保育園を売却しようと考えても、「手続きが複雑そうで不安」「どこから始めればよいのかわからない」と感じる方はいませんか。保育園の売却は、単なる所有者の変更ではなく、子どもや保護者、職員の生活に関わる重要なプロセス。そのため、準備から交渉、契約に至るまで、正しい手続きを理解しておくことが大切です。今回は、保育園売却の流れを8つのステップに整理し、必要なポイントをわかりやすく解説します。
保育園の売却の手続きの流れを8ステップでわかりやすく解説!
そんな想いを抱えている園長先生や経営者の方もいるでしょう。
保育園の譲渡は、ただ所有者が変わるだけではありません。
準備から交渉、契約まで未来を守るための大切なステップがあります。
大まかな手続きの流れを確認しておくと、必要な内容や進め方を把握できるでしょう。ここでは、わかりやすく8つのステップにわけて紹介します。
実際の進め方や必要書類は園の形態や自治体によって異なるため、あくまでも一例として参考にしてくださいね。
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【ステップ1】M&A仲介会社や専門家などの相談先を選定
保育園の売却や譲渡は、経営や職員、子どもたちの生活に関わる重要な手続きです。
検討している方は、まずはM&A仲介会社や専門家に相談先の選定から始めましょう。
仲介会社に依頼すると、主に以下のようなサポートを受けられます。
- 売却先となる候補法人の探索・紹介・情報提供
- 契約書類やその他必要な書面の作成に関する支援
- 税理士、公認会計士、弁護士など専門家の紹介
上記のようなフォローがあることで、安心して交渉や契約に進められるだけでなく、条件に合う引き継ぎ先を見つけやすくなるでしょう。
さらに、保育業界の人材採用や運営支援に強い仲介会社であれば、園の特色や保育方針をしっかり理解したうえでマッチングが可能なため、納得できる引き継ぎが実現しやすくなります。
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【ステップ2】譲渡条件の決定
依頼する仲介会社や専門家が決まったら、保育園をどのような条件で引き継ぐのかを整理していきましょう。
以下の項目をふまえて、売却・譲渡の条件を考えておきましょう。
項目 | 内容例 |
---|---|
譲渡方法 | 株式譲渡、事業譲渡、理事・代表交代 |
譲渡範囲 | 園舎・土地、設備、運営権、関連事業 |
譲渡価格 | 収益性や資産・負債状況、地域の保育需要などを踏まえて設定 |
支払い方法 | 一括払い、分割払い |
譲渡時期 | 契約締結日、引き継ぎ期間 |
職員の雇用 | 雇用契約の継続可否や条件変更の有無 |
契約関係 | 賃貸契約、取引先契約の取り扱い |
行政手続き | 自治体承認申請、補助金の継続可否 |
売却・譲渡のための事業評価(仲介会社やM&Aの専門家、会計士・税理士などの第三者が行う)の前に条件の大枠を決めておけば、評価に必要な情報が整理され、交渉の準備がしやすいというメリットがあります。
また、売却・譲渡の進め方は「運営主体」や「施設形態」によっても違いがあるため、その点も抑えておきましょう。
運営主体ごとの違い
・社会福祉法人の保育園の場合
営利を目的としない法人で、譲渡の形で「理事や代表の交代」によって運営を引き継ぐことになります。所管庁への事前相談と承 認が必要です。調整に時間がかかるため、早めの相談が大切です。
・株式会社やNPO法人の保育園の場合
「株式譲渡」(会社ごと売却)または「事業譲渡」(保育園事業だけを売却)で引き継ぐことが可能です。売却額や条件を相談しながらの交渉が可能でしょう。
施設形態ごとの違い
・認可保育園
都道府県や市区町村の認可を受けて運営されている園のため、譲渡にあたっては自治体承認や、認可の申請の必要があります。
・認可外保育園
認可園より手続きはシンプルですが、助成金や施設基準の確認が必要です。
企業主導型保育園も認可外保育園に分類されますが、こども家庭庁が所管する助成制度を利用して運営されています。譲渡の場合は、処分を予定している6カ月前まで、譲渡以外の場合は3カ月前までに公益財団法人児童育成協会あてに申請が必要です。
譲渡の条件などの大枠を決める際に上記のような承認や必要な手続きについても、確認しておくとよいですね。
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【ステップ3】秘密を守る契約(NDA)を結ぶ
保育園の売却や譲渡を進める際は、契約前の段階で園の財務情報や職員体制、運営状況など、外部には公開していない機密情報を相手方に共有する必要があります。
このような重要情報が外部に漏れないよう、交渉の初期段階で秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)を結んでおくことが重要です。
NDAを結ぶことで、情報の使用目的や開示範囲、第三者への再提供禁止などが明確になり、万が一の情報漏えいリスクを防ぐことができます。
特に保育園の場合は、子どもや保護者の個人情報、職員の雇用条件、自治体との契約内容など、守るべき情報が多いため、より慎重な取り扱いが求められるでしょう。
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【ステップ4】事業評価
秘密保持契約(NDA)の締結が済んだら、次は保育園の事業評価を行います。
事業評価とは、保育園の収益力や資産価値、将来性などを客観的に算定し、売却・譲渡の交渉に必要な基礎データを明確にする作業です。
この評価は、M&A仲介会社やM&Aの専門家、公認会計士・税理士などの第三者の専門家が担当するのが一般的です。
評価結果の信頼性を担保するうえで重要なポイントです。
