お正月飾りのひとつである鏡餅。年末が近づくと、保育園でも飾り始めることでしょう。日本では、昔から新年を迎える前に鏡餅を飾る風習がありますが、どのような意味や由来があるのか知らない方もいるのではないでしょうか。今回は、お正月に鏡餅を飾る意味や由来を詳しく解説します。また、子どもに鏡餅について聞かれたときの答え方も確認しておきましょう。
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■目次
鏡餅とは?
そもそも鏡餅とは、大きさの異なる丸いお餅2個を重ねたお正月飾りのひとつです。そんな鏡餅の原料には、お米が使われています。
日本には、昔からお米の一粒一粒に神様が宿っているという言い伝えがあります。そのため、神様が宿るお米を使って作る鏡餅は、さらに強い力が宿る神聖な食べ物として古くから親しまれてきたのです。
鏡餅に込められた意味
鏡餅が2段になっているのは、大小2段で月と太陽、陰と陽を表しているそうです。福徳(幸福と財産)が重なって縁起がよいと考えられており、円満に年を重ねるという意味も込められているといいます。
他にも、その年の豊作を願い、新しい門出を祝うという意味もあるそうです。つまり、鏡餅には、健康や豊作への願いが込められていることがわかります。
鏡餅という名前の由来
鏡餅という名は、かつて銅鏡と呼ばれていた丸い鏡に由来するといわれています。三種の神器でもある銅鏡には神様が宿るとされ、神聖なものであると考えられていたようです。
そのことから、年神様の依り代となる丸い餅を鏡に模して、「鏡餅」と呼ぶようになったと伝えられています。
鏡餅を飾る期間はいつ?
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鏡餅を飾る期間に明確なルールはありませんが、基本的には12月29日と12月31日を避けた日に飾るとよいといわれています。
なぜ、上記の日を避けるべきなのかというと、12月29日は「苦(9)二重になる」、12月31日は「一夜限り」を連想させることから、縁起が悪いと考えられているからのようです。
基本的に、鏡餅を含むお正月飾りは大掃除を終わらせてから飾るのがいいとされているので、末広がりの8が入っていて縁起がよいとされている12月28日に飾るとよいでしょう。
なお、鏡餅はお正月が終わったら鏡開きを行ないます。鏡開きをする日程の目安は、お正月飾りを飾っておく期間を指す松の内を過ぎてからが一般的です。地域によって異なりますが、1月11日もしくは1月15日に鏡餅をおろして食べるといいとされています。
鏡餅は保育園のどこに飾るといいの?
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鏡餅を飾る場所は、家庭であれば床の間など一段高いところに飾るのが一般的です。しかし、保育園には床の間はありません。
そのため、玄関などの入り口付近や職員室などに飾るところが多いようです。とはいえ、職員室の場合、保育園で働く職員以外入室することはありませんので、園児や保護者に目につきにくいですよね。
このことから、子どもにも保護者にも目につきやすい玄関などの入り口付近に飾っておくという保育園が多いといいます。なお、子どもの目につくところに鏡餅を飾る場合は、触って落としてしまわないように手が届かないところに飾るようにしましょう。
鏡餅についている飾りの意味とは
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年末が近づくと、スーパーやホームセンターなどで簡単に手に入る鏡餅。鏡餅についている飾りについて気になることがあるかもしれません。
小さいサイズのものであればお餅の上にみかんが乗っている程度の飾りですが、大きいサイズのものだとさまざまな装飾が施されています。ここでは、鏡餅についている飾りの意味を確認しておきましょう。
三方(さんぽう)
三方は、神様へのお供え物を乗せるための台座のことです。古くから神聖な木として知られる檜で作られているのが特徴です。
四角い形をしており、そのうち三面に穴が開いていることから、この名がつけられています。
四方紅(しほうべに)
四方紅は、三方の折敷の上に敷いてお餅を乗せる四方を紅で縁取った色紙のことです。
天地四方(天と地、東西南北)を拝して災いを払い、新年の繁栄を願う意味が込められているようです。
御幣(ごへい)
鏡餅で用いられる御幣は、赤と白の四角形が連なったような帯状の紙のことです。
通常、御幣は神道の祭祀などに用いられ、竹や木に紙垂(しで)と呼ばれる白い紙を挟んだ形をしています。赤は魔除けの色とされ、繁栄を祈願する意味が込められているようです。
裏白(うらじろ)
裏白はシダの一種で、表面は緑色なのに対して裏が白いことからその名がついているといわれています。裏白は、古い葉とともに新しい葉が生えてくることから、久しく栄えるようにという願いが込められているようです。
また、葉の裏が白いことから、後ろ暗いところがない清廉潔白の心を表すともいわれています。
昆布(こんぶ)
古くは昆布のことを「広布」(ひろめ)といい、喜びが広まっていくという意味があるようです。また、蝦夷(えぞ)地方で取れることから、夷子布(えびすめ)と呼ばれ、七福神のえびすさまに掛けて福を授かるという意味もあるといわれています。
さらに、「子生」という漢字を用いて表されることもあり、子宝に恵まれるようにという願いも込められているそうです。
橙(だいだい)・みかん
鏡餅の上に橙を乗せるのは、「家系が代々(だいだい)栄えますように」という願いが込められているからだそうです。
これは、橙が冬に実が熟しても落ちず、枝についたまま何年も落果しないことから、1本の木に何代もの実がついている様子を長寿の家族に見立てて、家族繁栄を祈願していたといわれています。橙は、みかんで代用されることも多いようです。
串柿(くしがき)
串柿は、干し柿を串に刺したものです。柿は「嘉来」と表され、喜びや幸せをかき集めるという語呂合わせから、鏡餅に飾られているといわれています。
また、干し柿には大きな種が入っていることから、子宝に恵まれるという意味があるとも伝えられています。
子どもに鏡餅について聞かれたときの答え方
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保育園の中に飾ってある鏡餅を見た子どもに、「あれは何?」と質問をされた経験のある保育士さんもいるのではないでしょうか。ここでは、子どもに鏡餅について聞かれたときの答え方を紹介します。
Q.鏡餅って何?
