保育士資格の最後の関門となる実技試験。試験科目は造形・音楽・言語と3つありますが、それぞれの内容や合格率が気になる方も多いでしょう。評価の観点や制限時間、ピアノの代わりにギターを使えるかなどがわかると対策しやすいですよね。今回は保育士の実技試験の内容に加え、受験当日の心構えや服装などもくわしく解説します。
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■目次
保育士資格の実技試験の概要と合格率
国家資格の一つである保育士資格試験は、毎年6万から7万人もの人が挑戦する大きな試験です。
一次試験となる筆記試験を突破したら、次に待っているのが実技試験。
まずは保育士実技試験の概要や合格率を紹介します。
保育士資格の実技試験とは
保育士資格の実技試験には3科目あり、音楽表現に関する試験、造形表現に関する試験、言語表現に関する試験のなかから2つを選択して受験します。
それぞれの科目の配点と合格点は以下の通りです。
※各分野で6割以上を得点する必要あり
各科目の配点は50点で、そのうち6割以上を得点すれば合格となります。
ただし、受験した2つの科目の両方で合格点を取る必要があるため注意しましょう。
実技試験の合格率
保育士資格の実技試験の合格率から、難易度を見ていきましょう。
厚生労働省の調査によると、2014年度の保育士試験において、筆記試験の合格率は26.7%であるのに対して、実技試験の合格率は88.7%となっています。
つまり、筆記試験と比べるとかなり合格率が高く、通過しやすい傾向にあると言えるでしょう。
ただし、少数ながらも不合格となっている人もいるため、気を抜かずにしっかりと対策をすることが大切です。
次からは、各科目の試験内容や、合格者の体験談をもとにした試験突破のポイントを紹介します。
【保育士の実技試験】音楽の試験内容と対策方法
はじめに、音楽表現に関する実技試験の内容や対策を見ていきましょう。
試験内容
音楽表現の実技試験では、子どもたちに歌って聞かせることを想定して、ピアノやギターを使って2つの課題曲の弾き歌いをします。
音楽の試験では以下の点に注意して受験しましょう。
- ピアノ、ギター、アコーディオンのいずれかで演奏する。
- 紙の楽譜は持ち込んでよい。
- 前奏・後奏を付けたり、移調してもよい。歌詞は1番のみとする。
伴奏に使用する楽譜に関しては、ピアノは市販のものでも構いませんし、ギターやアコーディオンでも指定のコードネームを尊重していれば問題ないようです。
評価のポイントは保育士に必要とされる歌や伴奏の技術、リズム感覚など、豊かな音楽表現ができるかどうかとされています。
保育士さんの体験談
子どもたちは歌が大好きなので、帰りの集まりのときには季節に合った歌を歌います。日々の生活のなかで『この歌子どもたち好きそうだな』と思った歌は覚えておいて、すぐに弾けるようにピアノを練習することもあります
保育士さんは日々の保育に歌やピアノを取り入れ、子どもが音楽にふれられるよう工夫していることがわかりますね。
そのためにも、ピアノやギターを弾きながら子どもと一緒に歌う「弾き歌い」のスキルを身につけておきましょう。
【保育士の実技試験】造形の試験内容と対策方法
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続いて、造形表現に関する実技試験の内容や対策を見ていきましょう。
試験内容
造形の実技試験では、縦横19cmの枠内に、お題となる保育の一場面を絵画で表現します。
このお題は、試験当日に発表されることとなっています。
ポイントとしては、課題となる保育の場面を表現するなかでの情景や人物の描写、色使いなどが評価の観点となっているようですね。
過去の出題傾向
- 描くべき保育士さんと子どもの人数
- 「誕生会」「粘土遊び」などの場面
試験時間や必要なもの
試験時間は45分、使用できる道具は12~24色ほどの色鉛筆とシャープペンシルまたは鉛筆、消しゴム、腕時計となっています。
保育士さんの体験談
普段の保育では、子どもの年齢や発達にあわせて造形活動をしています。
