退職の手続きを行なうときに必要な離職票の発行。退職者の失業給付に関わる大切な書類のため、企業側は速やかに手続きする必要があります。ただ、中には離職票の書き方に戸惑う担当者の方もいるかもしれません。今回は離職票の意味や企業側による作成方法、注意点について詳しく解説します。あわせて離職証明書との違いもまとめました。
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■目次
離職票とは
離職票とは、退職者が雇用保険の失業給付を受けるための重要な書類です。正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といいます。
企業側は、所轄のハローワークで退職日の翌々日から10日以内に離職票を発行するための手続きを行なわなければなりません。
離職票は正社員・パート(雇用保険対象者のみ)などの雇用形態に関わらず、退職者本人が希望する場合や59歳以上の場合は原則渡す必要があります。
退職者が希望しない場合や死亡している場合の発行は不要です。
離職票と離職証明書との違い
企業側が所轄のハローワークに離職票の発行の手続きをするうえで提出する書類を「離職証明書」と呼びます。
離職証明書は3枚つづりの複写式になっており、1枚目は企業用、2枚目はハローワークの受理用、3枚目が退職者に渡す離職票です。
そのため「離職証明書は企業側が発行するもの」「離職票はハローワークが発行し、退職を証明するもの」と認識しておくとよいでしょう。
離職票(離職証明書)の提出方法
続いて企業側が提出する離職票(離職証明書)の提出の仕方について詳しくみていきましょう。
必要な書類
離職票の発行手続きを行なう際、退職者の離職証明や失業給付金の額の算出などに向けて、以下の書類が必要です。
- 離職証明書(3枚複写)
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 賃金台帳または給与明細(支給の内訳と交通費がわかるもの)
- 出勤簿またはタイムカード
- 離職理由の確認できる書類のコピー(退職願、労働者名簿、契約期間満了書類など)
雇用保険被保険者資格喪失届は退職者のマイナンバーや離職年月日、退職理由などを正確に記載する必要があります。
提出先
提出先は所轄のハローワークです。
郵送や電子申請、直接持参する方法があります。
また、郵送の場合は一般郵便ではなく、簡易書留や特定記録など相手が受け取ったことを確認できる方法にしましょう。
書類に不備や漏れがないよう、チェックしてから提出しましょう。
離職票(離職証明書)の書き方
ハローワークの資料から離職票(離職証明書)の書き方を紹介します。
【記入例】
書類の書き方を詳しく紹介します。
1.基本情報を記入する
退職者の氏名・住所(退職時のもの)、被保険者番号・事業所番号・離職年月日を記入していきましょう。
2.算定対象期間と賃金支払基礎日数を算出し、記入する
失業保険の給付条件を満たしていることの証明や給付金額の上限を決めるために「算定対象期間」「賃金支払基礎日数」を記入していきます。
算定対象期間とは退職者が「就職してから退職するまでの期間」すなわち「雇用保険の対象だった期間」です。
また、賃金支払基礎日数とは、出勤日や有休取得日などの賃金の支払われた日数を意味します。
失業保険の給付条件は退職日から2年間のうち、賃金支払い日数が11日以上または労働時間数が80時間以上ある月が12カ月以上ある必要があります。
担当者は退職日から遡った2年間の勤怠を確認し、算定対象期間における賃金支払基礎日数を算出し、記入していきましょう。
3.賃金支払対象期間を記入する
賃金支払対象期間となる「退職日直前の賃金締切日の翌日から退職日までの期間」や「1カ月ごとの賃金締切日までの期間」を6カ月分記入していきます。
ただ、算定対象期間同様、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が対象となることから、対象外の月があった場合はさらに勤怠を遡り、合計で6カ月となるように記入する必要があります。
4.賃金額(労働の対償として支払われた賃金)を記入する
賃金額については、月給制の場合はA欄、時給制または日給制の場合はB欄に記入していきます。
賃金台帳や給与明細などを確認しながら、各月の合計額を算出し、記載していきましょう。一次的な手当や退職金などは除外し、「労働の対価として受け取った賃金」の記入が必要です。
5.退職した理由を記入する
離職理由の欄は「自己都合」「会社都合」「パートの契約満了」などの中から該当する物を記載していきましょう。
離職票と同時に提出する雇用保険被保険者資格喪失届と相違がないよう、正確に記入することが大切です。
離職票(離職証明書)の書き方の注意点
最後に離職票(離職証明書)の書き方の注意点を紹介します。
早めに手続きを行なう
離職票は失業給付を開始する重要な書類のため、なるべく早めに手続きを行ないましょう。
離職票の発行が遅延すると、退職した従業員に対する失業給付が遅れて金銭的に困ることがあるかもしれません。事前に必要書類を用意しておくなど速やかに手続きできるように準備するとよさそうです。
明確に退職理由を記入する
離職票(離職証明書)を発行する際、退職者と企業側で「退職理由」の内容に相違があるというトラブルが多いようです。
例えば、会社都合退職と自己都合退職では失業給付の開始期間が異なります。
退職理由については慎重に記載し、退職者の思いと相違がないようにしましょう。
離職票(離職証明書)の手続きを行なう前に、退職者に内容に間違いがないか確認してもらうとよいかもしれません。
誤りがないかチェックする
書類に不備があると手続き完了まで時間がかかってしまいます。
「誤字脱字がないか」「算定対象期間や賃金額に間違いはないか」などきちんとチェックするとよいでしょう。
また、書き方に不安がある場合は所轄のハローワークに問い合わせなどを行なってから記入すると安心ですね。
離職票(離職証明書)の書き方を知り、手続きに役立てよう
離職票(離職証明書)は退職者が安心して失業給付を受けるための大切な書類になります。
医療や保育、介護業界などでは人手不足の中で多忙な経営者や担当者もいるかもしれません。
ただ、離職票の発行が遅れて「退職した保育士に迷惑をかけた」「長年働いてくれた看護師に不安な思いをさせた」ということがあれば、トラブルに発展する可能性もあります。
企業側は事前準備を進め、早めに手続きを行ないましょう。
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