ができず、むずかる赤ん坊との長い時間を埋めるために始めた「絵本の読み聞かせ」に生後4カ月のクシュラが強い関心を示したのです。
◯読み聞かせた絵本は140冊
母親はクシュラが起きている間中はクシュラを抱いて絵本を読みました。
可能性を信じて、何度も繰り返し繰り返し、大量の本を読み聞かせました。
3歳までに読んだ本は140冊。
本によっては100回以上。
クシュラがフレーズを丸暗記するほどまで毎日欠かさず読み続けました。
母親はいつも片手にクシュラを抱き、もう片方には絵本を持ちながら世話を続け、10分置き程度にクシュラの言った事や成長の証とわかるものをメモしていきました。
クシュラへ語りかける言葉の洪水と、絶え間ない両親のスキンシップ。
外界と遮断されていた彼女にとって、絵本は大切な懸け橋となりました。
並大抵では到底不可能な両親の努力により、障がいを乗り越えてクシュラの脳に刺激を与え、彼女の心を外へ、外へと向かわせました。
そうして、ついに奇跡が起こります。
1歳まで育つのも困難と言われる中、クシュラは生き続けただけでなく、3歳になる頃には身体のハンディはあるものの、豊かな感情と言語能力を習得、他の子どもと遜色ないほどの発達を見せました。
特に知能の発達は目覚ましく、さらに5歳になる事には平均以上の知力となりました。
そして、粘り強く治療を続けた事で筋力も回復し、クシュラは奇跡的な成長を遂げる事ができました。
その後クシュラは一般の子どもと同じ学校に通い、成人しました。
母親はここで彼女に自立を進め、共同住居で暮らすようになりました。
両親がいなくなっても彼女だけでしっかり生きて行けるように、と将来を考えての事でした。
それから数年後、母パトリシアは40歳という若さでこの世を去りました。
まさに命と人生をかけて、絵本がもたらす力を実証したのでした。
◯クシュラが読んでいた絵本
クシュラが特にお気に入りだったのがブルーナの絵本でした。
そして、「はらぺこあおむし」、「かいじゅうたちのいるところ」「三びきのくま」など、どれも現代でも愛され続けている本たちを読んでいました。
小さい頃空想しながら読んでいた絵本たち。
親が与えてくれたあのわくわくする日々があったからこそ、今の自分があるのかもしれませんね。
絵本にある力
いかがでしたでしょうか。
クシュラの実話でもわかるように絵本は「生きる力」を育てる力があります。
誰もがわが子には、「想像力豊かで、語彙力があり、人の気持ちのわかる子に育ってほしい」と願うかと思いますが、絵本にはそうした能力を育てる力もあります。
そして、保育園に預けられている子どもたちに、日中、絵本を読んであげられるのは保育士です。
たくさんの絵本を読み聞かせてあげましょう。