
マサチューセッツ州ボストンで保育士として活躍するMoeさん。前回はMoeさんが自分らしく活躍している様子についてお届けしました。彼女は今、次の大きな夢に向かって動き出しています。それは「ボストンに日本人のバイリンガル保育園をつくる」という夢。もちろん、その道のりは決して平坦ではありません。しかし、夢の実現に向けて走り続けるMoeさんの姿は、今の自分のキャリアや生き方に悩みやモヤモヤを抱えるすべての人にとって、新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれるかもしれません。
プロフィール
Moeさん(アメリカ合衆国・マサチューセッツ州ボストン在住)
職業:保育士・ベビーシッター
その他の活動:英会話レッスン運営・インフルエンサー
Instagramフォロワー:約15万人
Tiktokフォロワー:13万人
YouTubeチャンネル登録数:1.8万人
※2025年10月時点
経歴
2021年:大学在学中に渡米、マサチューセッツ州ボストンのバイリンガルスクールで保育士として勤務
2022年:現在の保育園に転職し、SNS運営も並行しながら活躍中
前回の記事はこちら!
Moeさんの新しい夢「保育園をつくる」プロジェクト開始

アメリカ・マサチューセッツ州ボストンで保育士として働いていますが、それと並行して、今は新しい夢に向かって動きはじめています。(2025年10月時点)
それは「ボストンに日本人家族のための保育園をつくる」こと。
日本から移住してきた方や駐在家庭には、子どもに英語を学ばせたい一方、日本語も忘れないでほしいという願いを強く持つ方が多いんです。
そうした願いを叶えられる、日本語と英語のバイリンガルスクールの保育園の設立を目指しています。
目標は来年である2026年5月のオープン。今は、それに向けてのステップを一歩ずつ進めているところです。
保育士の経験から生まれた思いをかたちに
私自身、「日本人であること」が、自分のなかの核であり、大事なアイデンティティだと思っているんです。
単身で渡米してから「外国人」としてのボストンでの生活では、嬉しいこともつらいことも。数えきれないほど経験してきました。
そして、ボストンで知り合った日本人家族のなかには、英語でのコミュニケーションに悩みを抱えながら子育てしている方もたくさんいます。
保育士として働いていると、日本人の家族から「Moe先生がいてくれて本当に助かりました」と言ってもらえることも多くて。
そんな経験を通して、異国の地で頑張っている日本人の家族や子どもたちに、なにかできないかなと考えるようになりました。
夢を叶えるための忙しくてハッピーな毎日
「保育士としてできること」を考えたときに、強く意識したのが「日本語や日本文化の素晴らしさを、ボストンで暮らす日本人の子どもたちに残したい」という思いです。
その思いが、今回のチャレンジに踏み出したきっかけになりました。
もちろん、保育士の仕事が心から大好きで、ほかの仕事をしたいと全く思わないくらいやりがいと楽しさを見い出していることも、大きなモチベーションになっています。
異国の地で保育園をつくる難しさや大変さは、動いてみて初めて分かることばかりですし、毎日かなりのハードスケジュールです。
3、4時間睡眠で仕事へ行くこともありますが、こんなに自分がやりたいことに向かっていて、寝る時間すら惜しいって思うのは、26年間の人生で初めてなんです。
全然ハッピーだし、毎日アドレナリンが出ている感じですね(笑)。次から次へいろいろなことが起こるので、本当に生きてるなって実感しながら過ごしています。
人とのつながりが結んだ、夢に向けてのスタートアップ

2025年10月現在は、マサチューセッツ州に保育園として登録するための、認可をとる準備を進めているところです。
オープンさせるにも、その街と州で、充実した保育環境が整っているか、園舎や設備などが保育園にふさわしいかの審査をクリアしなければいけません。
2026年5月に運営開始することをゴールにしているので、年頭から教室をつくるなど園の準備を一つ一つ進めていく予定です。
この審査に合格して、やっとオープンの目途が立つという流れですね。
思わぬトラブル発生!それでも築いてきた信頼関係が心の支えに
実は、園舎として借りることを考えている物件に関して、思いもよらないアクシデントがあったんです。今はそのことで、かなり焦りがあるのが正直なところです。
というのも、もともと保育園を開くために考えていた物件は、今住んでいる部屋の大家さんが持っている物件でした。
保育園の物件を借りる場合は、大家さんが所有している土地に見知らぬ他人が出入りすることになるので、その許諾が必要になってきます。
でも、今住んでいる部屋の大家さんに物件を探していることを相談したら、所有しているいい物件を紹介してくれたんです。
今の部屋に住んで3年目。家賃を滞納せず大家さんとも信頼関係が築けたことで「いい物件との出会いにつながった!」と、とてもよろこんでいました。
