保育士の採用活動が上手くいかずに悩んでいる採用担当者の方もいるかもしれません。人材の確保のためにも、「採用計画」の立て方について考えてみましょう。計画を立てることで、求める人材の明確化や採用体制の見直しにつながるかもしれません。今回は、採用計画を立てる際に必要な項目や注意点などを詳しく解説します。
takasu/shutterstock.com
採用計画の必要性
保育士の募集を行う際に必要な「採用計画」とは、いつ、どのような人材をどのような方法で採用するのか、手順を明確化したものです。
保育士不足が懸念される中、採用担当者の方が具体的な採用計画を立てることは重要といえるでしょう。
一般的に、採用計画が必要な理由には以下が挙げられます。
- 採用活動の進捗度の認識
- 自園が求める人材のニーズの確認
- 選考方法、評価方法を具体化
採用コストなどを把握するためにも、計画を具体的に立て、実行することが大切になります。
また、採用計画を立てる際は、必要な項目や気をつけるポイントなどを意識すると作りやすいでしょう。
まずは、保育士の採用計画を立てる際に必要な項目を解説します。
保育士の採用計画を立てる際に必要な項目
保育士の採用計画を立てる際の具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 採用スケジュール
- 採用手法
- 採用人数、求める人物像
- 採用体制
詳しく見ていきましょう。
採用のスケジュール
採用計画を作成する際に、スケジュールを立てることは重要です。現状を把握したうえで、募集や面接の時期、内定後の勤務時期などを明確化しましょう。
保育士さんの採用活動が繁忙期を迎える時期を意識してスケジュールを立てると、応募者が多くなり、採用活動がスムーズに進むことにつながるでしょう。
採用のスケジュールの手順は、主に以下の項目が挙げられます。
①募集開始
②応募受付
③書類選考
④面接・実技試験
⑤選考・評価
⑥結果通知
⑦内定
保育士さんが転職を考える時期や応募する時期は主に、卒園や年度末で区切りのよい、3月が多いといわれています。
具体的には、転職活動について9月頃から意識し始め、10月~2月の間に応募や面接を行い、4月から新しい職場で働き始めるという流れになるでしょう。
このような保育士さんの就職・転職活動の状況を捉えたうえで、採用スケジュールを作成することがポイントです。
採用手法
採用手法とは、どのようなツールを利用して、採用活動を行うかを明確化したものです。
一般的な採用手法については、企業のWebサイトや合同説明会、求人情報誌、求人情報サイト(就職サイト・転職サイト)などを活用する場合があります。
保育士さんの採用手法としては、主に以下の項目が考えられるでしょう。
- ハローワーク
- 求人情報誌
- 求人情報サイト
- 人材紹介会社、派遣会社
- 保育専門の大学や専門学校などからの紹介
近年では採用活動を行う際に、保育園等の施設に保育士さんを紹介する「人材紹介会社」に依頼するケースが増えています。
人材紹介会社に依頼することで、求人要件に合った人材の紹介を受けられることや面接などの日程調整などを任せることができるため、忙しい施設にとっては頼りになる存在でしょう。
このように、採用計画を立てるうえで、現在の保育業界の採用手法の傾向を捉え、どのように応募者を募るかを考えることは、大切かもしれません。
採用人数、求める保育士の人物像
保育士さんの採用活動を行ううえで、採用人数や求める人物像を明確にすることは重要です。
計画を立てる際も、現場の状況を把握し、正職員、補助職員はどのくらい必要なのか、どのような人物を求めているのかを考えましょう。
求める保育士さんの人物像の例としては、「保育に対する熱意をもっている」「周りとの協調性を大切にする」などが挙げられます。
その他にも、「英語が堪能であること」、「ピアノ伴奏が得意な方」など必要な人材は園によって違いがあるでしょう。
どのような人物が必要なのかを明確にして、採用計画を立てていきましょう。
採用体制
採用計画を立てる際は、どのような採用体制を確立するかを明記するとよいでしょう。 主に園長、副園長が採用担当者となることが多い保育園では、 園の説明会や面接、電話対応は誰が行うかなど、採用活動がスムーズに進むように役割を考えていくことが大切です。
園の行事や会議などで忙しい場合もあるため、採用計画を立てる際も代理で誰が動くのかを具体的に考えておくことも重要といえるでしょう。
また、現在ではオンラインサービスを導入したWeb面接を取り入れる園も増えており、忙しい合い間を利用したWeb面接を活用しています。
Web面接には、採用担当者の方と応募者間で面接日程が調整しやすいというメリットがあり、効率的に採用活動が進む可能性があるでしょう。
採用体制やスケジュールが普段の採用活動と違う場合があるため、Web面接用に採用計画を立てるとわかりやすいかもしれません。
