モンテッソーリ教育とは、子どもが本来もつ「自分で育つ力」を信じ、大人がその活動を見守り援助する教育法です。今回は、基本の考え方や5つの教育分野、メリットとデメリット、何歳から取り入れられるのかまで、保育の現場目線でわかりやすく紹介します。自分に合った保育のかたちを考えるヒントにしてみてくださいね。また、▶幼児教育法のまとめ記事もぜひ参考にしてください。

モンテッソーリ教育とは子どもの自己教育力を育てる教育法
モンテッソーリ教育とは、子どもには生まれながらに「自分で育つ力(自己教育力)」が備わっているという考えに基づいた教育法です。
大人が一方的に何かを教え込むのではなく、子どもが「やってみたい」と思える環境を整え、その自発的な活動を見守り援助することを大切にしています。
「自分で選んで、納得いくまで繰り返す」という経験の積み重ねが、子どもの自立心や集中力、自分で考える力を育てていくといわれています。
独特の教具を使用し、子どもの自発性を促す教育法は、100年以上経った今でも時代や文化の違いを超えて世界中で支持されています。
現在世界140以上の国にモンテッソーリ実践園が存在しており、日本の多くの幼稚園や保育園でも取り入れられいます。
日本では、年齢の異なる子どもが同じクラスで過ごす「縦割り保育(異年齢保育)」のなかで、モンテッソーリ教育が取り入れられることが多いです。
2〜3歳頃から6歳頃までを一つのクラスとして編成し、年下の子が年上の子の姿を見て学んだり、年上の子が年下の子をいたわったりと、子ども同士の関わりのなかで思いやりや社会性が育まれていくといわれています。
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モンテッソーリ教育の基本となる2つの考え方
モンテッソーリ教育を理解するうえで欠かせない、2つの基本的な考え方を紹介します。
自己教育力
自己教育力とは、子どもが自ら学び、自分で自分を育てていく力のことです。
子どもは教えられなくても、自分から歩こうとしたり、言葉を覚えたりしながら成長していきます。
これは、子ども自身が自立に向かって育とうとする力のあらわれと考えられています。
大人の役割は、知識を詰め込むことではなく、その力が発揮されるように子どもをよく観察し、発達に合った環境を整えることとされています。
敏感期
敏感期とは、特定のことに強い興味をもち、集中して吸収する特別な時期のことです。
たとえば、小さな物を何度もつまみたがったり、同じ動作を繰り返したりする姿は、その時期ならではの「育ちのサイン」かもしれません。
この時期を逃さず、興味に合った環境を用意することが、モンテッソーリ教育では大切にされています。
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モンテッソーリ教育の5つの教育分野
モンテッソーリ教育では、子どもの興味を引き出すために専用の教具を用いて、主に5つの分野を学びます。それぞれを紹介します。
日常生活の練習

着替えやボタンかけ、注ぐ・たたむといった、身の回りの活動を扱う分野です。
- 洋服のボタンかけ・チャックの開け閉め
- コップに水やお茶を注ぐ
- 布巾で机を拭く、雑巾がけをする
- 洗濯ばさみで物をはさむ
- 花を生ける、植物に水やりをする
子どもサイズの本物の道具を使いながら、手や指先を自分の思い通りに動かす練習を重ねていきます。
「自分でできた」という満足感や達成感が、自立心や自信につながっていくと考えられているのですね。
感覚教育

視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五感を使い、感覚を洗練させていく分野です。
- 長い・短いを知る(長さの棒)
- 色の濃淡を並べる(色板)
- 重さの違いを比べる(重量板)
- 手触りの違いを感じる(布合わせ)
- 音の高低を聞き分ける(音感ベル)
専用の教具を手で触れながら具体的に体感していきます。
