乳児院とは、さまざまな事情で保護者と暮らせない0歳児〜2歳児を、父母に代わって24時間体制で養育する施設です。全国約147カ所に設置され、一時保護やショートステイの受け皿にもなっています。この記事では、乳児院の役割・対象年齢・入所理由・施設数の推移と今後の課題までを、厚生労働省・こども家庭庁の資料をもとにわかりやすく整理し、乳児院での仕事内容・資格・給料なども紹介します。

乳児院とはどんな施設?
乳児院とは、さまざまな事情によって保護者との生活が困難な乳児を保護し、養育する施設のことをいいます。
運営は地方自治体や社会福祉法人などが行っています。
まずは、乳児院の概要をくわしく見ていきましょう。
対象となる年齢
主に0歳児から2歳児ほどの子どもたちが入所しています。実際には2歳児あるいは3歳児まで入所していることも多く、低年齢児を養育する施設であることが大きな特色です。
乳児院への入所期間
入所している子どもたちは、24時間すべてを乳児院で過ごします。
子どもの半数は在所期間が6カ月未満と、短期保護が中心です。
一方で、長期在籍となる3歳以上の子どもの多くは、重い障がいを抱えていたり、兄弟姉妹が同じ施設にいたりと、保育や看護を必要とするケースが多いようです。
乳児院の職員配置
児童福祉法により、乳児院には以下の職員を配置しなければならないと定められています。

このように、乳児院では職員がチームとなって子どもを手厚くサポートしています。
複雑な事情を抱える子どもを支えるには、さまざまな専門職の連携が欠かせません。
乳児院への入所理由
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乳児院がどんな施設か分かったところで、次は利用する子どもの入所理由を見ていきましょう。
厚生労働省「乳児院運営指針」では、乳児院に入所している子どもの理由を以下のように説明しています。
入所理由
- 両親の精神疾患を含む病気
- 父母の就労
- 父母の受刑
- 虐待
- ネグレクト
このように、さまざまな理由で入所していることが分かります。
近年は、母親の精神疾患や虐待による入所が増加傾向にあるようです。
また、乳児院に入所する子どもの多くが心身に何かしらの問題を抱えており、入所児の約半数が病児、虚弱児、障がい児、被虐待児だといわれています。
乳児院の役割
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乳児院では、さまざまな専門職が常駐して子どもたちを支援しています。
では、乳児院に求められる役割にはどのようなものがあるのでしょうか。
入所期間に応じた支援
乳児院の役割は、入所期間によって大きく次の2つに分かれます。
短期間の入所(一時保護、ショートステイ):子育て支援
長期間の入所:子どもの養育、保護者支援、退所後のアフターケア
家庭に代わって子どもを養育する、大切な機能を担っていることが分かります。
乳幼児の保護と養育
乳児院の一番大きな役割は、乳幼児を保護し、安全な環境で養育することです。
さまざまな事情で養育が困難な家庭に代わって一時的に乳幼児を保護し、社会的な養育を行います。
緊急時の一時保護によって子どもの安全を守る機能も担っています。
乳児院は24時間365日乳幼児のケアを行い、健やかな成長を助ける役割をもつ施設と言えますね。
被虐待児・病児・障がい児への専門的な養育
被虐待児や病虚弱児、障がい児など、特別なケアを要する子どもも入所してきます。
そのため、医療と連携した専門的な養育を行う役割を担っています。
低出生体重児や慢性疾患児、発達の遅れがある子どもに対して、医師や看護師のフォローのもとリハビリなどのケアを行うこともあります。
保護者や里親の支援
早期の家庭復帰を視野に入れ、保護者に対しても支援を行います。家庭復帰後の親子のアフターケアも役割のひとつです。
乳幼児が新しい里親のもとで生活することになった場合には、里親家庭のケアや支援を行うこともあります。
地域の子育て支援
短期的な入所では子どもの一時保護が目的とされ、地域の子育て支援の機能も果たしています。
各地域と契約を結び、「ショートステイ」や「トワイライトステイ」、育児相談などの事業にも取り組んでいます。
乳児院は地域の重要な社会資源として、子育て支援に力を注いでいると言えるでしょう。
乳児院の役割は、社会的に非常に大きな意義を持っています。
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乳児院の現状
乳児院について学んだり実習したりした経験のある保育士さんはいるかもしれませんが、日常的にはあまり馴染みのない人も多いでしょう。
ここでは、乳児院の現状についてみていきましょう。
入所児童数と施設数はどう推移している?