「鏡餅は、お正月に向けてお家のリビングや玄関に飾るものだよ。年神様っていう神様がやってくる場所なんだって。」
Q.どうして鏡餅を飾るの?
「鏡餅は神様が帰ってくるお家みたいなものなの。だからお正月に鏡餅を飾って、お迎えをするんだよ。そうすれば、神様がみんなに幸せを運んでくれるんだって。」
Q.どうして鏡餅の上にみかんが乗っているの?
「鏡餅の上に乗っているのは、橙っていうの。橙は何年間も実を落とさない果物だから、鏡餅の上に飾って家族みんなの長い幸せをお願いする意味が込められているよ。」
保育園で子どもに鏡餅について教える方法を紹介
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保育園でも、子どもに鏡餅の意味を知ってもらいたいと考えている保育士さんもいるのではないでしょうか。ここでは、保育園で子どもに鏡餅について教える方法を紹介します。
鏡餅がテーマの絵本や紙芝居の読み聞かせをする
鏡餅をテーマにした絵本や紙芝居の読み聞かせをするといいでしょう。たとえば、日本鏡餅組合では鏡餅の意味などを伝えるオリジナル絵本「かがみもちってなぁに?」を作成しています。
電子書籍にも対応しているため、スマートフォンやタブレットなどで無料でダウンロードすることが可能です。また、PDF化された紙芝居も無料でダウンロードできますので、鏡餅について教える際に役立つでしょう。
鏡餅の製作をする
鏡餅にちなんだ製作をしてみましょう。2段のお餅や頂点に乗っている橙などが特徴的なため、お絵かきにも適したテーマといえそうです。
また、紙粘土を重ねたり、新聞紙やティッシュペーパーを丸めたりして、立体的な鏡餅の製作に挑戦してみるのもよいでしょう。
保育士バンク!の動画チャンネルでは、折り紙を使った鏡餅の製作動画を公開中です。詳しい作り方を知りたい方は、参考にしてみてくださいね。
鏡開きを体験する
保育園に飾ってあった鏡餅を使って、鏡開きを体験しましょう。鏡開きは木槌などで叩いて割るのが習わしなので、子どもたちでもチャレンジしやすいはずです。
鏡開きをするにあたってさまざまな作法があるので、子どもたちに説明しながら一緒に取り組むとよいでしょう。
お餅を食べる
鏡開きで割ったお餅を、お汁粉やお雑煮などに調理して保育園で食べてみましょう。鏡餅を開いてできた餅玉には、年神様の魂が宿っているとされているため、残さずに食べるのが習わしです。鏡餅の意味や由来とともに鏡開きについて説明すると、より関心を持ってくれるかもしれませんよ。
保育園でお餅を食べる際は、子どもたちがのどに詰まらせないように注意しましょう。小さめにちぎったり、ひとつずつ口の中に入れることを伝えたりして、子どもたちの安全を見守りながら食べることが大切です。
子どもたちが理解しやすいように工夫をしながら鏡餅の意味を伝えよう
鏡餅は、かつて丸い形をしていた鏡に由来してその名前がつけられており、新年にやってくる年神様をお迎えするという意味があるようです。
鏡餅について子どもたちに伝えるときは、鏡餅がテーマになった絵本や紙芝居を読み聞かせると興味を持ってもらいやすいでしょう。
また、実際に鏡開きを行ない、お餅を食べるという体験をしてみることでも、お正月の風習を学ぶきっかけのひとつとなります。
新しい年を迎える前に、子どもたちに鏡餅の意味を伝える時間を設けてみてはいかがでしょうか。