世界にはさまざまな教育法がありますが、今回はオランダの「ピラミッドメソッド」を紹介します。ピラミッドメソッドは、子ども自身が選択し決断する力を養うことがねらいです。保育者のかかわりや環境設定など、日常保育の参考になるかもしれません。色々な国の教育法を知り、質の良い保育につながるヒントを見つけていきましょう!
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■目次
ピラミッドメソッドを日本の保育園でどう活かす?
保育士をしていると「モンテッソーリ教育」「シュタイナー教育」など、さまざまな海外の教育法を耳にするでしょう。
今回紹介するのは、オランダで1994年に開発された幼児教育法「ピラミッドメソッド」です。
くわしく内容を見てみましょう。
ピラミッドメソッドの特徴とは
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ピラミッドメゾットは、保育士が強制したりなにかを教えたりするわけではありません。
具体的にはどのような内容なのか、紹介します。
4つの基礎概念
ピラミッドメソッドは、4つの基礎概念に基づいています。
子どもの自主性(やる気)
子ども達が自分を取り巻く世界を理解するために大切なことは、自主的な行動や自主性を維持させることでしょう。
まずは、「認められたい、自信を持ちたい」という養護的要求が満たされたうえで、「学びたい、探索してみたい」という自主性が育まれ、発揮されるのではないでしょうか。
保育者の自主性(働きかけ)
子どもの自主性を育むための子どもの要求を考慮した働きかけが必要とされているようです。
安心できる保育環境の提供、安定した情緒的な支援、安らげる働きかけを行う一方で、幅広い教育技能をもって教育的に働きかけることも必要でしょう。
寄り添うこと
“アタッチメント(愛着)理論”から、その愛着は保育者と子どもの関係にもあてはまることをピラミッドメソッドでは唱えているようです。
アタッチメント(愛着)とは、泣くなどの生理的欲求を子どもが大人に訴えたり、甘えたりしながら親密な関係を形成しようとすることをいいます。
保育者と良好な信頼関係を築くことが、探索活動に対する安心や意欲を持つために最も重要なことでしょう。
距離をおくこと
ピラミッドメソッドでは、「ディスタンシング理論」を用いています。
ディスタンシング理論とは、子どもの発達を促すうえで、目の前にある物事だけを学ぶのではなく、「目に見えないもの」にも焦点を合わせる学びが大切である、といった内容です。
子どもの発達段階に合わせて徐々に外の世界・抽象的な世界へと導くことで表現、体験することを大切にしています。
保育環境
4つの基礎石をベースに、子ども自身が遊びを選択できることを重視しています。
グループや一人で遊ぶことを考慮した環境になっているようです。
プロジェクト
プロジェクトとは、大きさや数、色、形などの11テーマの中からひとつ選択し、遊びを週ごとに発展させていきながら、グループ、または一人で取り組んでいく活動です。
子どもの興味に沿った話題で遊び込むことで、学びの時間となるのでしょう。
ピラミッドメソッドにデメリットはある?
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ピラミッドメソッドは、遊びの中に学びの要素を加え、子どもの自主性を育むものだということが分かりました。
このような教育法に対しては、各家庭の教育方針によって捉え方が異なるでしょう。
学習時間や勉強のサポートを求める家庭の場合、ピラミッドメソッドは適さないかもしれない、というデメリットがあるようです。
また、さまざまな教育法が浸透し始めている一方で、日本ではまだピラミッドメソッドがメジャーな教育法ではないため、保育士さんも保護者の方も戸惑うことが多いかもしれないですね。
保育園でピラミッドメソッドを取り入れる実践例
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日本にも、実際に紹介した内容を取り入れている保育園があります。
教育法として取り入れるだけでなくとも、保育の参考になるでしょう。
実践例を紹介します。
環境配置
お絵描き、積み木などの遊びごとにコーナーを分けて目に見える形で遊びを準備しています。
コーナーごとに写真を貼るなどして、子どもが見て分かりやすいようにしているようです。
子どもの自主性を養うでしょう。
保育士は関わりすぎず、見守ることを意識することが大切なようです。
サークルタイム
サークルタイムは、子どもと保育士が輪になって着席し、話したり遊んだりします。
一方的に保育士に注目するのではなく、輪になってそれぞれの顔を見られることで他者への意識や自発的に話す力が養われそうですね。
プロジェクト
プロジェクトは、「プロジェクト活動」「プロジェクト保育」といって活動に取り入れている保育園も少なくないかもしれません。
今月は「色」、来月は「数」などとテーマを分けて月ごとにひとつのテーマに取り組んでいきます。
1週目では遊びの導入となる活動を、2週目では保育者も加わりながら遊んでみる、3週目は子どもが主体となり遊びを発展させる、最後の週にはさらに深堀する、といった流れで展開されるようです。
プランニングボード
プランニングボードとは、遊びのコーナー全ての写真を表示したもののことです。
子どもはプランニングボードを見ながらやりたい遊びを決め、名札などを使って予約をしてから遊び始めます。
じっくり考え自ら選択し予約をする一連の流れが、決断力や判断力を育みそうですね。
ピラミッドメソッドを参考に質の良い保育を考えよう
オランダ発祥の幼児教育法、ピラミッドメソッドについて紹介しました。
初めて聞いた方も多いかもしれないピラミッドメソッド。
しかし、子どもの自主性を育むといったねらいや、コーナーごとの環境設定など、今までの保育の中で自然と取り入れていた、という保育士さんもいるかもしれませんね。
世界にはさまざまな教育法があります。
これからも学びを深めながら、子どもにとってのメリットデメリットを考え、ご自身の目指す保育を見つけていってください。
保育園の中には、海外の教育法を取り入れているところや、海外研修のある企業もあります。
興味のある方はぜひ、保育士バンク!にご相談ください♪