こども家庭庁が2025年に調査した資料「社会的養育の推進に向けて」によると、乳児院は全国147カ所、定員3,707人に対し現員(入所児童)は2,289人です。
定員に対して入所児童数には余裕があり、近年は緩やかな減少傾向が続いています。
とはいえ、依然として乳児院が社会にとって必要な施設であることに変わりはありません。
進む乳児院の小規模化
乳児院は、子どもへのより個別的な対応が求められる施設です。
保育士や看護師など職員の配置基準は厳しい一方で、入所児童の定員が40人以上の大規模な施設もあります。
近年は、こうした大規模施設を縮小し、グループ単位での養育を推進する動きが進んでいます。
愛着形成に重要な乳児期を、より家庭に近い環境で過ごせると言われています。
小規模化が進むことで、職員にとっても子ども一人ひとりにじっくり関われる、ニーズに合わせた養育ができるといったメリットがあります。
乳児院が抱える今後の課題
厚生労働省「乳児院運営ハンドブック」によると、乳児院が抱える課題として、専門的養育機能の充実・養育単位の小規模化・保護者支援や地域支援機能の充実の3点が挙げられています。
同資料では、あわせて課題への対策となる将来ビジョンも示されています。
乳児院の抱える3つの課題
課題として、以下のようなことが検討されています。
- 専門的養育機能の充実士
- 養育単位の小規模化
- 乳児院の保護者支援機能、地域支援機能の充実
具体的には、リハビリ等の医療や療育と連携した専門的養育機能の充実、虐待ヲ受けた増加にともなう個別対応職員、家族療法や親への心理相談などを行う心理療法担当職員の配置が求められています。
また、小規模グループケアを進めるための基本的な人員配置なども課題です。
乳児院機能の将来ビジョン
厚生労働省は、これらの課題への対策として、2011年にすべての乳児院が基本的に備えるべき機能を「法的(必須)義務機能」とし、制度を早急に確立すべき専門的機能と位置づけました。
この「法的(必須)義務機能」には、以下の6つが挙げられています。
法的(必須)義務機能
- 一時保護所機能
- 専門的養育機能
- 親子関係育成機能
- 再出発支援機能
- アフターケア機能
- 地域子育て支援機能
これらを機能させるために、医療・福祉・心理など多角的な視点で包括的な支援方針を設定する必要があるとしています。
今後は、さまざまな問題を抱えた子どもに対応できる専門職員の配置、包括的な職員研修、横断的なカンファレンスのシステム構築と実施を進めていく必要があると考えられています。
乳児院で働くには?仕事内容・資格・給料の概要
ここまで乳児院の役割や現状を見てきました。
ここからは、実際に乳児院で働く場合の仕事内容・資格・給料について、全体像をかんたんに整理します。
仕事内容の概要
乳児院で働く保育士の仕事は、保育園での乳児保育に近い部分もありますが、大きく次の3つに分かれます。
- 子どものサポート:おむつ替え・食事・入浴など生活全般の支援。年齢が上がると生活指導や絵本の読み聞かせなど学びの面も
- 保護者のサポート:親許へ戻れるよう面会の機会をつくり、育児を再開できる環境づくりを支援
- 親子関係のサポート:保育士が間に立ち、退所後のアフターケアまで担う
また、24時間体制で運営されるため、早番・遅番・夜勤を含むシフト勤務になるのが特徴です。
必要な資格
乳児院で働く代表的な職種は、医師・看護師・保育士・栄養士などで、職務に応じた資格が必要です。
乳児保育や養護の実務経験は必須ではないことが多いものの、育児経験や医療・福祉・療育の知識があると役立ちます。
給料・待遇の目安
乳児院で働く保育士の給料は、基本給がやや高めに設定されている施設もあり、一般的な保育士と比べてやや高い傾向があるようです。
