保育士不足が叫ばれる中、人材確保に向けた対策は重要な課題となっています。厚生労働省では保育士人材の育成や就職あっせんなどさまざまな施策を打ち出していますが、具体的にはどのような取り組みがあるのでしょうか。このコラムでは、保育事業者の方向けに国が推進する保育士確保策や園で活用できる取り組みについてまとめました。
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■目次
保育士人材確保の重要性
保育士不足が深刻化する中、人材の確保に悩む採用担当者の方もいるかもしれません。
人員不足は保育の質の低下を招くだけでなく、園の運営に支障をきたすおそれのある由々しき問題と言えます。
行政を挙げて保育士人材の確保へと対策を進めている中ですが、各園においても現場に根差した対策を考えることも重要かもしれません。
行政の取り組みを知ったうえで、採用方法の見直しや職員体制の整備など自園に合った対策を立てていきましょう。
行政が行う保育士の人材確保対策とは?
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まずは、行政が推進する保育士の人材確保対策について解説します。
処遇改善
保育士さんの長期的な就労や労働環境の改善を目的として、2015年から処遇改善加算が取り入れられ、《経験年数に応じた給与の引き上げ》や《キャリアアップに応じた手当の加算》が実現しました。
また、9000円の賃上げが話題になった2022年以降は処遇改善加算Ⅲとして公定価格の引き上げが行われ、保育士さんの給料が上がる仕組みの整備が進んでいます。
就業継続支援
離職防止を目指して、研修の開催や円滑な実施の支援が行なわれています。
例えば下記のような支援策が挙げられます。
- 新人保育士研修・保育の質を上げる研修の実施
- 研修の参加にともなう代替職員の確保
- 研修にかかる助成の活用促進
マンパワーが必要な保育現場では、研修に行くにも人手や費用がかかるもの。
そこを行政が支援してくれるのはありがたいですね。
再就職支援
一度現場を離れた保育士さんが安心して保育施設に戻れるよう、下記のような対策を行っています。
- 潜在保育士等に対する就職あっせんや相談支援
- 再就職前の実技研修
- ハローワークにおける保育士求人サービスの強化
保育士・保育所支援センターを活用して、就職のサポートや保育実技の研修を行い、スムーズな職場復帰を後押ししているようです。
保育士資格の取得支援
保育士資格の取得をサポートするために、特例制度や貸付制度が取り入れられています。
- 保育士資格取得の特例制度(幼稚園教諭免許状を持つ方向け)
- 指定保育士養成施設の受講費支援(雇用保険の被保険者となる方向け)
- 保育士修学資金貸付制度
すでに幼稚園教諭免許を持つ方に対して取得ハードルを下げたり、費用面で取得を諦めていた方に受講費を支援したりといった制度が設けられています。
このように行政ではさまざまな対策が取られている中、各園ではどのような方法で保育士さんの人材確保を進めるとよいのでしょうか。
保育士の人材確保策①多様な募集方法を取り入れる
保育士の採用活動において、募集方法の多様化は重要でしょう。さまざまな募集媒体を活用して、保育士さんの確保につなげることが大切です。
保育士さんの採用に使える募集方法としては、以下が挙げられます。
- ハローワーク
- 求人情報誌、新聞紙、チラシ
- 求人情報サイト
- 人材紹介会社、派遣会社
- 就職・転職フェア
- 保育専門の大学や専門学校などからの紹介
- 自園のホームページ
保育士不足が慢性化する中で、人材紹介会社や派遣会社などを利用する園も増えているようです。
募集媒体によって費用に幅があるため、園の予算をもとに多様な採用方法を検討してみましょう。
保育士の人材確保策②求人票の内容を見直す
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求人票を作成する際、どのような書き方をすれば目に留まるのか、求職者の目線に立って考えることが重要です。
求職者の意欲を上げるためには、勤務時間・給与・仕事内容を具体的に記載してどんな働き方になるかをイメージしてもらう必要があります。
求人誌やサイトは流し見をする方が多いため、キャッチコピーには具体的な数字を用いるなど、少しでも注目してもらえるような工夫をしましょう。
<例>
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他の園の求人票にはどんな内容が書いてあるか確認して、比較してみるのもよいですね。
