保育技術を高めるため、知識を磨くため保育士は定期的に研修に参加して自己研鑽に励まなければなりません。研修といっても、その内容や形式はさまざま。このコラムでは外部研修を中心に、保育士にとっての研修の意味や研修の内容を紹介していきます。保育士のスキルアップに必要な内容をまとめたので参考にしてみてくださいね。
外部研修は何のために受けるの?
そもそも、保育士にとって、外部研修を受ける意味とは何なのでしょうか?外部研修を通して保育士が学ぶことの意味を考えます。
知識や技能の吸収・再確認
自己研鑽は保育所保育指針に示されているように、保育士の義務となっています。学生時代に養成学校で学んだ知識、保育士試験のために勉強した項目はあくまでも基礎。働く上で経験で学ぶ中で、その知識は経験を通して身に着く一方で、忘れていくものやこの分野についてもっと学んでおくべきだった、という発見があることでしょう。
それは、知識だけでなく、保育実践としての技能にもいえること。手遊びのレパートリーや絵画や工作の技術一つをとっても、身につけていればいるほど子どもたちと一緒に楽しんだり、学びにつなげてあげられることは多いものです。
日々の保育の中で自身の足りていないものを見つけ、その分野を補うことで保育士としてより成長する、そのために仕事の合間を縫って学ぶ「研修」が必要になるのです。
特に外部研修は、見知った園の同僚だけではなく、大学の先生で保育の研究を積極的に行っている方や、NPOや社会福祉法人のリーダーである分野のスペシャリストである方の生の声を聞くことができるため、本を読んだり人づてに聞いたりする以上に価値のある学びの体験になるでしょう。
自身の働き方や園の運営を見直すきっかけに
外部研修は自身の働き方や園の運営を見直すきっかけにもなります。
世の中にはあらゆる保育実践の方法があります。モンテッソーリの考えを導入していたり、裸足保育や、もりの幼稚園という自然環境が豊富な保育、その構成するべき環境も考え方も使う遊具やおもちゃも一つひとつが違います。同時に、それらは互いに間違っている、というわけでもありません。ただ違うだけなのです。
ですが、考え方が違う保育に関しても、よい保育なら一部でも導入することはできますし、違いを知ることで自身の実践している保育を比べて、じっくりと考え直すことができます。例えば、「自分の園は独自の保育をやっているようだ。でも、業務効率に関しては改善のために研修で習った方法を導入してみるのもいいかもしれない」という風に。
「自分のやっている園の保育がすべて」というのではなく、「ああ、そういう考え方もあるのね」というきっかけをくれるのも外部研修を受ける意味なのでしょう。
外部研修のいろいろ
では、こうした保育士の外部研修の中身についても見ていきましょう。まずは、外部研修のスタイルから。どんな形式で、どんな団体が研修を実施しているのかを紹介していきます。
講義スタイルの研修
一般的な研修スタイルとしてのパッと思いつくのは講義形式の研修ではないでしょうか。こうした研修は一つのテーマや、議題について専門家の先生がプレゼンテーションをしたり、パネルディスカッションをしていきます。
こうした、講義スタイルは現場の研究をしている専門家の生の意見が聞けることでしょう。保育分野の研究は、現場の実態もとに調査や理論の研究を進めていくもの。直近の保育現場の問題点や注目を浴びているトピックを取り扱うことが多いため、保育士にとっても、客観的な視点から分析や対処法を提案してくれる講義形式の研修はためになるものが多いのではないでしょうか。
グループディスカッションやグループワークがある研修も
ただ話を聞くだけでなく、その研修に集まった人で即席のグループを作り、意見を交換したり実際にケースワークを通して実践してみる場合もあります。講義で身に着けた知識だけでは、なかなか実感として理解できないことも。自分の言葉で表現したり、ほかの人の意見を聞くことでより深く記憶に残ることもあります。
与えられた例題のケースをもとにグループで実際に解決をどう図るかというケースワークもよく行われます。また、こうした研修での活動を通して、ほかの園から来た人と知り合いになったり、その意見を聞くことで新たな視点を知ることができるのもこうした活動の魅力です。
見学も立派な研修
見学も立派な研修の一つです。全国津々浦々にある保育園ですが、他の園に先駆けた取り組みで注目を集めている園があります。今までにない保育の方法や、保育士の業務改善活動、などで注目される場合があります。こうした園では、所属する保育関連団体の要請に伴い、外部研修として見学会が開かれる場合があります。実際に保育士がこうした取り組みを目にすることで、自らの園を見つめなおすきっかけを作ってくれます。
保育園加盟団体の大規模研修
全国の保育園は何かしらの保育園団体に所属している場合がほとんどです。こうした保育園加盟団体では、勉強会や年ごとの総会などの形で定期的に研修を開催しています。総会などでは、その年に団体が最も注目しているトピックに関する講義やグループワークが開催され、会場に集まる保育士の規模も500~1000人になることもあります。こうした研修に参加することは、保育業界の大きなトレンドを知る上でも大きな意味があります。
保育士会や学会主催の研修
個人の保育士が所属する保育士会や保育関係の学会でも研修を開いています。全国展開する保育士会でも年に一度研究大会などを開催して、大きな保育のトレンドを発信しています。また、学会では定期的に保育理論の発表会や新しい保育実践の方法を紹介する研修会が開催されるなど、さまざまな研修の機会があります。
外部研修の内容
では、こうした外部研修の具体的な内容についてみていきましょう。
新しい保育の分野・研究が進む分野の研修
以前より研究が進んできた分野や、近年より深い知識と知見が必要となっている分野は研修でよく扱われる内容です。近年の傾向としては、障害児保育、乳児保育、食育やアレルギー、保護者支援などがよく議論されています。
他にも、研究者の目の付け所によっては、運動保育、地域支援拠点としての保育所の役割、絵本や音楽の保育への効果、実習生対応、虐待への対応なども研修になっています。
また、2018年から改訂版が施行された保育所保育指針についての解説講座も定期的に外部研修の対象となっています。
すぐに使える実技の研修
保育実技も外部研修として学ぶことの多い内容です。こうしたものは大規模な研修というよりは、自治体が主催するものや民間の研修を活用することも多いでしょう。
救命救急の方法や、手遊びのレパートリーを増やしたり、リトミックや体操遊びなど、明日からでも使えるような研修内容が多くなっています。
視察研修
視察研修の中には、もちろん国内の園を見学するものもありますが、時にはヨーロッパや北米などの先進国で、独自の保育をしている地域に見学をする研修もあります。もちろん、日程や費用の関係で全ての保育士が参加できる研修ではありませんが、世界の保育を目で見ることで、自身の勤める園だけでなく、日本の保育全体を見直すきっかけになる研修ですね。
自己を見直し、より保育を高められる研修を受けましょう。
さまざまな研修を見てきましたが、大切なのは自身を見直し、欠点を補うことで、保育の質を高めること。自身の保育、園の保育の質を向上させるためには、どのような知識や技術が必要なのか、また、それは講義形式なのか実践形式で身につくのか、確認してたうえで、研修を探すようにしてみてくださいね。