事業評価で分析される主な項目は以下の通りです。※あくまで一例です。
- 財務状況(過去数年の収益・費用・資産・負債)
- 園舎や設備の資産価値
- 園児数や地域の保育需要
- 職員体制や運営方針
- 自治体との契約・補助金の継続可能性
事業評価の前に条件の大枠(譲渡方法や範囲、職員の雇用方針など)を整理しておくことで、評価に必要な情報がスムーズにそろい、交渉戦略を立てやすくなります。
【ステップ5】交渉
事業評価の結果、譲渡が可能と判断されたら、いよいよ具体的なマッチングと交渉のステップに進みます。
マッチングでは、譲渡先候補となる法人や企業に対して、買収や引き継ぎの意思を確認しながら話し合いが行われるでしょう。
複数の候補がある場合は、業績や規模、事業展開エリアなど、自園が重視する条件の優先度を整理し、交渉の順番を決める場合もあるようです。
仲介会社や専門家は、交渉の順番や進め方を確認しながら、候補先への連絡や日程調整、必要資料のやり取りをサポートしてくれるでしょう。
たとえば、交渉では以下のような内容を話し合います。
- 譲渡価格
- 今後の事業や運営方針
- 園名や職員の待遇
相手先との条件のすり合わせや園の特徴・運営方針の説明などを行い、双方の理解を深めていきます。
保育業界に詳しい仲介業者に依頼しておくことで、譲渡先の情報収集の他、相談に応じてくれるため、安心して交渉ができるでしょう。
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【ステップ6】基本合意書の締結
交渉を重ねておおまかな合意内容を確認できたら「基本合意書」を結びます。
これは、最終契約に進む前に、双方が合意した内容を確認・記録するための重要なステップです。
基本合意書には、これまでの話し合いで決まった事項が盛り込まれます。※あくまでも一例です。
- 譲渡価格や支払い方法
- 経営者や職員の処遇
- 譲渡や引き継ぎのスケジュール
- 最終契約までの進め方
お互いの意思を正式に確かめる意味合いもあり、記載内容に誤りや漏れがないかを必ず確認します。
特に重要な条件はできるだけ明記しておくことが大切です。
【ステップ7】デューデリジェンス(保育園の価値の調査)
基本合意書を結んだ後は、譲り受ける側が仲介業者や専門家を通じて、譲渡される園や法人の価値やリスクを詳細に調べる「デューデリジェンス」を行います。
デューデリジェンスとは、これまでに提供された財務・事業・法務などの情報が正しいかを確認し、最終契約に進むための判断材料とする重要な調査です。
調査は、譲り受ける側が依頼する公認会計士・税理士・弁護士などの専門家によって行われます。
情報を隠さずに開示することが信頼構築の鍵となります。M&Aは信頼関係のうえで成り立つため、不利になりそうな内容でも正直に提示する姿勢が重要です。
【ステップ8】最終契約の締結
デューデリジェンスの終了後、M&Aの最終段階である最終契約(本契約)の締結に移ります。
譲り受ける側が買収を進めても問題ないと判断した場合、双方で再度条件を確認し、合意内容を契約書にまとめます。
最終契約は、基本合意書の内容をベースに、デューデリジェンスで判明した事項や、その後の交渉で新たに合意した条件を反映して作成します。
契約書には、譲渡価格・譲渡対象・決済方法・役職員の処遇などの重要項目が明記されます。
基本合意時点での内容に食い違いがないか、修正や補足が必要な箇所がないかを慎重に確認することが重要です。
すべての条件に納得したうえで、双方が署名・押印すれば、契約が正式に成立し、譲渡・引き継ぎへと進みましょう。
保育園の売却手続き~よくある質問Q&A~
保育園の売却に関する手続きや流れは、実際に進めるまではわかりにくい点も多いかもしれません。
ここでは、保育園の売却についてのよくある質問をまとめました。
売却金額はどのように決まりますか?
第三者による事業評価を受けることで、適正な価格を把握できるでしょう。
譲渡後も園の名前や方針は維持されますか?
希望がある場合は交渉段階で明確に伝えておくことが大切です。
職員の雇用はどうなりますか?
雇用の安定を重視する場合は、条件を明記しておきましょう。
保護者への説明はいつ行うべきですか?
説明のタイミングや方法は、トラブルを避けるため仲介会社や専門家と相談して決めるとよさそうです。
赤字の状態でも保育園を売却できますか?
保育園の価値は、必ずしも直近の収支状況だけで決まるわけではありません。
園舎や設備、地域の保育需要、職員体制、自治体との契約・補助金の有無など、将来の収益性や事業の継続性が評価される場合があるようです。
そのため、まずは仲介会社や専門家に相談してみるとよいでしょう。
ネクストビートに無料相談出典:幼保連携型認定こども園法令関係資料 / こども家庭庁出典:企業主導型保育事業ポータルサイト / 内閣府出典:事業引継ぎハンドブック ~M&A等を活用した事業承継の手続き~/中小企業庁出典:経営者のための事業承継マニュアル/中小企業庁
保育園の売却の手続きを把握し、園の未来をつなぐために準備を始めよう
保育園の売却の検討は、園児・保護者・職員の生活に関係する重要な選択肢です。
事前に8つのステップを見通しておくと、必要な準備や関係者への配慮を抜け漏れなく進められるでしょう。
まずはスケジュールを無理なく組み、仲介会社や専門家へ相談することが安心につながります。
なお、ネクストビートは、保育業界に特化した人材・経営支援で培った独自のネットワークを持ち、園の特色や保育方針を理解したうえで最適な譲渡先を探すサポートをさせていただきます。
「譲渡しようか迷っている」「保育園の経営に不安があり、売却も視野に入れている」などというご相談もお待ちしていますので、お気軽にお問い合わせください。
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