
みなさんの園では、子どものことをどのように呼ぶでしょうか?
また、保育者のことをどのように子どもに呼ばせているでしょうか?
最近では、保育者のことを「●●先生」と呼ばないところも増えてきています。
職員も子どもも、みなが「●●さん」と呼び合ったり、その人が(もしくは保護者が)呼んで欲しいと考える愛称で呼び合う、という園もありますね。
逆に、子どものことを名前で呼び捨てにするということは、今ではまずないことでしょう。
というのは、子どもを呼び捨てにしながら、大人には「●●先生」といった敬称をつけて呼ばせるといったことは、子どもの人権の尊重の面から言って現代では許容しにくいからです。
これは、子どもと大人の上下関係を強調する行為なのですね。
前回までに見てきたように、子どもの人権は大げさなことではなく、普段の日常の中で直接に関わっているものです。今回はこうした「名前の呼び方」から、子どもの人権を考えてみたいと思います。
ここを踏まえることで、保育のシーンがまた違って目に映ってくることでしょう。

保育の中での「子ども騙し」や「子ども扱い」は人権の点からも避けるべきだ
まず、僕がこの連載でも何回も触れてきた保育の中での子どもに対する「子どもだまし」や「子ども扱い」に類すること、これは子どもの人権の観点から見ても、避けるべきことです。
これをはじめに確認しておきましょう。
脅しなどの子ども騙し
例えば、脅しによって子どもに言うことを聞かせることはどうでしょうか。
こちらに従わない子に対して、「そんなことしているとおばけがくるよ」「◯◯先生に怒られるよ」「置いていくよ」「○○させてあげないよ」「どこどこに閉じ込めるよ」。
また実際に置き去りにしたり、どこかに閉じ込めるといったことは、子どもの人権を傷つけているだけでなく、虐待にすらなり得るのです。
もしかしたら、読者の方の中には「え?子ども扱いって、人権とか、そんな大げさなこと?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
そもそも、上記のような脅しは、保育以前に、一般の子育ての中でもひんぱんになされてしまっています。
保育士でも、そういったことを当たり前にされて育ってきて、なんの違和感も持たなくなっている人もいるかもしれません。
そういった人はこれからの学びによって、そのようなスタンスを乗り越えていく必要があるでしょう。
大切なのは子どもを大人と変わらない一人の人間・人格として扱うこと!
「子ども扱い」は、例えば子どもだからといって裸や下着姿の写真を撮ったりすることもそうです。これを大人にしたとしたら大問題ですよね。
また、過剰な幼児語を大人が使うこともどうでしょう。
もし、幼児語を誰か大人に対して使ったら、それは揶揄(やゆ)と言って人をおちょくる行為になり得ますよね。ですから、これも使うべきでないことがわかります。
このように見てくると、「子どもの人権の尊重」といっても、実はそう難しく考えなくてもよいことが、お分かりになって頂けるのではないでしょうか。
大切なのは、子どもを大人と変わらないひとりの人間・人格として扱うこと。子どもとの間で、だましやウソのない関わりをする、ということに尽きるのです。
子どもの呼び方が変わってきたのはよいこと
しかし、ここでネックになるのは、大人が子どもをとらえる際の意識の問題です。
子どものことを、大人よりも低いもの、大人に属するもの、大人に従うべき存在といったように、大人と子どもの関係を上下でとらえている場合に、先ほどのような子どもの人権を損なう行為が生まれ、それが当たり前だという土壌になりやすいのです。
こうした価値観は大人の意識の内面にあり、外からは見えにくい部分です。
ここになにも取り組みがないと、その人任せの野放し状態になりかねません。
ここで、子どもを尊重した呼び方や、大人の呼び方を考えるようになってきました。
冒頭の例のように、保育者が子どもにどのように呼ばせて、子どもを何と呼ぶか、には関係性はもちろん、保育や人権への意識の問題にもかかわってくるのです。
いま、子どものことを「さん付け」で呼ぶなど、園で子どもを呼び捨てにするケースが減っているのは、子どもの人権の理解にともなって表れているのではないか、と思います。
だから僕は、少し大げさかもしれませんが、子どもと大人の関係性について考えた上で、子どもの呼び方について議論し、変わってきたとするなら、それはよいことであると思うのです。
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僕が「子ども」という表記を使う理由
さて、このコラムにおいて、僕自身が一貫して「子ども」と表記することに気づいている方もいらっしゃるかと思います。今回のテーマに関連するので、補足して説明しておきたいと思います。
「子ども」という表記は大人の従属扱い?
「子ども」の表記について、保育の世界はもちろん、いまではマスメディア等でも「子ども」と表記することが一般的となっていますね。
かつて、この表記を「子ども」とするか「子ども」とするか、ある種の論争がありました。
「子ども」の「供」というのは、「お供え物」の「供」であり、従者である「お供」を連想させます。子どもを大人の従属物扱いしている表現なので、「子ども」という書き方を使うべきではないというものでした。
「子ども」という表記をただ使うことで、思考停止していませんか?
しかし、僕はこの論争にはまったく実(じつ)がないと考えています。
むしろ、表記を「子ども」にすれば、子どもの人権問題は全て解決したかのような思考停止に陥らせるものですらあると考えています。
実際に、僕が指摘したように「生活レベルにおける子どもの人権」は、この論争に一応のけりがつき「子ども」表記が一般化して数十年経っているにも関わらず、少しも理解、進歩してきませんでした。
この「子ども・子ども」表記論争は、ほとんど意地の張り合いにようになっており、本来の子ども一人ひとりの存在における人権を考えるという、その本質・当事者意識がすっぽ抜けているのです。
ですので、僕自身は、その論争に寄らないという立場から、本来の文法表記である「子ども」を使い続けています。
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人と人との関係を考え続けることが、子どもの人権を考えることにつながる
子どもの人権を考える上で大切なのは、たんなるレッテル貼りや、これが正しいとされた形をなぞることではなく、人対人の関係をつねに模索し続けることであると思います。
このことは、子ども対大人だけでなく、保育施設における大人対大人の関係にも言えることです。
つまり、職員間の人間関係の問題。また、保護者への保育者の関わり方の問題にも共通してくる部分があります。
中でも、職員間の問題は、特に保育の職場ではハラスメントの問題として顕著です。
次回はそれについて見ていきたいと思います。
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プロフィール
保育士おとーちゃん(須賀義一)

1974年生まれ。大学卒業後、男性としてはまだ珍しかった保育士(当時は保父)資格を取得する。
2009年、保育士としての経験などを元にブログ『保育士おとーちゃんの子育て日記』を開設。
現代の子育てに合った具体的な関わり方を伝えつつ、多くの人からの子育ての悩み相談にも応える。
著書に『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』『保育士おとーちゃんの「心がラクになる子育て」』(ともにPHP研究所)など。
東京都江戸川区出身、墨田区在住。一男一女の父親。
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