保育施設の中には保育士の人事評価制度の導入を検討する園もあるでしょう。定期的に職員の能力やスキルを評価することで現在抱える課題や改善点を見出し、成長を支えることができそうです。今回は保育士の人事評価制度の必要性や導入するメリット、策定手順などを紹介します。制度を導入し、人材の定着化・育成に役立てていきましょう。
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■目次
保育士の人事評価制度を取り入れよう
多くの一般企業で取り入れている人事評価制度。
人事評価とは定期的に職員の能力やスキルを評価して給与や賞与、昇進などの査定を行うことを指します。導入すると社員のモチベーションアップや生産性の向上などに役立つといわれています。
ただ、保育施設で人事評価制度を取り入れているケースは少ないかもしれません。
その要因には保育士さんの仕事が子どもや保護者など人と接する業務がメインのため、数値化して評価することが難しいという背景があるようです。
しかし、保育業界は依然として人手不足の状況が続いており「運営方法を変えたい」「適正に評価して人材の定着化に役立てたい」と人事評価制度の導入を検討する園もあるのではないでしょうか。
まずは保育施設において人事評価制度を導入するメリットを把握して策定する必要性について考えてみましょう。
保育士の人事評価制度の導入メリット
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職務能力の向上に役立つ
保育士さんは子どもの成長を間近で見守る仕事であり、子どもたちの笑顔や保護者からの感謝の言葉などに励まされながら働いている方が多いかもしれません。
日々やりがいを感じる瞬間がある一方で自身を評価される場が少ないため、保育技術やスキルに不安を抱くこともありそうです。
明確な人事評価制度を導入することで一定の水準ができ、保育士さん自身が強みや改善点を把握しやすくなるでしょう。
適切な評価を行えば職員一人ひとりの能力やスキルアップにつながり、園全体の保育の質の向上に役立ちそうですね。
長期的な人材の定着化を期待できる
人事評価制度を導入すると職員一人ひとりが定期的に自分自身の仕事を振り返る機会を設けられるので、道筋を立てて業務に取り組むことができるでしょう。
長期的な目標があれば仕事に対してのモチベーションが上がり「辞めたい」「退職したい」と感じる機会が減って人材の定着化につながるかもしれません。
また、園長先生は職員を評価するために一人ひとりの仕事ぶりを把握する必要があります。自然と職員一人ひとりに対する理解を深められるので、コミュニケーションが取りやすくなるでしょう。
園長先生と職員が話しやすい関係を築き上げることができれば、仕事への満足度も高まりそうです。
保育士の人事評価制度の策定手順
保育士の人事評価制度の導入に向けた策定手順の例を紹介します。さまざまな方法があるため、自園にあった内容を取り入れて策定していきましょう。
①役職者との話し合い
まずは主任やリーダーなど現場の責任者と会議を行い、評価制度の導入について話し合いの場を設けるとよさそうです。
評価制度の導入について現場の意見をきちんと聞いたうえで賛同を得ることが大切です。
評価制度があることで「職員同士の関係がギクシャクしてしまいそう」「仕事がやり辛くなる可能性がある」などといった懸念点も話し合いましょう。
ときには主任やリーダーに評価をお願いする部分もあるかもしれません。その点も含めて協議を重ねられるとよいですね。
②評価の目的の明確化
次に人事評価制度を実施する目的を明確化していきましょう。
始めに目的を明らかにしておくと評価の実施後に目的の達成について振り返ることができます。
人事評価の目的としては
- 仕事を適正に評価して昇給につなげる
- 職員に対して期待する行動・役割を明確化する
- 組織の活性化やモチベーションの向上に役立てる
- 仕事への姿勢や努力を認め、改善点を共有する
などが挙げられるでしょう。
導入の際には人事評価の目的を全体の職員に共有することも大切です。
③役職の見直し
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人事評価を取り入れるうえで役職の見直しを行うとよいかもしれません。
保育施設は基本的に園長・副園長・主任といった3つの役職を設ける園が多いため、細分化することも検討しましょう。
また、以下のように国の処遇改善制度を活用して3つの役職を取り入れてみるとよいかもしれません。
