昨今、より柔軟な働き方を求めて「派遣」として働く保育士さんが注目を集めています。今回はその「派遣保育士」に注目し、仕事内容やメリット・デメリット、給与・待遇について詳しくまとめてみました。正社員やアルバイトなどでの働き方とどのように違うのかについても見ていきたいですね。自分のライフスタイルに合わせて、派遣の制度を上手に使って働きましょう。
派遣保育士とは?
まずはじめに、派遣保育士についての概要、2種類の働き方、派遣先の職場についてまとめました。
派遣保育士とは?
派遣保育士とは一般企業での派遣社員と同様に、勤務先となる保育園ではなく、人材派遣会社と雇用契約を結んで働く保育士さんのことを言います。
2種類の働き方がある
派遣としての働き方には、「登録制派遣」と「紹介予定派遣」の2種類があります。前者の「登録制派遣」は、派遣会社への応募・面接を経て登録した後、派遣会社が指定した園(派遣先)で働きます。一般的な派遣社員と同様ですね。
後者の「紹介予定派遣」とは、保育園側が保育士を将来的に正社員として雇用することを前提に、最大で6カ月間派遣社員として勤務することを言います。6カ月間の派遣期間が満期を迎え、保育園側と保育士側で双方の同意がなされた場合に、保育士は勤務した園の正社員として、園と直接契約をすることになります。
派遣先は?
派遣保育士が働く場所は、保育園はもちろんのこと、認定こども園や学童保育、院内保育所、企業内保育所、託児所など、さまざまな保育施設が対象です。
正社員やパートとの違い
正社員やパートの保育士との違いを踏まえながら、派遣保育士の仕組みを見ていきましょう。
雇用先について
通常は、正社員やパートの保育士は、勤務先である保育園と直接雇用契約を結びます。それに対して派遣保育士の雇用先は、派遣会社となります。そのため、契約に関しての問い合わせ等は派遣元の会社にすることになります。
給与について
給与の支払いは雇用先である派遣会社から行われます。正社員やパートの保育士も同様に、雇用先の保育園から支払われます。また給与の発生に関しては時給制で、おおよそ1000円~1500円程度のようです。雇用条件や保有資格にもよりますが、パート・アルバイトの保育士よりも給与は高い傾向にあり、安定した収入を得られるでしょう。
保険について
保険の適用に関しても、雇用先である派遣会社の規定に従うことになります。正社員やパートの保育士も同様に、雇用先の保育園の規定に従います。原則的に、大手の派遣会社であれば、労働時間などの加入条件がそろっていれば、ほぼ必ず社会保険に入ることができます。不明点がある場合は、派遣会社にしっかり確認しておきましょう。
雇用期間について
派遣保育士の同一の園での勤務は、最大3年間の有期雇用となります。これに対し正社員は無期雇用のため雇用期間に限りがなく、パート・アルバイトは園によって雇用期間の制限の有無があるため、園の定めに従うということになります。3年以上働きたい場合は、派遣会社が派遣先への直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供などの措置をとってくれます。
勤務時間
正社員や契約社員はフルタイムでの勤務が原則なのに対し、派遣保育士はシフトに融通が利くことが多いです。週3日の勤務や、午後からの出勤など、希望する条件に合う勤務先があれば働くことが可能です。残業も少なめで、基本的には就業時間内の勤務になるため、予定を立てやすいでしょう。
仕事内容
仕事に関する現場の指示は、勤務先となる保育園が出します。仕事内容は、正社員のような責任のある仕事は任されない場合が多いですが、園によってはクラス担任を任されることもあるかもしれません。
これは派遣保育士の性質上、人員不足の穴を埋めるために求められることがあるためです。基本的には雇用期間の制限があるので、比較的責任の少ない保育補助的な仕事がメインになる傾向がありますが、急募ゆえにそういった仕事を担当する可能性もあることを覚えておいてくださいね。
派遣保育士として働くための資格
人手不足などによる急募的な働き方をすることが多いため、基本的には即戦力が求められていると言っていいでしょう。おおまかに、0~5歳児ぐらいまで対応できる幅広い保育スキルがあると、保育士さんにとっても派遣先の選択肢が増えますね。
派遣保育士のメリット
派遣保育士として働くメリットはどんなところにあるのでしょうか。
給料が高い