こうした経験が、物事を比べたり分類したりする知的活動の土台になっていくでしょう。
言語教育

「話す・書く・読む」という言葉の力を、段階を踏んで育てていく分野です。
- 砂文字板で文字の形をなぞる
- 絵カードと言葉をマッチングさせる
- 五十音や単語の音を聞き分ける
- 簡単な文章を読む練習をする
- 自分の思いを言葉で表現する
子どもの興味や発達段階に合わせて活動を取り入れ、語彙を豊かにしていきます。
ただ言葉を覚えるだけでなく、その意味を理解していくことを大切にしていると言われています。
数教育

ビーズや数の棒などの具体的な教具を使い、数の概念を学ぶ分野です。
- 数字と数量を対応させる(数の棒)
- ビーズを使って一の位・十の位を学ぶ
- 数字カードを並べて数の順番を理解する
- 具体物を数えながら足し算・引き算に触れる
計算の正確さよりも、数が表す「量」を実際に手で触れて体感することを大切にします。
具体物を通して身につけた感覚が、その後の抽象的な思考にもつながっていくかもしれませんね。
文化教育

動植物や歴史、地理、音楽、美術など、幅広い世界への興味を広げる分野です。
- 世界地図のパズルで大陸や国を知る
- 動植物の写真カードで名前を覚える
- 季節の行事や国旗について学ぶ
- 簡単な歴史の年表に触れる
- 音楽や美術作品に親しむ
子どもが「知りたい」と思う気持ちをもとに、身近な体験を通して世界に触れていきます。
興味の入り口が広がることで、学ぶことそのものへの意欲が育まれていきそうですね。
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モンテッソーリ教育のメリットとデメリット
モンテッソーリ教育には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。現場で取り入れる際の視点もあわせて紹介します。
メリット
主体性が育まれる
子どもが自分で活動を選び、納得いくまで取り組むため、「自分で考えて行動する力」が育まれやすいといわれています。
「やりたいことを自分で選ぶ」という経験の積み重ねが、就学後の主体的な学びの姿勢にもつながっていくかもしれませんね。
集中力が身につく
自分で選んだ活動には、子どもも自然と夢中になりやすいでしょう。
静かに集中できる環境のなかで一つのことに取り組む経験が、深い集中力を育てていくと考えられています。
自立心が育つ
身の回りのことを「自分でできた」と感じる経験を重ねることで、自立心が育まれていきます。
大人が先回りして手伝いすぎず、見守る関わりが、子どもの「一人でできるよろこび」を支えていくことが意識する必要があります。
デメリット
集団行動の機会が少なくなることがある
個々の活動を尊重する分、みんなで同じことをする時間が比較的少なくなる場合があります。
運動会や行事など、集団で取り組む活動とのバランスを意識して取り入れるとよいかもしれません。
環境の準備に手間がかかることがある
子どもの発達段階に合った教具や環境を整える必要があるため、準備や入れ替えに手間がかかる場面もあるでしょう。
最初からすべてを完璧に揃えようとせず、できるところから少しずつ整えていく意識が大切かもしれませんね。
関わり方に専門的な理解が求められる
「教える」のではなく「見守り援助する」という関わりには、子どもの観察力やタイミングの見極めが必要になります。
はじめは戸惑うこともあるかもしれませんが、研修や日々の実践を通して少しずつ身についていくものでしょう。
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モンテッソーリ教育は1歳頃から取り入れられる
モンテッソーリ教育は、0歳から6歳までの乳幼児期を特に大切な時期と考えています。
なかでも、自分でやりたい気持ちが芽生えてくる1歳頃から取り入れられるといわれています。
年齢によって関わり方や活動の内容は変わってくるでしょう。発達段階に合わせて、おおよそ以下のように考えられています。