<役職例>
出典:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み導入後の職制階層からの抜粋
国が策定する役職者の基準は以下の通りです。
- 副主任保育士:経験年数概ね7年以上
- 専門リーダー:経験年数概ね7年以上
- 職務分野別リーダー:経験年数概ね3年以上
上記の役職は必要な研修を修了することで国からの処遇改善手当が受けられるようになります。策定するうえで参考にするとよいでしょう。
また、1年目〜3年目の職員に向けて段階的に評価・昇給できるような制度の導入を検討してみるとよさそうです。
仕組みを明確化して職員に共有することで職員自身も目標達成までの道筋が立てやすくなります。新人職員の定着率アップにもつながるでしょう。
④評価項目の作成
評価制度の実施に向けて項目を作成します。あまり細かく評価項目を設定するとチェックが多すぎて適正な評価ができない可能性もあるため、注意が必要です。
また、評価項目に対して4段階または5段階(A・B・C・D・E)などのルールを決めていきましょう。
<評価項目の例>
保育施設の評価項目例は以下の通りです。
保育理念・方針理解:園の方針・理念に基づいて業務の遂行ができる
保育計画・振り返り:園児の現状を把握したうえで計画・振り返りができる
園児対応:園児の状況を詳細に把握したうえで対応に努めている
保護者対応:保護者とよい関係を築くように努めている
業務遂行:責任を持って自身の業務をやり遂げることができる
協力姿勢:周囲とのコミュニケーションを図りながら業務に臨むことができる
自己評価:自身の保育を振り返り目標を設定することができる
上記はあくまでも一例になるため、園の実情に合わせて評価項目を策定しましょう。
⑤導入スケジュールの決定
続いて導入スケジュールを作成します。
まず、職員全体に人事評価制度の運用を開始することを説明しましょう。事前に説明会を開き、目的や実施の流れを共有することでスムーズに開始できそうです。
また、職員からの質問に対して誠実に対応しましょう。
質問によっては協議が必要になる内容もありそうです。その際は精査してから回答することを伝えるとよいですね。
⑥評価の実行・見直し
人事評価制度の実行後は定期的に見直しを行い、修正点があれば改善していきましょう。
評価方法は職員の処遇に関する大切な内容となります。適切に進めることができたか、現場でアンケートなどを配布して園全体で見直しができるとよいですね。
出典:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み導入後の職制階層(イメージ)/厚生労働省
保育士の人事評価シート例
保育士の人事評価シートの例を紹介します。
主任やリーダーを評価する際は「指導力」についての項目を設け「適切な指導ができる」「良好な関係の構築に努めている」などの要件を設定するとよいでしょう。
保育士の人事評価の策定ポイント
続いて保育士の人事評価の策定ポイントをまとめました。
現場の役職者の意見を反映する
人事評価を策定する際は、現場の状況を把握する役職者の意見を反映することが大切です。
役職者とともに人事評価の目的や意義を考えたうえで策定すると、評価の重要性を共有することができるでしょう。
また、主任やリーダーの声を反映して評価項目を作成すれば、役職者自身も自園の運営に携わっているという自信や責任感が芽生えそうです。
マネジメント能力を高めるためにも定期的に話し合いの場を設けて意見交換を行いましょう。
外部の専門家に相談する
中には初めて人事評価制度を策定する園もあるでしょう。「何から手をつければよいのかわからない」「職員が納得できる評価制度を設けるにはどうしたらよいのだろう」と不安を抱く場合もありそうです。
また、策定した制度の見直しに取り組みたいという園もあるかもしれません。
その際は外部の専門家に相談するというのも一つの方法です。人事評価制度の策定を手がける民間の企業もあるため、一度相談してみるとよさそうです。
専門家にチェックしてもらうことで客観的な視点でアドバイスを受けられるでしょう。
人事評価制度を策定して保育士の成長を支えよう
人事評価制度を策定することで職員の能力やスキルアップに役立ちます。保育士としての成長を支えることにつながり長期的な人材の定着化を目指すことができそうですね。
人事評価制度を策定し、適正に職員を評価できる環境を整備していきましょう。
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