自園の即戦力を募集するためにも、保育士さんの中途採用フローを形成したいと考える担当者の方もいるかもしれません。採用計画の立案や求人募集、面接など入社までの一連の流れを把握し、人材の確保に役立てていきましょう。今回は、保育士さんの中途採用フローの必要性やメリット、採用活動を進める際のポイントを解説します。
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■目次
中途採用におけるフローの必要性やメリット
中途採用フローとは、企業が中途雇用を行う際に実施する「採用計画から入社までの一連の流れ」のことをいいます。
採用活動をスムーズに行うために計画を立て、確認を行うことで「採用成功のために必要なポイント」や「面接、選考の在り方」などを明確化できるでしょう。
中途採用フローの形成に取り組むと、以下のようなメリットがあります。
- 採用の成功に向けて道筋を立てて活動できる
- 目標の達成に向けて必要なことを精査できる
- 求める人材を明確化し、採用の合否に役立てられる
保育士の中途採用の繁忙期は、求職者の動向を考えると「1月~5月」となり、長期的な採用活動になることが予想されます。
この時期は卒園式や入園式などの行事があり、多忙な施設も多いことでしょう。
保育業務と採用活動の両立に取り組むためにも、採用フローを作成し、人材確保に役立てられるとよいですね。
保育士の中途採用の大まかな流れ
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まずは、保育士の採用フローの形成に伴い、採用計画の立案から入社まで一連の流れを見てみましょう。
①採用計画の立案
②募集開始
③応募受付・書類選考
④園の見学・説明会
⑤面接・実技試験
⑥選考・評価
⑦結果通知・内定
⑧入社
園によって園見学や説明会の実施の有無は異なります。
求職者に園の雰囲気や保育方針などを伝えられるよい機会になるため、いままで開催していない園でも実施を検討してみるとよいでしょう。
次に、採用フローに沿って、中途採用を行う際の重要なポイントを一つひとつ解説します。
保育士の中途採用フロー:①採用計画の立案
採用活動を開始する際は、以下の項目を考慮して採用計画を立てましょう。
- 採用スケジュール
- 採用人数・求める人物像
- 募集方法(ハローワーク、求人情報誌、求人情報サイト、人材紹介、派遣会社など)
- 採用体制
計画を立てるときは、目標とする採用人数や求める人物像を明確化することが大切です。
ターゲットを決め、どのような募集方法を取り入れるべきか検討しましょう。
また、採用体制を整備する際は、「面接担当」や「園の見学会や説明会担当」など、役割分担を行うとスムーズに活動することができそうです。
近年では、オンラインサービスを活用してWeb面接を導入する園も増えています。
Web面接はオンライン上でやり取りするため、面接日程の調整もしやすいでしょう。忙しい保育業務の合間を利用することができ、効率的な採用活動となりそうです。
現場の状況を把握したうえで、どのような採用計画が有効なのか考えてみましょう。
保育士の中途採用フロー:②募集開始・求人掲載
採用計画の立案後、求職者の募集を開始します。保育士さんをどのような方法で募集するか決定します。
募集方法として考えられる項目は以下の通りです。
- ハローワーク
- 求人情報誌
- 求人情報サイト
- 人材紹介会社、派遣会社
- 保育専門の大学や専門学校などからの紹介
ハローワークは費用がかからない募集方法のひとつです。また、求人の広告は無料または有料のものもあります。採用活動の予算を考え、費用を計上したうえで、どの募集方法を取り入れるのか検討してみましょう。
近年では採用活動を行う際に、保育施設に求職者を紹介する「人材紹介会社」に依頼するケースも増加しています。
人材紹介会社に依頼すると、「求人要件に合った保育士さんの紹介を受けられる」「面接や見学の日程調整を任せることができる」などのメリットがあります。地域の求人情報にも詳しいことから、忙しい施設にとって頼りになる存在でしょう。
保育士の中途採用フロー:③応募受付・書類選考
応募受付
求職者の応募受付は電話やメールなどの対応が必要となるでしょう。
現場の職員に求職者の応募を開始していることを事前に伝え、問い合わせを受けた場合は、採用担当者へスムーズに引継ぎできるように準備するとよさそうです。
また、ハローワークや求人サイトなどの担当者の方から園へ連絡がくる場合もあるため、業者や担当者名、連絡事項などをメモして、報告漏れのないように気をつけましょう。
書類選考
書類選考では、求職者が自園に求める人材を見極めることが大切です。保育士さんの履歴書や職務経歴書をもとに、合否を判断しましょう。
応募書類の中で採用担当者が見るポイントは以下の通りです。
- 保育士資格、幼稚園教諭免許の有無
- 学歴、他の保育施設での実務経験
- 募集内容と求職者の希望条件
- 勤務への意欲が伝わる志望動機
- 求める人物像と自己PR文の相違
履歴書を見る際、特に重視するのが志望動機や自己PR文かもしれません。求職者の保育観や前職の経験などを知り、自園が求める人材なのか、合否の判断を行うポイントとなります。
また、保育士さんは子どもの保育活動だけでなく、保護者への対応や職員間の連携も大切となる職種です。「社会人としての最低限の言葉遣いができているか」「コミュニケーション能力が感じられるか」など、ビジネスマナーや文章力なども考慮して選考しましょう。
保育士の中途採用フロー:④園見学・説明会
