「連絡帳に何を書けばいいかわからない」「毎日同じ内容になってしまう」と悩む保育士さんに向けて、九州産業大学の田中沙織教授が、保育の専門性を活かした連絡帳の書き方について解説します。

プロフィール

お名前
田中 沙織(たなか さおり)
所属
九州産業大学 人間科学部 子ども教育学科 教授
専門
子どもの保健、乳児保育、幼児の身体活動と生活リズム
主な活動
福岡県保育協会保育士会 調査研究部会に長年関わり、連絡帳を通じた保育者の専門性向上に関する研究を継続。
共編著に『福岡県保育士会発 連絡帳スタディブック』(ミネルヴァ書房、2025年)。
連絡帳の書き方に悩むのは、あなただけではありません
「連絡帳の書き方が分からない」「毎日同じ内容になってしまう」。
保育者の方とお話していると、多くの方からそんな声をいただきます。
福岡県の保育士さん461名を対象に行った大規模調査でも、共通する悩みが寄せられました。
「私だけが書けないのかな…」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
保育士さんに多い「連絡帳の悩み」5選
私たちが実施した調査研究では、保育者の方から共通して挙げられた連絡帳のお悩みは、次の5つでした。
- 午睡中に全員分書ききれない
- その日、書くことがない子がたまにいる
- 年上の保護者からの相談へどう答えればいいかわからない
- 書く内容がマンネリ化してしまう
- 保護者からの返信が少ない
特に若い保育者の方は、「ちゃんと書かなければ」「保護者に伝わるように書かなければ」と真面目に考えるほど、かえってペンが止まってしまうことがあります。
一方で、経験を重ねたベテランの方でも、「毎日同じような内容になってしまう」「本当はもっと子どもの姿を書きたいのに時間がない」と悩まれている方が多いです。
これは、連絡帳が単なる「事務作業」ではなく、それだけ深い専門性が問われるツールだということの裏返しなのだと、私は考えています。
出典:寺田清美 著『保育者の伝える力』(株式会社メイト、2016年)
「書き方」のテクニックを探しても解決しないのはなぜ?
連絡帳の文例集を探したり、「おたより帳 書き方」のテンプレートをネットで検索したりした経験のある保育士さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、文例だけを真似しても、自分がいざ書くとなれば、うまく活用できない場面もあると思います。
私は、連絡帳がうまく書けないと相談を受けたとき、まず「その日、その子のどんな姿が心に残っていますか?」と聞き返すようにしています。
書けないのは、言葉が足りないのではなく、視ている視点がまだ広がっていないだけかもしれないと思っているからです。
つまり、「書き方のテクニック」だけを探しているうちは、なかなか自分らしい連絡帳にはたどり着けません。
鍵は、「子どもをどう視ているか」にあるんです。
連絡帳は保育士の専門性が一番現れる場所
実は、毎日書いているその連絡帳に、保育者の専門性が表れています。
ここからは、その理由について解説します。
連絡帳の歴史と、現在も紙の連絡帳が選ばれる理由
実は、連絡帳の原型は1950年(昭和25年)にすでに存在していました。
「家庭連絡簿」と呼ばれていたもので、戦後5年後にはすでに、家庭と園を結ぶツールとして使われていた記録が残っています。
つまり、連絡帳は75年以上にわたって、保育現場で受け継がれてきた文化なのです。
2020年に行われた全国調査でも、約74.3%の保育施設が連絡帳を「保護者との連携で重視している」と回答しています。
ICT化が進む今、なぜ手書きの連絡帳が選ばれ続けているのでしょうか。
それは、他のツールでは補いにくい役割があるからだと、私は考えています。
保育士と保護者をつなぐツールごとの違い
一般的な保育園での、保育者と保護者をつなぐツールを4つに整理してみました。
| ツール | 特徴 | 弱み |
|---|---|---|
| 連絡帳 | 個別性が高く、いつでも見返せる。継続的に記録できる | 書く時間がかかる/活用していない園もある |
| 口頭 | 気軽でタイムリーに伝えられる | 様々な保護者と話せるが、記録は残らない |
| おたより | 園全体やクラスの様子を伝えられる | 個別性がなく、自分の子どもの様子はわからない |
| SNS等 | 写真や様々な情報を見せられる | 個別性に欠ける/プライバシーの問題 |