24時間勤務のため夜勤手当や住宅手当、退職金制度など福利厚生が充実している施設も見られます。
やりがいと大変さ
保育士1人に対して乳児1人といった手厚い保育ができるのが乳児院の特徴で、責任は大きいものの、その分大きなやりがいを感じられます。
一方で、仕事内容が多岐にわたり夜勤で生活リズムが不規則になりがちな点や、事情のある子ども・家庭への対応で精神的負担を感じる場面がある点は、大変さとして知っておきたいところです。
乳児院のボランティア
乳児院では、資格の有無を問わずボランティアを募集していることがあります。
子どもの遊び相手や食事の世話、施設の掃除など内容はさまざまですが、施設の雰囲気や仕事内容を知る機会になります。
求人に応募する前の”下見”として活用するのもおすすめです。
仕事内容・資格・給料・一日の流れ・ボランティアのくわしい実務情報は、こちらの実務ガイドに集約しています。
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乳児院についてよくある質問
Q. 乳児院とはどんな施設ですか?
運営は地方自治体や社会福祉法人などが行い、24時間365日体制で子どもの生活を支えています。一時保護やショートステイの受け皿にもなっています。
Q. 乳児院には何歳まで入所できますか?
実際には2〜3歳まで入所しているケースもあります。長期在籍となる子どもには、障がいなどで保育・看護を必要とする場合が多い傾向です。
Q. 乳児院にはどんな子どもが入所しますか?
こども家庭庁「社会的養育の推進に向けて」(令和5年度中の新規措置児童)によると、乳児院の入所理由は父母の虐待が25.4%ともっとも多く、次いで精神疾患等19.8%、放任怠惰(ネグレクト)14.3%の順です。また、乳児院に入所する子どものうち虐待を受けた体験がある割合は50.5%にのぼり、保護者の孤立や障がいの受け入れ困難が虐待・ネグレクトの背景にあるケースもあるようです。
Q. 乳児院と児童養護施設の違いは何ですか?
乳児院は主に0〜2歳ごろの乳幼児が対象で、児童養護施設はおおむね2歳以降から18歳までの子どもが対象となります。どちらも社会的養護を担う施設です。
Q. 乳児院ではどんな職員が働いていますか?
複雑な事情を抱える子どもを支えるため、専門職の連携が欠かせません。保育士として乳児院で働く方法は乳児院で働くにはでくわしく紹介しています。
乳児院について理解を深め、働き方を考えてみよう
乳児院とは、さまざまな事情で家庭で暮らせない乳幼児を24時間体制で養育し、家庭復帰や里親家庭への橋渡しまで担う、社会的養護の重要な施設です。
今回は、その役割・入所児の年齢・現状と今後の課題について、厚生労働省・こども家庭庁の資料をもとに整理しました。
乳児院で働く保育士は、医師や看護師などと連携して子どもの養育にあたり、ときには保護者や里親のサポートも行います。
責任は重く大変なことも多い分、やりがいも大きい仕事といえるでしょう。
仕事内容・資格・給料・一日の流れなどは、以下の記事で詳しくまとめています。
▶ 乳児院での仕事を徹底解説!働く保育士さんの体験談も
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出典:児童福祉施設最低基準/こども家庭庁出典:最低基準等及び措置費における職員配置基準について出典:乳児院運営指針/こども家庭庁出典:社会的養育の推進にむけて/こども家庭庁出典:児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進のために(概要)/こども家庭庁出典:乳児院運営ハンドブック/厚生労働省
乳児院の適性・相性診断
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