そして何度かにわたる内覧も済ませ、大家さんもとても前向きにサポートしてくれていたのですが、なぜか急に、大家さんがその物件を他の人に売ってしまうことに……。
順調に進んでいた計画が、思いがけず白紙に戻り、また一から物件探しをしなければならなくなりました。保育園を開く予定まで、どんどん時間が迫ってくるのを感じています。
そんななか、保育士として働いている職場の上司に、保育園設立に向けて動いていることをカミングアウトしたときのことが、大変なことがあってもあきらめない原動力になっています。
上司は、私にとってボストンでの母のような存在だし、このビジネスがスタートしたら園を辞めることにもなるので、最初は言い出しづらくてとても緊張しました。
でも、勇気を出して伝えたら、全力でよろこんでくれて。
「これから大変だよ、でも、私はあなたが絶対にやり遂げるって分かってるから」「できることがあれば何でもするからね」。そう言ってくれたことが、本当に嬉しくて今でも忘れられません。
上司だけではなく、話をした人たちがみんな、前向きに夢を応援してくれていて、本当に支えられていると感じています。
今は焦りの気持ちもあるけれど、こんな時こそ、なぜここまでこの夢を叶えたいのか、原点に戻り、一日一日確実に進めていきたいと思っています。
キャッチコピーは「愛と学びが出会い、未来が羽ばたく」
保育士という仕事はよろこびも大きいですが、保育への課題を感じることもあります。
働くなかで強く感じたのは、保護者と保育士の意思疎通の大切さ。
たとえば、トイレトレーニングをはじめるにも、家庭と保育園でやり方や言われることが違ったら、子どもは混乱しますよね。
また、アメリカで暮らす日本人家族のなかには、その時々で、英語をメインにしたい場面と、日本語や日本の習慣・文化を覚えてほしい場面があるんです。
だから、私がこれからつくる園では、もっと保護者が意見を言いやすく、それと同時に「保育士の必要性や価値」も、保護者にしっかり理解してもらえる環境を作りたい。
保護者と保育士のコミュニケーションがしっかりとれれば、最終的にそれが子どもの成長につながるはずです。バランスをとるのは難しいですが、そこが大きな課題です。
また、保育園は子どもが最優先の場所ですが、子どものためにいい環境をつくるなら、保育士も働きやすい環境でないと、それに見合ったパフォーマンスはできない。これは実体験から痛感しています。
アメリカナイズされた考え方ですが「これだけの給料をもらう対価に、これだけの仕事をする」という意識は大切だし、それらを含めて、保育士もともに学んで成長できる場所にしたいと思っています。
今考えている園のキャッチコピーは「Where Love Meets Learning, and Future Takes Flight.」(愛と学びがそこで出会い、未来が羽ばたく)。
子どもに絶対に必要な「愛」と「学び」がいっしょになることで、子どもたちが思いきって未来に羽ばたいていける土台をつくる、そういうテーマをイメージしました。
将来を担う子どもたちに、ハイレベルな教育と大きな愛を提供できる場所ができることを目指しています。
夢のルーツとなったボストンでの体験、保育への思い

ボストンに来て保育士として働く5年間で、保育士として学ぶことがたくさんありました。
知識と経験がもっと必要だと感じて、今でも努力を続けていますが、それだけではない部分も大事にしていきたいと考えています。
愛と知識、両方の大切さ
知識面では、大学で保育や教育に関するさまざまなクラスのトレーニングや授業を、意欲的に受講して学んでいます。
それに加え、一人でいる時間にも積極的に読書をし、知識の引き出しを増やす努力をしています。
もともとランゲージバリア(言語の壁)もあって、周りから遅れている自覚もあるので、それをカバーするには人一倍やらなきゃと思い、今でも勉強を続けています。
でも、そのなかで、保育には「知識」と「愛」両方のバランスが大事だと改めて感じています。
初めて保育士として働き出した園で、1年目に担当したあるお子さんは、発達面でのサポートが必要な子でした。
担当が決まったとき、正直「もっと英語が話せて知識と専門性、そして経験がある先生のほうが、この子のためになるのでは」と思うこともありました。
でも勉強や経験を重ねてきた4年目に、再び発達面でのサポートが必要な子どもが私のクラスに来ることが決まったとき、上司が私を指名して、こう言ってくれたんです。
「この子には、Moeが一番フィットしていると思ったから、一番近くで責任を持ってみてあげてほしい。お母さんにもつらい思いがたくさんあるから、Moeの性格がきっとこの子と家族のためになる」。
そのとき、ただ知識を勉強するだけじゃなく、愛を大事にしながら保育士として働いてきた自分の方向は間違っていなかった、と実感することができました。
その積み重ねが大きな自信になって、今の「Moe先生」につながっています。