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求職者に向けて園の見学や説明会を行う園も多いでしょう。
あらかじめ行事や保育活動のスケジュールを把握し、スムーズに進むように準備するとよさそうです。
求職者は園見学や説明会に参加する際、以下の内容を重視している可能性があります。
- 子どもたちがいきいきとすごしているか
- 現場の保育士さん同士の関係性は良好か
- 衛生管理が行き届いているか
- 保育方針が自分に合うか
複数の園に面接に行き、どの保育園で働くか迷っている保育士さんもいるかもしれません。人材不足の中、求職者から選ばれる施設になることも重要です。
園見学や説明会で「ここで働きたい!」と求職者が思えるよう、職場環境の整備を計画的に進めましょう。
保育士の中途採用フロー:⑤面接・実技試験
面接
面接を行う際、求職者にどのようなことを質問するのか、事前に決めておくことが大切です。
一般的な質問内容は、以下の項目が挙げられます。
- 自己紹介
- 転職理由
- 志望動機
- 前職の実績、経験など
- 逆質問
中途採用の面接は、求職者の前職の実績や経験の内容を確認しましょう。
保育施設には、認定こども園や企業型保育園、院内保育所など多様な施設があり、運営や保育方針が異なるかもしれません。
採用が成功しても、勤務開始後「今までの経験を考えると、保育観が合わなかった」という保育士さんもいるようです。
面接では、採用後のミスマッチを防ぐためにも、求職者側と保育に対する考えや想いをきちんと共有することが重要でしょう。
実技試験
実技試験では歌やピアノの審査を行う場合があるでしょう。求職者が緊張して、自身の力を発揮できないことも考えられます。
採用担当者の方はリラックスできるように笑顔で応対し、和やかな雰囲気作りを大切にしましょう。
保育士の中途採用フロー:⑥選考・評価
求職者の選考・評価を平等に行うためにも、あらかじめ面接の際のチェック項目を設定しておくとよいかもしれません。
<チェック項目>
- 応募者情報
- 身だしなみ
- 言葉遣い
- 視線
- 表情
- 話し方
- 声の大きさ
- 志望動機
- 自己PR
- 保育士経験
- 保育方針
- 長所
- 短所
- 向上心
- 保護者との関わり
- 職員との関わり
- ピアノ・歌レベル
上記の内容をもとに評価すると、複数応募の中から少数の採用を決めなければならないときも、選考がスムーズに進むでしょう。
また、保育士さんは職員間で協力して業務を行うことも多い職種です。現場の状況を把握し、求職者が他の職員と適切に連携できる人物なのか、現職員との相性などもふまえ、評価するとよいかもしれません。
保育士の中途採用フロー:⑦結果通知・内定
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結果通知
求職者に選考結果を伝える手段としては、電話やメールがあります。
採用か不採用かの通知は応募者の不安にならないように、できるだけ早く伝えましょう。
採用の場合
採用を決定した際は、合格を伝え、具体的な勤務体制について説明し、これからの見通しが立てられるように配慮しましょう。
持ち物や勤務開始日を伝えるだけでなく、「何か不安なことはありませんか?」「いつでも勤務について問い合わせをしてください」など、気遣いのある言葉がけを意識することで、安心して内定を承諾してくれるかもしれません。
不採用の場合
不採用の場合は、求職者に対して失礼のないように、採用を見送ることを伝えましょう。自園の職員としてはご縁がなかった保育士さんも、今後子どもの保護者として入園する場合や、近隣の園に就職する可能性もあります。
そのため、丁寧で礼儀正しい対応を心がけ、求職者の気持ちに配慮した言葉遣いを心がけるとよいでしょう。
内定
採用した場合は、内定通知や内定承諾書の提出を伝えます。
採用担当者が電話にて口頭で内定を伝える場合もありますが、メールや郵送通知など文書としてしっかりと残る形で通知しましょう。
求職者が複数の園の応募を行っていた場合、他の園に勤務が決定し、内定辞退になる可能性もあります。その場合は、これからの採用活動に活かすためにも「なぜ辞退に至ったのか」を求職者の心に寄り添うことを意識して聞いてみましょう。
また、内定を伝えてから入社するまでは面談などを行い、入社後のフォローを行うことを大切にしましょう。
保育士の中途採用フロー:⑨入社
求職者の勤務開始後は早期退職などにつながらないよう、採用後のフォローが大切になります。歓迎会を開催して交流を深められるとよいですね。
また、定期的な面談を開き、「保育業務の中で困っていることはないか」「体調を崩していないか」など気遣う姿勢を見せることで、人材の定着化にも役立つでしょう。教育・指導担当の方とやり取りを行い、受け入れ態勢に問題はないか確認することも重要です。
保育士の中途採用フローを確認し、採用成功につなげよう
今回は、保育士の中途採用におけるフローの必要性や、採用活動を進める際のポイントを紹介しました。
保育園の中には、忙しい時期に急に現場の職員が辞めて、即戦力となる保育士さんを募集する場合もあるかもしれません。
事前に採用フローを形成しておくと、このようなケースでもスムーズに採用を進められるでしょう。
近年はWEB面接が増加し、遠方に住む保育士さんとの新たな出会いや面接日程の調整がしやすいなどのメリットがあるようです。
面接方法も変化していることから、自園の採用活動に合ったフローを作成し、人材の確保に役立てていきましょう。