- 0〜1歳半頃:安心できる環境のなかで、見る・触れるなど感覚を使った活動を中心にする
- 1歳半〜3歳頃:着替えや片づけなど、身の回りの「自分でやりたい」を尊重する
- 3〜6歳頃:感覚・言語・数・文化など、興味に合わせて活動の幅を広げていく
年齢や一人ひとりの育ちに合わせて、「今この子は何に興味をもっているか」を観察しながら関わっていくことが大切になりそうですね。
モンテッソーリ教育を取り入れた園での一日の流れ
実際にモンテッソーリ教育を取り入れた園での一日の流れを紹介します。
とくに特徴的なのが、子どもが自分で選んだ活動に集中して取り組む「おしごとの時間(お仕事の時間)」と呼ばれる時間帯です。
午前中の集中しやすい時間に、1〜3時間ほど設けている園が多いようです。
3〜5歳児クラスの一日の例を見てみましょう。
| 時間 | 活動の内容(一例) |
|---|---|
| 7:00頃〜 | 順次登園・健康観察・自由遊び |
| 9:00頃〜 | おしごとの時間(教具のなかから自分で選び、個別に活動) |
| 11:00頃〜 | 片づけ・集まりの時間(歌や絵本の読み聞かせなど) |
| 12:00頃〜 | 昼食・休息(午睡) |
| 15:00頃〜 | おやつ・戸外遊びや集団活動 |
| 16:00頃〜 | 順次降園・延長保育 |
※一日の流れや「おしごとの時間」の長さ・取り入れ方は、園の方針や子どもの年齢によって大きく異なります。
「おしごとの時間」以外は、一般的な保育園と大きく変わらない流れの園も多いでしょう。
歌や絵本、戸外遊び、集団での活動の時間も設けながら、バランスをとっているようです。
モンテッソーリ教育を取り入れた園と一般的な保育園の違い
モンテッソーリ教育を取り入れた園と、一般的な保育園の違いを整理してみましょう。
| 項目 | 一般的な保育園(一例) | モンテッソーリ教育の園(一例) |
|---|---|---|
| 活動の進め方 | 保育士が決めた活動に取り組むことが多い | 子どもが自分で活動を選び、個別に取り組む時間を大切にする |
| クラス編成 | 年齢別のクラスが中心 | 縦割り(異年齢)のクラスを取り入れる園が多い |
| 保育士の関わり | 活動を主導し、教えることも多い | 環境を整え、見守り援助する関わりが中心 |
| 使う道具 | 一般的なおもちゃや製作の材料 | 発達段階に合わせた専用の教具を多く使う |
| 行事 | 季節の行事が多く、準備期間も設ける | 行事を比較的少なめにする園もある |
※上記は一般的な傾向をまとめたものです。実際の保育内容は園によって大きく異なり、モンテッソーリ教育を一部だけ取り入れている園もあります。
「保育士が活動を引っ張る」というより「子どもの活動を支える」関わりが中心になるのがモンテッソーリ教育の園の特徴といえそうですね。
モンテッソーリ教育を取り入れた園で働く先生に求められること
ここからは、モンテッソーリ教育を取り入れた園での先生の役割について詳しく見ていきましょう。
子どもが活動しやすい環境を整える
モンテッソーリ教育は「環境づくり」が大切です。
教具を子どもの目線の高さにきれいに並べたり、使ったものを元の場所に戻しやすいよう整えたりと、子どもが自分で選んで取り組める環境を準備することが必要です。
朝の時間や子どもが帰ったあとに、教具の点検や入れ替えを行う場合もあるようですよ。
教具の使い方を「提示」する
子どもが新しい教具に取り組むときには、保育士さんが使い方を伝える「提示」と呼ばれる関わりを行います。
言葉で細かく説明するよりも、動作をゆっくり見せ、子どもが自分で繰り返せるように見守ることがポイントです。
研修や先輩の様子を通して少しずつ身についていくものといえそうですね。
一人ひとりの様子を観察し、記録する
子どもがどの活動に興味をもち、どのくらい集中していたかなどを観察し、記録に残すことも仕事の一つです。
こうした記録は、次にどんな教具を提示するかを考えたり、保護者面談や指導計画の作成に役立てたりするために活用されます。
