保育園を運営するうえで重要な後継者不足の問題。中小企業庁の調査でも、60代経営者の約4割が後継者不在と回答しており、保育園も例外ではありません。今回は、職員や役員への承継、第三者への承継、M&Aの活用など、それぞれの方法とメリット・デメリットを徹底解説!大切な園を次世代につなぐためのヒントとしてお役立てください。
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保育園の後継者不足が問題となっている背景
「園を続けたい気持ちはあるけれど、後を任せられる人がいない」そんな不安を抱える保育園経営者の方はいませんか。
長年、地域の子育て支援を担ってきた園でも、経営者の高齢化や少子化による定員割れから、先行きに悩むケースは少なくありません。
中小企業庁の調査によれば、60代の経営者の約4割が「後継者が不在」と回答しており、70代・80代でも依然として高い割合を占めていることがわかります。
引用:高齢の経営者における後継者不在率も改善しているが、依然として高い水準/中小企業庁
上記は、中小企業全体のデータですが、保育業界においても「後継者不足」が一部の園だけの問題ではなく、全国的に広がっていることも考えられます。
背景には、
- 後継を担う人材不足
- 保育業界から一般企業などへの人材流出
- 少子化による園児数の減少や定員割れ
- 物価高や最低賃金上昇による運営費・人件費の増加
こうした要因が重なり、園を残したい気持ちがあっても、後を託せる人が見つからずに悩む経営者もいるでしょう。
「閉園するしかないのか」「安心して引き継ぐ方法はないのか」と迷った際は、視点を変えて具体的な解決策を考えることが大切です。
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保育園の後継者不足を解決する方法とメリット・デメリット
保育園の事業承継というと、まず思い浮かぶのは「親族に引き継ぐ」ケースでしょう。
しかし、実際には、保育園経営には経験が必要な場合があり、親族に適任者がいないことも考えられます。
そのため、「職員や役員への承継」「第三者への承継」「M&Aの活用」といった選択肢をふまえて、大切な園を残す方法を検討してみましょう。
ここからは、それぞれの特徴とメリット・デメリットを紹介します。
職員や役員に承継する
園をよく知る職員や役員に経営を引き継ぐ方法です。日々の保育をともに担ってきた仲間に任せることで、園の雰囲気や理念を守りながら承継できるのが特徴です。
メリット
- 園の方針や保育の流れを理解しており、スムーズに引き継げる
- 職員や保護者にとって身近な人材なので安心感を与えやすい
- 園の文化や地域との関係性を維持しやすい
デメリット
- 経営や法人運営の経験が不足している場合がある
- 受け継ぐ側に大きな責任や資金面の負担がかかる
- 理念を受け着いてもらそうな職員や役員がいない場合がある
園をできるだけ変えずに存続させたい場合に適した方法ですが、経営面のサポート体制を整える必要があるかもしれません。
たとえば、理事長や園長には職員を据えて、財務や法人運営については外部の専門家に相談する体制を作るなど、経営と保育を分ける方法もあります。
第三者に承継する
親族や職員に適任者がいない場合などは、園外の個人や他法人へ経営を託す方法があります。地域の法人や事業者など顔の見える相手に直接引き継ぐやり方です。
地域で複数の保育園を運営している社会福祉法人や学校法人などの団体、保育事業に参入している企業などが承継先となることがあります。
メリット
- 法人格やネットワークを持つ団体に引き継げるため、経営基盤が安定しやすい
- すでに保育事業の経験がある相手なら、運営ノウハウを伝えやすい
- 地域や行政とのつながりを強化できる場合がある
デメリット
- 承継先の経営方針に合わせる必要があり、従来の独自性が薄れる可能性がある
- 大規模法人に吸収される形になると、地域に根ざした園らしさが失われやすい
- 直接交渉することで、条件面のすり合わせに時間がかかる場合がある
第三者への承継は、直接交渉するため、信頼関係を築きやすい一方で、契約までに何度もすり合わせを行うケースがあります。
その過程の中で、専門家を介して承継先を探すことができる「M&A」の方法とは異なり、判断や調整に迷いが生じることもあるかもしれません。
M&Aを活用する
保育園の経営を他法人や企業へ譲渡・売却する方法です。
仲介会社や専門家を通じて承継先の候補を全国規模で探すこともできるため、内部や地域に後継者がいない場合に有効な手段でしょう。
メリット
- 専門家が間に入り、財務や契約手続きまでサポートしてくれることが多い
- 承継先の候補を幅広く探せるため、自園に合う相手が見つかりやすい
- 譲渡益を得ることで、経営者自身の引退後の生活資金や職員への還元に活用できる
デメリット
- 手数料や仲介費用などのコストがかかる
