高卒で保育士になるためにはどのような方法があるでしょうか。保育士資格の取得方法は主に2つありますが、社会人や主婦の場合保育士試験を受験する方が多いようです。今回は、高卒から保育士になるための方法を紹介します。くわしい受験資格や実務経験の積み方、通信教育などを活用した合格に近づくための勉強法もまとめました。
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■目次
高卒から保育士になるのは可能?
保育士になるには、大卒や短大卒といった学歴が必要だと思っている方もいるかもしれません。
しかし、実際は最終学歴が高卒であっても保育士資格を取得し、保育士になることは可能です。
とはいえ、どのように保育士を目指せばよいのか気になりますよね。
まずは、高卒の社会人や主婦の方が保育士になるための方法を見ていきましょう。
高卒から保育士になる方法
高卒者が保育士になるには以下の2つの方法があります。
「高卒認定」を取得している場合についてもあわせて解説します。
指定保育士養成施設に入学する
都道府県知事が指定している保育士養成施設に入学し、単位を取得して卒業することで自動的に保育士資格を取得できます。
高卒であれば、保育士養成課程のある大学や短期大学、専門学校の入学資格を満たしているため、受験して合格すれば入学できるでしょう。
養成課程はだいたい2年から4年程度とされています。授業は講義形式の座学だけでなく、ピアノや造形表現などを含めた実技の授業や、提携保育施設での実習などもあるようです。
保育士試験に合格する
保育士資格は、国家試験である保育士試験に合格することで取得できます。
高卒の場合、卒業年度や卒業学科、実務経験の有無など、受験に際していくつかの条件が定められており、それらを満たせば受験資格があると認められます。
保育士試験のくわしい受験資格については、後ほど説明します。
高卒認定の場合は?
高校を卒業していなくても、高卒認定を取得していれば保育士養成施設に入学できます。
そのため、養成施設を卒業して保育士資格を取得することが可能です。
そもそも高卒認定とは、学力試験の合格によって高卒程度の学力があることを証明し、大学や短大、専門学校の受験資格を得られる制度です。
保育士試験を受験する場合は実務経験が必要になりますが、高卒認定を取得していれば保育施設で働きながら受験資格を獲得し、保育士を目指すことも可能でしょう。
高卒の場合、保育士試験の受験資格はある?
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では、高卒の方が保育士試験を受ける場合の受験資格を解説します。
以下の3項目を確認して、受験資格の有無を把握しましょう。
卒業年月日
高卒の場合、高等学校の卒業年月日によって受験資格の有無が決まります。
具体的には、高等学校を1991年3月31日以前に卒業した方は受験資格が認定されます。
現在社会人として働いている方や主婦の方など、これから保育士試験を受けようと考えている方は、自身の高校卒業の年月日を確認してみましょう。
卒業学科
高校の卒業年月日が1991年3月31日以降だった場合は、卒業した高校の学科を確認しましょう。
経過措置として、1996年3月31日以前に高校の保育科を卒業した方であれば受験資格があることになっています。
ただし、1996年3月31日以前に高校を卒業していても、保育科以外の学科を卒業した方は受験資格が認められないので注意しましょう。
実務経験の有無
卒業年月日や卒業学科が条件を満たしていない場合、高卒の方が保育士試験の受験資格を得るためには、児童福祉施設での実務経験が必要になります。
具体的には、「2年以上かつ2880時間以上」と定められており、以下のいずれかの施設で働けば受験資格が認定されます。
該当する施設 | |
---|---|
保育所(利用定員20名以上) | 保育所型認定こども園 |
幼保連携型認定こども園 | 児童厚生施設(児童館) |
児童養護施設 | 助産施設 |
乳児院 | 母子生活支援施設 |
障害児入所施設 | 児童発達支援センター |
児童心理治療施設 | 児童自立支援施設 |
児童家庭支援センター |
また、上記以外の認可外保育施設や小規模保育事業などでの勤務経験は、都道府県知事によって認定されれば実務経験として認められる場合もあるため、各自治体に確認してみましょう。
高卒の受験資格に必要な実務経験を積むには?