こうして並べてみると、「その子の育ちを継続的に、保護者と一緒に見守る」という役割は、連絡帳にしかできないことが見えてきますよね。
保育士から見た、連絡帳の3つのパターン
連絡帳の使われ方については、先行研究で3つのパターンに整理されています。
あなたの書いている連絡帳は、どれに近いでしょうか。
| パターン | 意味づけ | 主な焦点 |
|---|---|---|
| パターン1 | 保育記録としてのツール | 子どもの健康状態や基本的生活実態の把握(連携・コミュニケーション) |
| パターン2 | 保護者支援のツール | 保護者との信頼関係づくり、子育てへの支援 |
| パターン3 | 保育ソーシャルワークのツール | 保護者の不安や悩みの解決、実践の意味づけや変容 |
「元気でした」ばかり書いてしまうのは、パターン1にとどまっている状態かもしれません。
連絡帳が“その子のもの” になるのは、パターン2〜3に近づいたとき。
書き方を変えるとは、パターン1から徐々に2や3へ進んでいくということです。
保護者は連絡帳のココを見ている!書く前に知っておきたいこと
「私の書いている連絡帳、ちゃんと読まれているのかな…」と不安に思うこともあるかもしれませんが、保護者の反応についても興味深い調査結果があります。
保護者の約9割が「連絡帳は必要」と回答
私たちが保護者384名を対象に行った「連絡帳が必要かどうか」を確認する調査では、
- 約96%の保護者が、連絡帳を「とても必要」または「まあまあ必要」と回答
- 約88%の保護者が、「連絡帳が子育ての不安解消に役立っている」と回答
しています。つまり、10人のうち9人以上の保護者が、連絡帳を必要としていることがわかりました。
さらに、子育てに不安や悩みを抱える保護者は約60%にのぼり、その多くが「連絡帳に救われている」と答えています。
つまり、あなたが毎日書いている連絡帳は、保護者の子育てを支えるツールとして、確実に機能しています。
保護者が読みたいのは「うちの子の、今日のリアル」
同じ調査で、保護者が連絡帳に書いてほしい内容について質問をしたところ
という結果でした。
ここで、注目していただきたいのは、上位はすべて「うちの子の、今日のリアル」を求めているということ。
テンプレート的な美しい文章よりも、「その子だけの、その日だけの、リアルなエピソード」が求められているんです。
完璧な文章を書くことは求められていないことがわかりますね。
明日から実践できる、連絡帳の書き方を変える3つのコツ
ここからは、連絡帳の書き方を変える具体的な3つのコツをご紹介します。
あなたの連絡帳はどの段階?
まずは、自分の連絡帳がどんな段階にあるのか、確認してみましょう。私たちの研究では、連絡帳の記述は次の3つの段階に整理できることがわかっています。
出典:田中沙織 編著『福岡県保育士会発 連絡帳スタディブック』(ミネルヴァ書房、2025年)図4-3を参考に作成
コツ① 子どもの気持ちを「ひとこと」代弁する
第1段階から第2段階に進むための、最初の一歩は子どもの気持ちを書き起こすことです。
「なぜ、その子はその行動をしたのか?」を、自分の見立てで一行だけ書き足してみる。
これを意識することにより、子どもの心情を積極的に読み取れるようになります。
実際のBefore/Afterを見てみましょう。
【Before】
「ブロックでお家を作って遊びました」
【After】
「ブロックでお家を作りながら『パパとママの部屋はここ!』とつぶやいていました。“お家の中の自分の場所” を意識し始めているのかもしれません」
たったこれだけです。
事実だけでなく、「その子が感じていたかもしれないこと」を一行添える。これで、連絡帳は確実に変わります。
私は、「書けない」の背景には、文章力の問題だけではなく、“子どもを見る視点” や“保育を言葉にする経験” が関わっていると考えています。
だからこそ、“上手な文章を書く方法” ではなく、「子どもをどう見るか」「保護者とどう育ちを共有するか」 という視点から連絡帳を考え直したい。それが、3つのコツの根底にある考え方です。
コツ② 「同じ場面」を別の保育士さんの目で見てみる
一人で連絡帳を書いていると、どうしても視野が狭くなりがちですよね。
そんなときは、次の3つを意識してみてください。
その場合は、
- 主任の先生や同じクラスの先生に「この子のことを最近どう視てる?」と一言聞いてみる
- 他クラスの先生に、一日の様子を伝えてもらう
