現場を離れた方の復帰を後押しするために、再就業をする際に求めるポイントを知ることは重要です。労働条件や職場環境など、復職につながる要因をきちんと把握しましょう。厚生労働省の調査「過去に保育士として就業した方が再就業する場合の希望条件」をもとに詳しく紹介するとともに、復帰支援対策について解説します。
metamorworks/shutterstock.com
保育士として再就業する際の希望条件とは
厚生労働省の調査によると、保育士の資格を保有しながらも就業していない方(潜在保育士)は2015年時点で約76万人といわれています。
人手不足を補ううえで、このような人材を現場に呼び戻し、再就業を支えることは大切になります。
その中で保育士さんが復職する際に求めるポイントに、どのようなものが挙げられるのでしょうか。
厚生労働省の「保育士等に関する主な取り組みp24」によると、「過去に保育士として就業した者が再就業する場合の希望条件」は以下の通り、8割の方が「働き方」を重視していることがわかりました。
復職の条件として、「通勤時間79.9%」、「勤務日数77.8%」、「勤務時間76.3%」と、主に労働環境の条件が再就業する際の重要なポイントとなっています。
また、現場を一度離れた方の中には、出産や妊娠を経て復職を考えている方も多いことから、ご自身のライフスタイルに合った職場への復帰を要望しているのかもしれません。
まずは、再就業の希望条件について詳しくみていきましょう。
保育士として再就業する際に求めるポイント
通勤時間
先述したように、再就業を決めるポイントとして「通勤時間」を一番重視していることがわかりました。
保育士の仕事は子どもの保育活動を中心に、保護者対応や指導案作成、行事の企画運営などもあり、「労働時間が長い」、「残業が多い」仕事と言われています。
また、施設の保育時間によって早朝や夜間などさまざまな時間帯に保育を担当することもあるでしょう。
業務が終わらない場合は、持ち帰り残業が発生するケースもあり、業務量を考えると、通勤時間が短い方が仕事をしやすいと感じる保育士さんは多いのかもしれません。
仕事が多忙でなかなか休日がとれない状況においても、通勤時間を短時間にすることで、プライベートの時間を確保したいという思いもあるでしょう。
勤務日数、勤務時間
再就業時の就業先の「勤務日数、労働時間」といった労働条件は重要なポイントのひとつです。
保育士さんは勤務日数が多さや労働時間も長い職種というイメージがあり、なかなか復職を前向きに考えられないという方もいるでしょう。
特に育児中に現場に復帰する場合は、子どもの体調や行事参加のために「休日が取得しやすい」、「勤務日数が調整しやすい」など、融通が効く仕事を選ぶことが考えられます。
自身の希望条件に合う職場があると、復職を考えるきっかけにもなるでしょう。
給与
「賃金が安い」、「手当が少ない」など給与面に不満を抱えている保育士さんが多いこともデータから読み取れるでしょう。
ひと月手取り12万円前後で働いている方や、継続して働いても昇給が望めないケースもあるようです。
このように、給与が仕事量と見合わないことで違う職種に転職する方も少なくありません。
昇給制度がない園では、仕事へのモチベーションが下がることも考えられるため、待遇面の充実は重要なことでしょう。
雇用形態
保育士の雇用形態には、正社員や契約社員、パートなどが挙げられます。
復職を希望される方の中には短時間勤務であるパートを考えている場合もあれば、正社員でしっかり働きたいという方もいるでしょう。
正社員の場合は、担任や副担任、主任など責任のある仕事を任せられることも多いため、子育て中の方は時間の調整がしやすいパートを選択することも考えられます。
自分のライフスタイルに合った雇用形態を重視する方が多いことから、働き方の多様性は復職を支援するための重要なポイントと言えるでしょう。
保育士の再就業を支援するための方法
milatas/shutterstock.com
人材確保のためには、保育士の再就業を支援するための対策を立てることが大切です。
それぞれの園の事情を考え、現場を離れた方へ復職の後押しができる方法について、具体的に考えてみましょう。
勤務条件を見直す
厚生労働省の調査の通り、通勤時間や勤務時間などを重視して、再就業先を選ぶ方が多いことがわかりました。
保育士の仕事は早朝保育があったり、残業時間が多かったりと勤務時間が不規則になることもあるでしょう。
「車通勤OK」、「早朝保育では駅まで園の車が迎えに行きます」など再就業の希望者が、園に通いやすいように勤務条件を見直すことも大切です。
また、行事の前などは企画や準備に時間がかかり、残業が発生することもあるでしょう。
残業が発生した場合は、「閑散期の勤務時間を短縮する」、「時間外労働は最低〇時間まで」など具体的な対策を立てるとよいかもしれません。
勤務開始後に「思っていたよりも残業が多くて大変」、「勤務時間が長くて育児との両立ができない」といった不満を抱く可能性もあることから、勤務条件が求職情報と相違のないように注意しましょう。
雇用形態を多様化する
復職を後押しするうえで重要な「雇用形態」の多様化。正社員の他にパートを募集する際は、できるだけシフトパターンを増やすことを検討してみてもよいかもしれません。
特に子育て中の保育士さんは「9時~14時」、「10時~15時」など午前中から午後にかけて短時間勤務を希望することが多く、働きやすい時間帯といえるでしょう。
しかし、その時間帯は正社員の方もいるため、保育士の人数が充足している園もあるかもしれません。
週4のうち2日は「9時~14時」、残り2日は「7時~11時」勤務など、勤務時間の調整を行い、子育て中の保育士さんが働きやすい勤務形態を用意するとよさそうです。
また、「どの時間帯が働きやすいか」、「短時間パートの場合は何時間勤務がよいか」など現場の職員にアンケートを取り雇用形態を見直し、実際の声を反映しながら労働環境を整備していきましょう。
求人票を工夫する
求人票を見て復職を検討している方は多いことでしょう。
そのため、復帰を後押しができるように、魅力的なキャッチフレーズや文章を記載するとよいかもしれません。
例えば、
「ブランクがあっても大丈夫です!研修制度が充実しているため、サポート体制も万全。お気軽にお問い合わせください!」
「現場を長らく離れていた方も研修期間があるため、安心して復帰できます!勤務時間の相談可能。柔軟に対応致します。」
といった内容を記載することで、復職希望者の目に留まりやすいでしょう。
また、研修の様子や復帰した方の体験談などを求人票に載せると園の支援状況を具体的にアピールすることができます。
求人票を作る際は、再就業を支援できるようなキャッチコピーを考えて制作してみましょう。
保育士の再就業を支援して人材確保に取り組もう
人手不足の保育業界を救うためにも、現場を離れていた方の復帰を後押しすることが大切です。
保育士さんが働きやすいように、労働環境を整備して、魅力的な職場を作り上げていきましょう。
復帰を考えている方の中には、子育て経験豊富な方も多く、食事の援助や製作活動といったさまざまな場面で経験を活かすことができるのではないでしょうか。
雇用形態の多様化なども検討しながら、復職の支援を行い、人材確保に役立てていきましょう。
関連記事:【採用担当者コラム】ブランクあり保育士を採用するメリット。募集方法や対策など/保育士バンク!
関連記事:【採用担当者向け】潜在保育士が復職しない理由とは?再就職を後押しするために園ができること/保育士バンク!