非正規雇用ながら、パートやアルバイトに比べて給料が高いことが一つのメリットです。パート・アルバイトの給料がだいたい900円~1200円ぐらいだとすると、派遣保育士の給料は1000円~1500円ぐらいを想定してもよいでしょう。派遣会社や雇用条件、園などにもよって多少金額は変動しますが、総じて時給は高いと言えます。正社員ほどしっかり働きたいという方ではなくても、高収入を得ることできます。
柔軟な働き方ができる
派遣保育士は働く日数や曜日、時間などに関して、柔軟な働き方ができます。例えば子育て中の方の場合、月・水・金曜日のみの出勤や、子どもの送迎の時間を考慮したシフトなど、自分のライフスタイルを優先しながら無理なく働くことができるため、仕事と家庭との両立がしやすくなりますね。
仕事の負担が少ない
正社員に比べて仕事の責任が少ないことがメリットとして挙げられます。例えば、誕生日会の企画・進行や保護者からのクレーム対応など、責任のある仕事は任されることが少ないため、その点で仕事における体力的・精神的負担が少なく、ゆったりと働くことができます。事務作業もそれほど多くはないため、残業や持ち帰りの仕事もほとんどなく、プライベートの時間をしっかり確保することができるでしょう。
派遣会社のサポートがある
勤務先に対して就労条件の交渉やトラブル発生時の仲介などを、派遣会社が派遣保育士と勤務先の園との間に入って行ってくれるので、直接雇用に比べて希望を言いやすい環境にあります。
例えば、結婚に際して新居に近い園に職場を変えたい場合は、新しい派遣先を紹介してくれたり、扶養内で働きたいが直接園に言いづらいという場合も間に入って話をしてくれたりと、困った時にはサポートしてくれる心強い存在です。また、研修制度を用意している派遣会社もあるので、スキルが足りないと仕事で感じた場合にも相談できますよ。
職場を変えやすい
有期雇用であること、責任のある仕事は基本的にないこと、園への交渉は派遣会社が行ってくれることなどを考慮すると、一つの園に執着せず職場を変えやすいと言えるでしょう。そのため、働いてみて保育観が合わないなと感じたり、人間関係で悩みを抱えたりした場合にも、直雇用と違って転職ほどのリスクや労力を要さないので、悩みを深刻化させずに済みます。
派遣保育士のデメリット
一方で、メリットの多いように見える派遣保育士にもデメリットがあります。
ボーナスがない
派遣保育士へのボーナス支給は基本的にありません。そのため、月給の手取り額は正社員よりも多い計算になるかもしれませんが、年収で比較すると、正社員にはボーナスに加えて処遇改善手当や家賃補助などが支給される場合もあるので、そこで開きがでてしまいそうです。
チームワークは難しい?
派遣の保育士は、一時的な「助っ人」としての側面が強く、お仕事内容から職場での人付き合いに至るまで、明確に線引きをしている職場もあります。そのため、チームとして一体感を持って保育に取り組むという点に難しさを感じる方もいるようです。とはいえ、派遣もパートも正社員も垣根なくチームで保育している園もあります。ご自身にどちらのスタイルが合っているかも考えながら働き方を検討してみてくださいね。
契約期間が決まっている
派遣保育士は有期雇用で短期間の勤務も多く、最大でも3年間という上限があるため、同じ職場で長く安定的に働くことは難しいです。また、仮に居心地の良い園で働くことができたとしても、保育園側が契約期間を延長してくれなければ、決められた期間以上の勤務はできません。腰を据えて長く働きたい、職場をコロコロ変えたくないという場合には、園との直接雇用契約をして働いた方がよさそうです。
キャリアアップが難しい
雇用期間に制限があり、職場が変わっていくため、キャリアアップを目指すことは難しいかもしれません。さまざまな園で働いた経験は糧になるかもしれませんが、行事を執りまとめたり、部下のマネジメントをするなどの責任ある仕事は正社員でなければなかなか任せてもらえないため、派遣保育士のまま主任保育士や園長を目指すのは厳しいところがあります。本格的にキャリアアップを目指したいと思ったタイミングで、正社員保育士として転職して直雇用に切り替えるのもよいかもしれませんね。
まとめ 派遣保育士の制度を上手に使って働こう
派遣保育士の働き方について、基本的な仕組みや働き方などについて解説しました。子育て中の方や、定期的にいろいろな園を経験したい方などには、おすすめの働き方かもしれません。自分のライフスタイルに合った働き方を模索している保育士さんは、ぜひ派遣保育士という働き方を選択肢に入れてみてくださいね。