- 休憩時間に、ある子のことについて気になっていることを話してみる
を意識してみましょう。たったこれだけで、書ける内容がふっと広がります。
研修を通して、園内で同じ子の姿を複数の保育者の方で書き比べてみるだけで、“自分には見えていなかった視点” に出会えるケースが多いこともわかっています。
コツ③ 「専門性のひと言」を一文だけ添える
最後のコツは、「専門性のひと言」を添えることです。
「保育所保育指針」「発達理解」「保育観」 。これらの視点をひとつだけ重ねる。
これが、私たちの研究内容でいう第3段階。連絡帳が“その子の育ちの記録” に変わる瞬間です。
例えば、以下のような書き方です。
「指先を使う遊びが続いていて、◯歳児のこの時期に大切な“集中して取り組む力” が育っているのを感じます」
「すごく専門的に書かなきゃ」と気負わなくて大丈夫です。一文だけで十分。
これだけで、保護者の方には「先生はうちの子の発達をちゃんと見てくれているんだ」という安心感が伝わります。
“書く力” は、文章力ではなく“視る力” です。視る力が育てば、ことばは自然についてきます。
今回紹介した3つのコツは、その視る力を育てるための小さな入り口なんです。
5分の映像で試してみよう!連絡帳の書き方が変わるミニワーク
ここまで紹介した3つのコツを実際に練習する方法として、書籍の中で紹介しているミニワークをご紹介します。
研修方法を記事の中で試してみる
私たちは、96名の保育者の方を対象に「5分の映像視聴 → 記入シート → 比較・対話」というシンプルなワークを9回継続して実施しました。
その結果、次のような変化が見られました。
- 79.2%の保育者が「子どもの読み取り方に変化があった」と回答
- 64.6%の保育者が「連絡帳の書き方が変わった」と回答
つまり、約8割の保育者の方が、わずか9回のワークで「子どもの見方」が変わったのです。この研修方法を、記事の中で一部体験してみましょう。
実際にやってみる3つのステップ
出典:田中沙織 編著『福岡県保育士会発 連絡帳スタディブック』(ミネルヴァ書房、2025年)から一部引用
動画で紹介する具体的なステップは以下の通りです。
(『福岡県保育士会発 連絡帳スタディブック』ミネルヴァ書房、2025年、p.87より要約)
何気ない場面なのに、子どもの心情を細やかに読み取っていることが伝わりますよね。これが、「第2〜3段階」の記述になります。
また、書籍では2つの動画を紹介していますので、より深く学び方はご覧ください。
同じ場面でも、保育士の数だけ書き方が違うことに気づく
書籍では、この保育者の方の記述に対して、複数の保育者からのコメントももらい、さらにステップアップできる視点も添えています。
例えば、「保護者との人間関係に触れている点が素晴らしい」「保育所保育指針の◯章を踏まえると、もう一歩こう書ける」など、専門性の視点が可視化されていきます。
つまり、「比べる」だけで、書き方が確実に変わります。
保育歴別の連絡帳の書き方事例紹介
連絡帳の書き方を実際に保育者に向けて研修を行いました。そこで、知ることができた保育歴別の4つの保育者の方の事例を紹介します。
1〜3年目フレッシュタイプ:「何を書けばいいか分からない」あなたへ
研修で出会ったある1年目の保育者の方の事例です。事実をそのまま記録すること、保護者への共感や寄り添いの言葉を書くことに、一生懸命でした。
記述例
「今日は縄跳びで遊びました。楽しそうに友達と手を繋いでいる姿がかわいかったです」
しかし、研修の中で「子どもは今どんなことを感じていたのだろう」「何を伝えたかったのだろう」と考える機会を重ねるうちに、少しずつ子どもの内面や意図、保育者自身の願いや思いが記述に表れるようになっていったんです。
その方が最後に「何を書くかではなく、何を伝えたいかが大事だとわかった」と話してくださったのが印象に残っています。
若い保育者の方ほど文章力の不足を心配しがちですが、本当に大切なのは“上手に書くこと” ではなく、“その子をどう見ているか” ではないかと私は考えています。
連絡帳は技術よりも先に、子どもへのまなざしが表れるものと実感した事例でした。
中堅タイプ:「もっと深く書きたいのにマンネリ」というあなたへ
次にご紹介するのは、中堅の保育者の方の変化です。研修初期から、26年目のある保育者の方は、こんな思いを語ってくださっていました。
- 「自分の記述には課題がある」
- 「もっと違う見方が必要かもしれない」