- 仲介会社によってサービスの質や専門性に差があり、相性のよい専門家を見極める必要がある
- 財務や契約の透明性が重視されるため、園の内部資料や運営状況を細かく開示しなければならない
M&Aは、仲介業者や専門家が支援するため、スムーズに進みやすい一方で、譲渡条件や費用をどう設定するかが成功のカギになります。
契約後のトラブルを避けるためにも、仲介業者や専門家選びが重要になります。
保育業界に詳しいネクストビートに売却・譲渡を相談
保育園の後継者問題を解決するためにできること
保育園の後継者問題を抱えていても、日々の業務が忙しく、「問題解決に向けて一歩踏み出せない」という場合もあるでしょう。
ここからは、解決するためのプロセスを紹介します。
早めに専門家に相談する
後継者問題は経営や法務、財務など幅広い要素が関わるため、一人で判断するのは難しいものです。
まずは自治体の担当課に相談し、制度や支援策の情報を得ることが重要です。
また、保育業界に詳しいM&Aの仲介会社や、福祉分野の実績がある専門家に相談することも大切です。
専門的な視点で事業承継の進め方や選択肢を整理してくれるため、判断に迷ったときに力になってくれるでしょう。
なお、ネクストビートは、後継者不足に直面している保育施設の方々の相談に応じています。
経営に関するご相談はもちろん、貴園の事業承継について、サポートさせていただきますので、ぜひお問い合わせください。
「ゆくゆくは後継者を探したい」といった先を見据えたご要望にも対応いたします。
無料相談閉園を含めて検討する
事業承継が難しい場合、最終的な選択肢として「閉園」も視野に入れなければならないことがあるかもしれません。
長年大切に育んできた園を閉じるという決断は、経営者にとって非常につらいものでしょう。
閉園を選ぶ場合は、子どもたちの転園先探しや職員の再就職支援、行政への手続きなど、やらなければならないことが数多くあります。
保護者や地域への説明責任も生じるため、閉園を決断する際にも、専門家と相談しながら計画的に進めることが重要です。
自分の園に合った承継方法を考える
園の存続について考えるうえで大切なのが、「何を一番守りたいのか」「何のために事業承継をするのか」という根本的な問いに立ち返ることです。
そのためには、まず自園の状況を客観的に分析し、整理する必要があります。
【例】
- 園の理念や保育方針:これだけは譲れない、という園の核となるものは何か
- 経営状況:財務状況は健全か、資産や負債はどうなっているか
- 人材:理念を理解し、経営を任せられる職員はいるか、職員の年齢構成や定着率に課題がないか
- 地域との関係:地域にとってどのような存在であり、何を期待されているか
- 経営者自身の希望:いつまでに引退したいか、承継にかけられる時間や労力はどれくらいか
これらの要素を一つひとつ考え、「何を優先したいのか」を明確にしてみましょう。
たとえば、「理念や園の文化を何よりも大切にしたい」のであれば、まずは職員への承継を丁寧に検討するのがよいでしょう。
「経営の安定化や職員の待遇改善が急務」ということであれば、経営基盤のしっかりした法人とのM&Aが有効な解決策になるかもしれません。
自身の考えを整理することはとても大切です。
また、経営やM&Aに詳しい専門家に相談し、力も借りながら自園の未来と向き合う方法もあります。
子どもたち、保護者、職員、そして経営者自身にとって最善の道すじを考えてみましょう。
経営・M&Aの相談は保育業界に詳しいネクストビートへ
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保育園の後継者問題の解消を目指す~よくある質問Q&A~
保育園の後継者問題の解消に向けて、よくある質問をまとめました。
Q.園の経営が不安定です。事業承継できますか?
経営状況にご不安があると「買い手が見つからないのでは…」と考えてしまいますが、買い手側は現在の経営状況だけでなく、将来性や他の価値にも注目しています。
現在の経営状況も含めて相談できる仲介会社に問い合わせしてみましょう。
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Q.相談から事業承継の完了まで、どのくらいの期間がかかりますか?
特にM&Aの場合は、自園の強みや課題を整理する準備期間、相手先との交渉、法的な手続きなどに時間がかかります。
ご自身の引退時期から逆算し、余裕を持ったスケジュールで早めに準備を始めることが成功のポイントです。
Q.売却・譲渡する場合は、園名や保育方針を残すことはできますか?
買い手との交渉のなかで、自園の理念や方針を大切にしてくれる相手かどうかを見極める必要があります。話し合いを重ね、納得のいく形で園を引き継ぐようにしましょう。
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