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先述したように、卒業年月日や卒業学科の要件を満たしていない高卒の方が保育士試験を受けるためには、児童福祉施設での実務経験が必要となります。
では、どのように実務経験を積めばよいのでしょうか。
実務経験として認められる施設を探す
まず、実務経験として認定される施設を探しましょう。
先ほど紹介した保育所や児童養護施設、乳児院などの児童福祉施設で働けば、必要な実務経験を積んだことが認められます。
ほかにも受験資格の認定を受けられる施設はありますが、都道府県の基準によっては対象外になるケースもあるようなので、保育士試験事務局や自治体に確認してみましょう。
勤務する期間や時間を決めて働く
実務経験を積む施設形態を決めたら、勤務する期間や時間を決めて求人を探しましょう。
先述した通り、「2年以上かつ2880時間以上」の実務経験が求められますが、具体的にはどのように働けば要件を満たせるのでしょうか。
フルタイムの場合
実務経験の要件は最短2年で満たすことができます。
1日8時間、週5日のフルタイム勤務の場合、1年の勤務日数が約240日となり、1年間の勤務時間はおよそ1920時間になります。
つまり2年間フルタイムで働けば総勤務時間は3840時間となるので、2880時間以上という基準を十分にクリアできるでしょう。
パートタイムの場合
主婦の方など、子どもが学校から帰るまでに退勤したいといった希望がある方は、パートとして実務経験を積むとよいかもしれません。
1日5時間程度の勤務でも、週4日以上のシフトに入り、1年間で200日働けば総勤務時間は1000時間となります。そのため、同じペースで働き続けた場合、3年で必要な要件を満たせるでしょう。
パートタイムで働けば、プライベートと仕事を両立させながら試験勉強の時間も確保できそうですね。
資格取得支援体制が整っている施設を活用する
保育施設によっては、保育士資格の取得支援制度を設けている場合もあります。
こうした施設では、保育士試験に合格するまでの勉強費用を負担してくれたり、養成講座を設置して勤務時間内に受講できるようにしてくれたりと、無資格の方が資格取得を目指しやすい制度が整えられているようです。
このような施設であれば、保育士試験の勉強に対してより一層熱意をもって取り組めるかもしれませんね。求人票で「資格取得支援あり」などの文言をチェックしておきましょう。
高卒から合格を目指す!保育士試験に向けた勉強方法
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保育士の養成施設に入学せず、実務経験を積んでから保育士試験を受けて資格を取得しようと考える方もいるかもしれません。
ここでは、高卒の方向けに保育士試験合格を目指した勉強方法を解説します。
通信教育を利用する
保育士資格取得に向けた通信教育を利用して勉強する方法があります。
通信教育では、資格試験に精通した専門家が監修したテキストを教材として使用できたり、添削などに対応してもらえたりしています。
また、学習プランが設けられており、試験までのスケジュールを意識して勉強を進められるのも通信教育のメリットの一つ。
ほかにも、隙間時間に無理のないペースで対策できたり、保育士試験に的を絞った内容の勉強ができたりするのも、通信教育の特徴と言えますね。
独学で勉強する
参考書や過去問題集を購入して、独学で勉強するのも選択肢の一つです。
費用は教材によって異なりますが、テキストの選び方次第で通信教育を利用した場合の半額以下に抑えられる点も魅力と言えます。
通信教育と同様に、通勤時間やちょっとした隙間時間を利用して勉強できるため、実務経験を積みながら資格を取りたい方や、時間が限られた主婦の方に向いているでしょう。
また、学習プランを組んで進める通信教育とは異なり、自身のペースで勉強できるというメリットがあります。一方、独学の場合試験に向けて計画的に進める必要があるため、注意が必要ですね。
そのため、スケジュール管理が苦手な方は、試験の日程を意識した目標を立ててから勉強に取り組むとよさそうです。
高卒保育士の給料や求人事情
ここまで、高卒で保育試験を目指す方法や受験資格などを解説してきましたが、実際に高卒保育士として働いた場合の給料や求人状況はどうなのでしょうか。
高卒保育士の給料
一般的に、ほとんどの企業や職種において、高卒よりも大卒のほうが初任給がよいと言われています。
男女計の初任給に関する厚生労働省の資料を見ると、大卒が21万200円であるのに対し、高卒は16万7400円と、4万円以上の差があります。
しかし保育士の場合、大卒や短大卒と高卒で給料に大きな差が開くことはあまりないようです。
ただ園によっては、大卒と高卒とで給料が異なる場合もあるようなので、応募する前にきちんと求人票を確認しておくとよいですね。
高卒保育士の求人
保育士求人では、大卒や高卒など学歴を分けて募集を出している園は少ないようです。
基本的に学歴はあまり関係がなく、保育士資格を持っていれば応募できる求人が多いでしょう。
しかし、なかには応募資格として「大卒・短大卒以上」などと条件を定めている求人もあるようです。そのため、応募資格の欄もしっかりと確認するようにしましょう。
出典:令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1 学歴別にみた初任給/厚生労働省
高卒以外(中退など)で保育士になる方法はある?
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ここでは、4年制大学や短大、専門学校の中退者は高卒扱いになるのか、受験資格はあるのかなどを見ていきましょう。
4年制大学中退の場合
4年制大学中退でも、受験資格が高卒と同じになるわけではありません。
学部・学科を問わず在学期間が2年以上で62単位以上を修得済みであれば、4年制大学を中退していても保育士試験の受験資格を満たしていることになります。この場合、実務経験は必要ありません。
短期大学中退の場合
2年制の短大を中退した場合、受験資格は認められません。
しかし、3年制の短大に2年以上在学しており、かつ62単位以上を修得している場合は、保育と関係ない学部や学科であっても受験資格が認められるケースもあるかもしれません。該当する方は、保育士試験事務センターに問い合わせてみましょう。
また、短大の在学期間や修得単位が足りない場合は高卒と同じ扱いになるようです。
専門学校中退の場合
専門学校を中退した場合は、受験資格が認められないようです。そのため、高卒と同じ扱いとなります。
専門学校を卒業していない方は、高卒者の受験資格である「1991年3月31日以前に高校卒業」「1996年3月31日以前に保育科を卒業」「2年以上かつ2880時間以上の実務経験」の3つのいずれかを満たしているか確認しましょう。
高卒からでも、保育士を目指そう!
今回は、高卒から保育士を目指すための方法や、給料・求人事情などを紹介しました。
最終学歴が高卒の社会人や主婦の方も、保育士養成施設に入学したり保育士試験に合格したりすれば保育士になることができます。
ただし、高卒や高卒認定の方が保育士試験を受ける場合は、卒業年月日や実務経験などのさまざまな要件をクリアする必要があるので、しっかりと受験資格を確認しましょう。
保育士試験に向けた勉強法としては、主に通信教育か独学の二つがあります。それぞれの特徴やメリットをふまえたうえで、自分に合った方法で取り組んでくださいね。
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