しかし長年培ってきた経験があるからこそ、無意識に同じ視点で子どもを観察することが習慣となり、「子どもはこうあるべきだ」という価値観も、少なからず抱えていらっしゃったといいます。
映像研修を重ねる中で、次のような気づきが生まれるようになりました。
- 「自分は思った以上に子どもを評価的に見ていたかもしれない」
- 「もっと多様な視点で柔らかく子どもを受け止めたい」
最終的には、「正しいことだけではなく、保護者の努力や不安に応えるような記述を心がけるようになった」と振り返っていました。
この変化から、子ども理解だけでなく、保護者理解もまた保育者の専門性なのだと、私は改めて学びました。
経験を重ねた保育者の方が、自分のスタイルを疑い、変わろうとする姿勢の尊さを感じた事例でした。
若手保育者を育てる中堅・主任タイプ:「教えるのが難しい」というあなたへ
続いて、若手を育てる立場の方の事例です。21年目の主任保育者の方は、日頃から多くの連絡帳を読む立場にいらっしゃいました。
「連絡帳には保育者の専門性だけでなく、その人らしさも表れる」と感じていらっしゃった一方で、若手保育者の連絡帳が事実のみの記述になっていたり、毎日同じような表現になっていたりすることに課題を感じていらっしゃったんです。
連絡帳を修正したり助言したりしても、「先生はその場にいなかったからわからないのではないでしょうか」「先生みたいには考えられません」と言われ、悩んでいらっしゃいました。
しかし研修を重ねる中で、その方の関心は「どう教えるか」から「どう引き出すか」へと変化していきました。
若手保育者の中にある子どもへの思いや願いを丁寧に言葉にしていく対話を重ねるうちに、こんな気づきに至ったのです。
「正しい書き方を教えるのではなく、その人の中にある思いを言語化することが大切ではないか」
人を育てることもまた連絡帳と同じだなと、私は感じました。答えを与えるのではなく、その保育者自身が見ているものに気づけるよう支えることが、生き生きとした記述につながる。そう考えています。
経験豊富なベテランタイプ:「書けるけど、自分の見方が偏っていないか」というあなたへ
最後にご紹介するのは、35年目のベテラン保育者の方です。もともと高い観察力と豊富な経験を持っていらっしゃいました。
一方で、研修当初はこんな率直な思いも語ってくださいました。
- 「自分には特に課題がない」
- 「研修の必要性をあまり感じていない」
しかし、他の保育者の記述や意見に触れる中で、次のことに気づきました。
「自分の見方にも癖や偏りがある」「経験があるからこそ固定化している部分がある」
研修の終盤には、「もっと柔らかな発想で子どもを見たい」「ユーモアや温かさのある表現も大切にしたい」と記述されるようになり、大きな変化がみられました。
経験を積むことと、柔軟であり続けることは別の力なんだなと、私はこの事例から感じました。
経験豊富な保育者の方ほど、自分自身の見方を問い直すことは簡単ではないけれど、それでもなお学び続けようとする姿勢に、保育者としての専門性の本質が見えるんです。
園内研修にも使える、「連絡帳を語り合う」5分研修
連絡帳を一人で書いて終わりではなく、園全体で語り合う研修にすることで、保育の質は大きく向上していきます。
私たちの書籍は、“5分の映像 → 一人で記入 → みんなで比べる” という構成を採用しています。
お昼寝中などの限られた時間でも実施できるよう、意図的にデザインしたんです。
研修の進め方の一例は、こんな流れです。
- 対話:4名程度のグループに分かれ、感想や気づきを話し合う
- 発表:グループの代表者がそれぞれの話し合いの内容を共有する
- 回覧:記入シートを数名ごとに分けて回覧し、コメントを書き込む
- フィードバック:主任の先生からコメントが添えられる
「同じ子どもを視ても、保育者の数だけ書き方が違う」ことを共有するだけで、お互いの専門性に気づき合えるんですよ。
忙しい現場で“研修の時間” を確保するのは本当に難しいと思います。
だからこそ、5分の映像と1枚のシートで”今日からできる研修”の形にこだわりました。
最後に連絡帳に悩む保育士さんへ伝えたいこと
なぜ「連絡帳」を研究テーマに据えたのか
私は、連絡帳は「保育の専門性が最も表れる場所の一つ」だと感じています。
保育という仕事は、子どもの小さな変化や気持ちの揺れを丁寧に読み取りながら行われていますよね。
しかし、その専門性は“暗黙知” として存在していることが多く、社会からは見えにくい部分があります。