子ども一人ひとりをじっくり見られるため、小さな成長の変化に気づきやすいという声もあるようですよ。
子どもを観察し、見守る姿勢を大切にする
モンテッソーリ教育では、保育士さんは「教える人」ではなく「環境を整え、見守り援助する人」という役割を担います。
子どもが何に興味をもっているのかをよく観察し、必要なときにそっと手を差し伸べる関わりが大切です。
つい手伝いたくなる場面でも、子どもが自分でやり遂げる時間を待つ姿勢が求められます。
未経験でも始められることが多い
モンテッソーリ教育について、「専門的で難しそう」と感じる保育士さんもいるかもしれませんが、入職後の研修や先輩のサポートを通して少しずつ学べる園も多いようです。
はじめから完璧を目指す必要はなく、日々の実践のなかで教具の扱いや関わり方を身につけられるでしょう。
モンテッソーリ教育に関するよくある質問
Q. モンテッソーリ教育とは何か、わかりやすく教えてください
イタリアの医師であり教育家でもあったマリア・モンテッソーリ博士が、約100年以上前に考案しました。
大人が教え込むのではなく、子どもが自分で選んで取り組める環境を整えることを大切にしているのが特徴ですね。
Q. モンテッソーリ教育の特徴は何ですか?
子どもが自ら学び育つ力を信じ、興味が高まる時期に合った環境を用意することを重視します。
専用の教具を使い、子どもが自分のペースで繰り返し取り組めるようにしている点も特徴といえるでしょう。
Q. モンテッソーリ教育の「おしごとの時間」とは何ですか?
「お仕事」といっても働くわけではなく、子どもが自分のペースで没頭する活動を指します。
午前中に1〜3時間ほど設けている園が多いようです。
この時間以外は、歌や絵本、戸外遊びなど一般的な保育園と共通する活動を取り入れている園もあるそうです。
Q. モンテッソーリ教育の教具とはどのようなものですか?
たとえば、長さの違いを体感する棒や、数の量を体感するビーズなどがあります。
子どもが自分で扱いやすく、間違いに自分で気づけるよう設計されていることが多いといわれています。
Q. モンテッソーリ教育は何歳から取り入れられますか?
0歳から6歳までの乳幼児期を特に大切な時期と考えており、年齢に合わせて関わり方を変えていきます。
年齢が上がるにつれて活動の幅を広げていくとよいかもしれませんね。
Q. モンテッソーリ教育のメリットとデメリットは何ですか?
子どもが自分で選んで取り組む経験は、考える力や自信につながっていくでしょう。
一方で、行事など集団での活動とのバランスや、教具・環境の準備には工夫が求められるかもしれません。
Q. 家庭でもモンテッソーリ教育は取り入れられますか?
子どもが自分でできるよう物の置き場所を工夫したり、選択肢を示して自分で選んでもらったりする方法があります。
ただし、安全への配慮は大前提です。「自由」と「見守り」のバランスを意識できるとよいですね。
Q. モンテッソーリ教育を取り入れた園で働くのはどのような人に向いていますか?
「教える」よりも「子どもの育ちを支える」関わりに魅力を感じる方は、やりがいを感じやすいでしょう。
未経験から研修を通して学べる園も多いため、興味があれば一歩踏み出してみるのもよいかもしれませんね。
モンテッソーリ教育を理解して自分に合う保育を考えよう
モンテッソーリ教育とは、子どもがもつ「自分で育つ力」を信じ、大人がその活動を見守り援助する教育法です。
自己教育力と敏感期という考え方を土台に、日常生活・感覚・言語・数・文化の5つの分野を通して、子どもの主体性や集中力、自立心を育んでいきます。
取り入れる園では、子どもをよく観察し見守る関わりが求められますが、未経験から学べる環境も多いようです。
モンテッソーリ教育への理解を深めながら、自分が大切にしたい保育のかたちに合った園を考えてみるきっかけにしてみてくださいね。
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