少子化が進む昨今、園児が集まらず定員割れを起こす保育園が増えてきているようです。早期の対策が求められますが、「一体何から始めれば…」と戸惑う園も多いでしょう。今回は、保育事業者向けの定員割れ対策について紹介します。保育ニーズの動向や、他の園で取り入れられている園児集客事例についてもまとめました。
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保育園の定員割れの現状
多くのエリアで待機児童問題の解消が進む中、現在新たに浮上しているのが「2025年問題」です。
保育所の利用ニーズは2025年にピークを迎え、以降徐々に減少していき、保育園が余る時代になると言われています。
まずは、全国でどのくらいの保育園が定員割れを起こしているのか見てみましょう。
<定員充足率の推移>
2020年4月 | 2021年4月 | 2022年4月 | |
全国 | 92.20% | 90.90% | 89.70% |
表の通り、定員充足率は年々減少の一途を辿っており、2022年の4月には89.7%までに落ち込んでいます。
これは全国平均の数値なので、エリアによってはより定員割れが深刻なケースもあるようです。
2022年時点、全国で最も定員充足率が低いのは長野県の77.7%。次いで78.5%の山梨県と続きます。
国が講じる保育園の定員割れ対策は?
現在国で検討されている保育園の定員割れ対策について、厚生労働省の資料をもとに紹介します。
保育所の多機能化
保育所は現在のように入園児のみを預かる施設ではなく、地域に広く子育て支援を提供する場として活用していく案があります。
定員割れによって生まれる保育所の空き敷地については、子育て支援の相談スペースなどに模様替えするケースも検討されているようです。
利用定員の見直し
人口が減りつつある地域では、園で定めている定員と、実際に利用する子どもの人数に開きが発生する可能性があります。
施設の規模に合わせて利用定員が決められているものの、現状に即した定員数を定められるよう調整が必要とされており、変更については検討中の段階と言えるでしょう。
公定価格の在り方を検討
そもそも現在の公定価格が子どもの受け入れ人数に沿って算出されるものなので、園児が集まらないと園の収入が減ってしまう現状になります。
施設を運営するうえでは子どもの人数に応じて変わる変動費だけでなく、施設長の人件費といった固定費が必要です。
そもそもの公定価格の在り方を検討し、保育園が健全に運営されるための整備が求められています。
このように、国が検討・推進する対策もあるものの、各園で定員の確保に向けて取り組んでいく必要もあると言えます。こうした保育業界の現状を把握し、園を存続させるための対策を講じることが大切です。
保育園が実施できる定員割れ対策
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ここでは、保育園が取り組める定員割れ対策について具体例とともに紹介します。
園の宣伝に力を入れる
まずは、園の名前や魅力などを保護者の方に知ってもらうことが重要になります。
ホームページやチラシ、保育の様子がわかるようなSNSなどを利用して園の宣伝をしていきましょう。
園児集客については下記のコラムでも解説しています。具体例つきで宣伝方法を紹介しているので参考にしてみてくださいね。
保護者に喜ばれるサービスを導入する
保護者に魅力を感じてもらうには、子どもを預けるうえでの負担を減らすサービスを導入するのも一つの手です。
- おむつや布団といった備品のサブスクリプション
- ネットを通じた写真販売
- 連絡帳やおたよりをスマホで確認できるアプリ
など、近年は保育園利用者向けにさまざまなサービスが展開されています。
保護者からの評価や利用する職員の負担などを考慮して選ぶことがポイントです。
保育内容の充実化を図る
保育内容を充実させることで、他の園との差別化につながります。
モンテッソーリ教育やシュタイナー保育など特徴的な教育方針を打ち出す園や、園庭の自然が充実していたり食育に力を入れていたりする園などが、近年保護者からの人気を集めているようです。
園での取り組んでいる内容を、積極的に広報して発信することが大切と言えます。
保育園の定員割れに備えた対策が重要
園児の定員割れは、保育園の経営に直結する重要な問題です。
少子化が進む中で、保育園の間で園児の獲得競争がさらにヒートアップしていくことが予想されます。
保護者から選ばれる園になるために、広報活動や保育の充実化などに力を入れていきましょう。