例えば、保育者は子どもの視線や表情、声のトーン、友達との距離感など、本当に細かなことを見ながら関わっています。
しかし、その営みは「遊んでいるだけ」「見ているだけ」 に見えてしまうことも少なくありません。
その中で連絡帳は、「今日、この子をどう見ていたのか」「どのような思いで関わったのか」 を言葉として残す、とても大切で貴重な場なのではないか。そう考えるようになりました。
私は、保育の専門性を社会や保護者に伝えていくためには、この“見えにくい保育” を言語化することが必要だと考えています。
だからこそ連絡帳は、単なる連絡ツールではなく、子どもの理解、保育観、家庭支援の姿勢が表れるものとして研究してきました。
研修等で多くの保育者の方と関わる中で、「何を書けばいいかわからない」「毎日同じ内容になってしまう」「書くことが苦しい」 という声をたくさん聞いてきました。
だからこそ、“上手な文章を書く方法” ではなく、「子どもをどう見るか」「保護者とどう育ちを共有するか」 という視点から連絡帳を考え直したい。
それが、このテーマ取り組み続けている理由です。
研修で見てきた、保育者の変化
研修の中で、私の心に強く残っている事例があります。
ある先生は、1歳児の姿について、「我が強い」「感情のコントロールが苦手」「家庭でのしつけが不足している」と、他の保育者とは異なる捉え方をしていらっしゃいました。
もちろん、自分の心がそう感じること自体が間違っているわけではありません。
しかし研修を通して、「自分はなぜそう感じるのだろう」「子どもはなぜその行動をしているのだろう」「その子は何を伝えたかったのだろう」 と考えるようになり、1歳児の発達で大事なことは何なのか、保育所保育指針を読み直していらっしゃる先生の姿があったんです。
すると研修を重ねるたびに、「自分の思いを伝えようとしている」「自我が育ってきている」「安心できる大人との関係の中で感情を表出している」 など、読み取りの記述が変化していきました。
この変化が、私はとても印象に残っています。保育者が変わったのは“言葉” ではなく、“保育に対する姿勢” や“子どもの見方” だったから。連絡帳は文章を書く技術だけでなく、子どもの理解そのものを映し出します。
だからこそ私は、連絡帳を書く力を育てることは、子どもを見る力を育てることでもあると考えているんです。
「書けない」と悩む保育士さんへ
連絡帳を書くことは、単に“文章を書く仕事” ではないと考えています。子どもの姿を見つめ、その子の気持ちを想像し、保護者の方と育ちを共有しようとする、とても専門的な営みなんです。だからこそ、簡単ではありません。
でも、悩みながら書いているということは、それだけ真剣に子どもを見ようとしているということでもあると思います。完璧に書こうとしなくて大丈夫ですよ。
まずは、「今日、この子のどんな姿が心に残っただろう」 と問いかけるところから始めてみてください。
その積み重ねが、きっと“その子らしさ” を見つける力につながっていくのだと思います。
2026年6月現在、保育を取り巻く環境は大きく変化していますよね。
その中で、保育者には多くの役割や専門性が求められるようになりました。
だからこそ私は、連絡帳を単なる業務としてではなく、「子どもの育ちを社会に伝えていく営み」 として捉え直すことが大切だと感じています。
子どもの声なき声、小さな姿に気づき、それを言葉にし、保護者の方と共有すること。その積み重ねは、子どもの育ちを支えるだけでなく、あなた自身の専門性や自信にもつながっていくと、私は考えています。
この本やこの記事が、日々悩みながら子どもと向き合っている先生方にとって、「少し明日が楽しみになる」 きっかけになれば嬉しいです。
田中先生編著の書籍について、最後にご紹介します。
| 書名 | 『福岡県保育士会発 連絡帳スタディブック』 |
| 発行 | ミネルヴァ書房(2025年3月1日) |
| 編著 | 田中 沙織 (編著)ほか/上村眞生・福岡県保育協会保育士会 調査研究部会 編 |
| 書影 | ![]() |
あなたが今、連絡帳の書き方に悩んでいるとしたら、それは保育者として一歩成長しようとしているサインかもしれません。
明日の連絡帳、まずは一行だけ“その子の気持ち” を書き加えてみませんか。
そこから、保護者の方とのあたたかな対話が始まるはずです。



















