選考方法と評価の明確化
採用計画を立てる際には、筆記試験や適性試験の有無、面接の質問内容など詳細を設定するなどして、選考方法を明確にしましょう。
面接をする際は、応募者の態度、理解度、協調性などさまざまな項目を設定し、評価に基準を設けて判断すると、選考の公平制を保つことにもつながるでしょう。
また、採用担当者の方は施設内での職場の雰囲気を考え、「どのような人物だと職場に馴染みやすいのか」、「どのような人物だと担任の保育士と協力して保育活動を行えるのか」など、園独自の評価基準が必要となる場合も考えられます。
採用計画を立てる際も職員にヒアリングを行い、求める保育士の人物像を捉え、評価基準を設定していきましょう。
保育士の採用計画を立てる際に気をつけるポイント
Freedomz/shutterstock.com
保育士採用計画を立てる際の注意点を解説します。
採用状況、前回の採用計画を振り返る
採用計画を立てる際は、初めて計画を策定する場合や繰り返し計画を立てている場合があるでしょう。
初めて計画を立てる際は、採用状況を振り返り、どのような項目が必要なのか、基本的な要点を考えて作成するとよいでしょう。
何度か計画を立てたことがある場合は、前回の採用計画を振り返ることも大切です。
採用活動がスムーズに進んだケースもあれば、採用したもののすぐに離職してしまった場合もあるかもしれません。
採用計画に問題はなかったか、採用状況を正確に把握し、改善策を考えたうえで、新たな採用計画を立てることが重要でしょう。
保育士の就職・転職活動の動向や近隣の園の採用活動を把握する
厚生労働省「保育士確保」の資料によると、2018年11月の有効求人倍率は3.20倍(東京では6.44倍)となっており、依然として高い水準で推移しています。
優秀な保育士の人材を確保するためにも、インターネットなどを活用して、保育士さんの就職・転職活動の動向を把握しましょう。
保育士の就職・転職活動は主に9月~10月がピークと考えられており、来年度採用の求人募集について、10月の早い時期に設定している保育園もあるようです。
近隣の保育園や幼稚園の採用活動状況も調べるなどして、採用計画に役立てるとよいでしょう。
計画が実行できるかを確認する
採用計画を立てた後は、実際に計画が実行できるのかをイメージすることも大切です。 園の行事が多い場合や職員が不足している場合などは、計画通りに進まない可能性もあります。
あらかじめ、計画がスムーズに進むか、進まない場合はどのような問題点が考えられるのかを洗い出しておくと、さまざまな事態に備えられるでしょう。
また、計画を実行できない場合に、応募者への対応がスムーズに進まない場合もあります。
対応が遅くなってしまうと、就職・転職サイトの口コミ等で自園の評判を下げてしまうことにもつながる恐れがあります。そうならないためにも、早急で失礼のない対応を行い、計画の実行性についてしっかりと確認するようにしましょう。
職員同士で採用計画の共有を行い、意見を求める
採用計画を策定した際は、採用担当者の方が確認をするだけでなく、その他の職員の方に採用計画を渡し、意見を求めることも大切です。
現場の状況を踏まえた採用計画となっているのかを、客観的に見ることができるでしょう。
「この時期は行事が多いから、もう一人保育士が必要かもしれない」など、具体的な意見が聞こえてくるかもしれません。
職員間の意見の共有を行い、よりよい採用計画になるように考えていきましょう。
出典:保育士確保/厚生労働省
採用計画を立てる際に役立つツール
採用計画を立てる際のポイントや注意点を解説しましたが、策定する場合にパソコンやタブレットを使用することも多いでしょう。
パソコンやタブレットを使用する際の、簡単な活用方法をご紹介します。
テンプレート・フォーマットを活用する
採用計画を立てる際は、形式が整っているテンプレートやフォーマットを取り入れると作りやすいでしょう。
採用スケジュールを作成する場合も、カレンダーなどのテンプレートを活用することで、情報の記入に役立つだけでなく、手順の把握しやすくなるでしょう。
無料でダウンロードできるフォーマットなどもあるので、取り込んでみて、使いやすいものを選ぶとよいかもしれません。
表計算ソフトを活用する
採用計画を立てる際は、パソコンやタブレットなどで使用できる表計算ソフトの活用もおすすめです。コストの計算だけでなく、表やグラフの作成などにも役立ちます。
応募者を一覧化する場合も、現在の応募人数や選考中の人数などを表に明記すると、わかりやすいでしょう。
充実した採用計画を立てて、保育士人材を確保しよう
今回は、採用計画を立てるために必要な項目や注意点、活用しやすいツールについて詳しく紹介しました。
採用担当者の方は、現場の状況を把握したうえで、どのような採用計画が有効なのかを手順を踏まえて考えていく必要があるでしょう。