保育士の人材確保策③求職者に誠実に対応する
自園への志望度を上げるためにも、求職者へは丁寧に対応することが大切となります。
どのような点に注意すればよいのか具体的に見てみましょう。
求職者とのファーストコンタクトを大切にする
応募者とはメールや電話で初回の連絡を取る機会が多いでしょう。
ファーストコンタクトでまずは応募についての感謝を伝え、面接までの流れや園見学の有無などをきちんと伝えられるように準備しておきましょう。
何か不安はないか求職者の心に寄り添い、丁寧なコミュニケーションを取ることを大切にするとよさそうです。
スピーディーな選考を心がける
求職者の中には他園と併願して応募している場合もあるようです。
選考から内定まで時間が開くと、他の園での選考が進み「悩んでいたのですが他の園に入職することにしました」と別で決まってしまうケースもあるようです。
優秀な人材を確保するためにも、応募から内定までをできるだけスピーディーに進められるようスケジュールを調整するとよいかもしれません。
こまめにコミュニケーションを取る
採用業務で忙しい中だとついコミュニケーションがおざなりになってしまいがちですが、求職者が安心して入職できるよう、こまめに連絡を取るようにしましょう。
現在の選考状況を伝えたり、応募・面接のお礼をしたりなど、定期的に電話やメールをするとよいですね。要件のついでに求職者への気遣いの言葉を送るのも効果的かもしれません。
さらに、内定から入職までの期間は内定辞退を防ぐためのフォローが大切になります。
具体的なフォロー対策は下記の記事をチェックしてみてくださいね。
保育士の人材確保策④職員体制を見直す
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人材の確保のためには採用活動だけでなく、現場の職員体制の見直しも重要でしょう。
現場の体制を改善し「働きやすい園」というイメージがつくことで、園の採用活動がスムーズに進むだけでなく、人材の定着化にも役立つかもしれません。
職員体制の見直しについて具体的な対策を紹介します。
適切な人材配置
現場の職員が働きやすい環境を整備するためにも、適切な人材配置に目を向けてみましょう。
配置基準を守ることはもちろん、朝の受け入れや着替えなどクラスがバタつく時間帯はプラスで保育士さんを配置するのも有効。
さらに、現場の雰囲気を良好に保つためにも、職員同士の人柄や性格を考慮した相性のよいクラス形成を考えるとよいかもしれません。
普段から職員の人間関係や個々のスキルを把握し、円滑に仕事ができるように適正な人材配置について考えてみましょう。
雇用形態の多様化
人材不足に伴い、雇用形態を見直す園は多いかもしれません。
正社員の雇用だけなく、補助パート枠の増加などに目を向け、人員の確保、職員の仕事量の軽減に取り組んでいきましょう。
また、現場の保育士さんのライフスタイルが変化しても家庭と仕事の両立ができるように、短時間勤務のパートを増やしたり、多様なパターンのシフトを設定したりすることも大切かもしれません。
保育士の人材確保策⑤人材の定着化の徹底
採用活動が成功しても、職員が定着しなければ人材不足は改善されません。
長期雇用を支えるためにもどのような対策が必要なのか見ていきましょう。
新人保育士に向けた研修体制を強化する
覚えることが多い新人保育士さんは、「なにもわからない」状態で仕事をこなさなければならないケースもあるかもしれません。
その際に「誰に聞けばよいのか」、「みんな忙しそうで聞きたくても聞けない」といった悩みを抱える場合もあるでしょう。
新人保育士さんが安心して働くことができるように、研修体制の整備に目を向け、指導計画や教育担当者を明確にするとよさそうです。
定期的な面談を行う
保育士さんは、子どもたちの保育だけではなく、保護者の相談支援や危機管理など幅広い業務を行います。業務負荷がストレスとなり、悩みを抱えて離職してしまうケースもあるようです。
定期的に面談を行い、精神的にケアできるような体制を整備するとよいかもしれません。
保育士さんが相談しやすい環境を整え、人材の定着化に役立てられるとよいですね。
保育士人材確保に向けて具体的な対策を立てよう
保育士不足が深刻化する中で、人材確保に向けて採用活動の見直しや職場環境の改善に目を向けることが重要になります。
園の状況を把握し、改めて人材確保に向けた効果的な対策について考えてみましょう。
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