今後はそれに経験が加わって、さらにレベルアップしたいと思っています。知識に関しては終わりがないので、これからもずっと学び続けたいですね。
保育で心がけている二つのポイント
保育を行ううえで、常に意識していることが二つあります。
一つは「子どもを一人の人間として対等に接する」ことです。
子どもが泣きわめいたり、感情が爆発したり、ごはんを全く食べなかったりしたときに「子どものわがまま」と捉えるのではなく、一人の人間として捉えて原因を考えます。
「この子は、なぜ今泣いているのか?」と考えたときに、自分に置き換えたら、人としての原因がちゃんとあることに気づけるんですよね。
「子どもだから」と片付けるのではなく、それをちゃんと見つけてあげることを大切にしています。
もう一つが「子どもを絶対に否定しない」こと。
これは、ボストンの保育園で働いていて共感できた保育方針の一つです。
たとえば、子どもが次から次へとおもちゃを出して、部屋いっぱいにおもちゃが散乱している…みたいな状況ありますよね。
このような場合は「もう出さないで!」と否定するのではなく「このおもちゃを出したいんだね、じゃあ1個だけお片付けしよう」というように、子どもの『ワクワク』を残しつつ、でも方向転換して会話をするんです。
そうすることで、子どもは否定されることなく、さらにお片付けの習慣も身につけられます。
否定の言葉を使わずに、子どものやりたい意思を肯定する保育。これは自分の園でも必ず実践させたいと思っています。
迷いや悩みがあっても成長を止めない、未来に続くビジョン

日本への思いが強い私ですが、今はまだまだアメリカで挑戦したいし、アメリカにいる日本人のためになりたいと考えています。
でも、いつかは日本に住む人たちや子どもたちにも、保育を通して自分ができることをしたいという思いもあるんです。
保育園を開くことができたら、ボストンの園で働く保育士を日本から採用したり、いつか日本でもその園を展開していったり、やりたいことはたくさんあります。
今の夢の先で、日本の幼児教育にも関われたらうれしいですね。
海外で働きたいなら「まず行動!」
最近はSNSを通じて、海外で働きたいという相談をもらうことが増えてきました。
運動ができる姉・勉強ができる姉がいる3人姉妹の末っ子で、目立たなかった私でも、こうして単身でボストンに来て、夢を叶えようとしています。
だから、海外で働くことに悩んでいるなら、まずは行動を起こしてほしいです。自分が本当に行きたいのであれば、もう何が何でもそこを譲らずトライしてみてください。
行動して、たとえ望んでいた結果にならなくても、その時間は、自分の人生にとって絶対に無駄にならないはずです。強気でガンガン前に進んでほしいですね。
悩んだら、自分の心と向き合うことが大事
日本で働く保育士さんがぶつかる壁もありますよね。
「仕事と給料が見合ってない」「人間関係がうまくいかない」から続けるのがつらい、でも、子どもたちが大好きだから辞めたくない、という声はよく聞きます。
でも、そんなふうに悩んだ時こそ、まずリラックスして自分のことを客観的に見てほしいです。
まずは自分を遠いところから見て「心がワクワクしているか」「楽しい時間を過ごしているか」を問いかけてみてください。
「楽しい時間を過ごしている」と思えるのなら、そのなかのモヤモヤと向き合って、一つひとつ解決していく必要がありますよね。
でも客観的に見て、今「ワクワクできていない」と思えるなら、いったん立ち止まって考えるのもよいのではないでしょうか。
私がいつも自分に言い聞かせている言葉は「モヤモヤしたり、悩んだり、答えが出ない時間は、成長が止まってるわけではない」。その時間こそ、人は成長していると思うんです。
成長のための時間を大切にするために、急がず、自分と向きあってもらえたらと思います。
いつか私のカラーで作った保育園をアメリカ全土に広めたい!
「保育園をオープンする=ビジネスを始める」ことなので、今は、それまで知らなかったビジネスの勉強をはじめて、たくさん本を読んで、さまざまな研修を受けています。
そうやって、とにかく自分の弱いところを克服することからはじめました。
来年(2026年)になったら、オープンに向けたあらゆることが本格的に動いていくので、自分自身もいまだにドキドキしているのが本音です。
でも、やりたいことがあるなら、どんな手を使ってでも叶えたいと思っています。
さらに先の大きな夢は、私のカラーで作った保育園をアメリカ全土に広めたい!
このボストンにとどまらず、日本人が多いほかの地域にもどんどん作って、最終的には日本にも届けられたらなっていうのが、もっと先の未来の大きな夢です。
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Where love meets learning, and future takes flight ~愛と学びから、未来が羽ばたく~















