造形活動で使う道具の特性や子どもの発達への理解、工作のレパートリーやアイデアを考える想像力など日々磨きをかける必要があると思います
子どもの発達段階や年齢など保育士としての専門性を活かした造形表現を考え、具体的な子どもの姿を想像したうえで造形表現の試験に挑戦する必要がありそうですね。
【保育士の実技試験】言語の試験内容と対策方法
次に、言語表現に関する実技試験の内容や対策を見ていきましょう。
試験内容
言語の実技試験では、3歳児クラスの15人の子どもに聞かせることを想定して、子どもが集中して聴けるような「3分間のお話」を行います。
課題となるテーマは、誰もが知っている日本や海外の昔話が指定されており、そのなかから好きなお話を一つ選ぶことができます。
3歳児の子どもがお話の内容をイメージできるよう、身振り・手振りを交えることがポイントです。
ただし、絵本や人形などの小道具を使うことや、試験時間の3分間に退室することは禁止されているため注意しましょう。
評価のポイントは、保育士として基本となる声の出し方や表現技術、子どもに対する話し方ができることであるようです。
保育士さんの体験談
保育の場面では、絵本の読み聞かせや朝や帰りの会、行事の前の説明など子どもの前で話をする場面が多くあります。
子どもが集中できるような環境作りや話し方の工夫は、保育士にとって大切なスキルだと思います。
子どもの前で絵本を読むときには、ページをめくるタイミングや読む速さなど工夫しています。
ゆっくり読みすぎても間が空いて子どもが飽きてしまうし、早くてもお話が理解できなくなってしまいます。子どもの反応や雰囲気など様子を見ながら読み進められるように意識しています。
保育士さんが子どもの前でお話をするときには、話し方や言葉遣い、子どもが聞き取れる声の大きさやスピード、などさまざまなことを考えているようです。
子どもがお話を理解できるか、楽しめるかといった点に注意しながら練習するとよいでしょう。
保育士の実技試験当日に向けた服装や心構え
最後に、実技試験当日の服装や心構えのポイントを紹介します。
服装
試験当日は、スーツを着る必要はないため、私服で問題ないでしょう。
ただし、スウェットやジャージなどのカジュアル過ぎる格好や、ダメージジーンズやミニスカートなど華美な服装は避けたほうがよさそうです。
試験官に好印象を与えるためにも、清潔感のある服装で臨むとよいですね。
ブラウスやシャツに、チノパンや膝が隠れるスカートなど、保育士らしいさわやかな服装を心がけましょう。
実技試験当日の心構え
失敗しても平常心で
心構えとして、失敗しても平常心を保つことは重要なポイントでしょう。
試験官は受験者が保育士にふさわしい能力を身につけているかを見ています。
保育の現場は子ども相手の世界。子どもが重視するのはピアノが上手なことでも、お話がきれいに話せることでもなく、保育士さんのやることが楽しいかどうかでしょう。
そのため、間違いもアドリブでカバーできるといった対応力も見ているかもしれません。
少し間違えたとしても止まってしまうのでなく、間違いを気にせずに演じ続けられるような平常心で臨みましょう。
子ども相手であることを意識する
実技試験の試験官は大人の方ですが、子どもを相手にしていることを忘れないようにしましょう。
子どもがリズムに乗りやすい伴奏やいっしょに歌いやすい声のトーン、子どもがマネしたくなるような表現、聞き取りやすい声や身振り手振りなどを心がけることが大切です。
現場に入って保育士として活躍している自分を想像しながら練習ができるとよいですね。
試験内容や合格率を知って、保育士資格の実技試験を突破しよう
今回は、保育士資格の実技試験の科目や合格率、対策方法を紹介しました。
筆記試験と比べて合格率の高い実技試験ですが、保育士としての資質や表現力を見られるため、しっかりとした対策が求められるでしょう。
試験当日には、失敗しても平常心で演じ切る冷静さや、子どもの前に立つことを意識した対応力を心がけて臨むことが大切です。
これから実技試験を受ける方は、子どもを相手とする保育士としての目線を忘れずに練習してみるとよいかもしれませんね。