担当の子に対して「発達障害があるかも…」と気づいた時、気になる子の様子を保護者に伝えるうえで、どんな言葉を選べばよいか迷ったことはありませんか。伝え方ひとつで保護者との信頼関係が大きく変わるため、不安がありますよね。今回は、保護者に対しての伝え方や例文、NG言葉、個人面談での会話例、保護者が怒り出した時の対応を詳しく紹介します。
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なぜ「気になる子」の保護者への伝え方はこんなに難しいのか
こども家庭庁の調査によれば、保育現場では、2015年~2022年まで発達障害の診断を受けた子どもの数が、10年間で約2倍になったといわれています。
引用:多様なニーズに対応した保育の充実① (障害児・医療的ケア児等)/こども家庭庁
このような状況のなか、保育士が保護者に発達の特性や発達の遅れについて伝える場面も増えているでしょう。
ただ、センシティブな内容のため、「伝え方がわからない」と悩む保育士さんも少なくありません。
まず、なぜ保育士さんが発達の遅れや特性について保護者へ伝えることが「難しい」と感じるのか、その理由を見ていきましょう。
保護者が「責められた」と感じやすい
保育士さんが、子どもに関して発達障がいの疑いがあると伝えた時、保護者は、「子どもの問題を指摘された」「育て方を批判されているのかもしれない」と、受け取ってしまうことがあるでしょう。
特に、それまで日常的なやり取りが少なかった保育士から突然こうした話をされると、戸惑いや不信感を持ちやすいかもしれません。
「我が子のことを否定された」という気持ちが生じやすい
我が子の発達に関する話は、どんなに丁寧に伝えようとしても、保護者にとって複雑な気持ちを伴う場合があります。
「そんなことはない」と強く否定する保護者の中には、内心では何かを感じながらも、認めることに不安を抱く方もいるでしょう。
保育士には「診断する立場にない」という制約がある
保護者から「うちの子に障がいがあるということですか?」と聞かれても、保育士はその問いに直接答えることができません。
発達障がいの診断は医師が行うものであり、保育士が判断できる立場にはないからです。
「はっきり言ってほしい」という保護者の気持ちは理解できますが、曖昧にすることも断言することも、どちらも保護者を傷つけるリスクがあります。
診断できる立場にないことを正直に伝えながら、園での様子として気になっていることを丁寧に共有する姿勢が大切になりそうです。
家庭での様子と園での様子が異なる場合がある
子どもは家庭での姿と園での姿が大きく異なることは珍しくありません。
「家では全然そんなことないんですが」という保護者の言葉は、否定しているわけではなく、本当にそう感じているのかもしれません。
また、集団生活の中でのみ確認できる特性もあるため、家庭では見えにくい面がありそうです。
保護者の言葉を否定せず、「そうなんですね。おうちでの様子を教えていただけると、園でもよりよい関わり方が考えられるかもしれません。」と伝え、家庭と園の情報を合わせる姿勢を示すことが、関係づくりの一歩になるでしょう。
ゆとりを持って子どもと向き合える園を探す
保護者に伝える前にやるべきことは「信頼関係の土台作り」
どれだけ言葉を選んでも、それを届けられる関係性がなければ伝わりにくいものです。
日頃からのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築きましょう。
日常のコミュニケーションを意識して積み重ねる
送迎時のほんの一言が、後の大切な話し合いの土台になることがあります。
「今日は砂場でとても楽しそうにしていましたよ」「お友だちに優しくしている場面がありました」など、子どもの姿を日常的に伝えていくことが大切です。
保護者は「この先生は我が子をちゃんと見てくれている」と感じやすくなるでしょう。
気になることを伝える前に、まず信頼の土台をつくることが、話を受け取ってもらえるかどうかに関わるでしょう。
気になる様子は記録として残しておく
「なんとなく気になる」という感覚だけで保護者に伝えようとすると、具体性がなく、かえって不信感を与えてしまうことがあります。
いつ・どんな場面で・どんな様子だったかを記録しておくことで、「客観的な事実として共有する」ことができます。
一人で抱え込まず、必ず園全体で情報を共有する
気になる子への対応は、担任一人の判断で動くのではなく、園長先生や主任、関わる保育士全員で情報を共有したうえで進めることが大切です。
複数の目で子どもの様子を確認することで、見落としを減らせるだけでなく、保護者への対応も「園全体としての方針」として伝えられるようになるでしょう。
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伝えるタイミングと場所の選び方
発達障がいや特性について保護者に伝える時、「いつ・どこで話すか」が重要です。
タイミングや場所を間違えると、内容がどんなに丁寧でも、保護者が冷静に受け取れなくなることがあるので、気をつけましょう。
送迎時・連絡帳・面談、それぞれの使い分けが重要
送迎時の立ち話は、普段の様子の共有には向いていますが、発達に関わる踏み込んだ話をする場には適していません。
周囲に他の保護者や子どもがいる環境では、保護者が委縮してしまったり、プライバシーが守られなかったりする可能性があります。
また、連絡帳は「園での様子をやんわり共有する」段階ではよさそうです。文字だけのやり取りは誤解が生じやすいため、込み入った内容は対面で補足することを心がけるとよいでしょう。
発達に関して踏み込んだ話をする時は、個別に時間をとった面談を設けることがポイントです。
「少しお時間をいただけますか。〇〇ちゃんのことで、ゆっくりお話しさせていただきたいことがあります。」と事前に伝え、落ち着いて話せる個室や静かな場所を用意しましょう。
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【例文つき】伝え方は全部で5ステップ!
続いて、具体的な伝え方について5ステップに分けて見ていきましょう。
このステップはあくまでも一例なので、園によっても対応方法は変わります。参考程度に確認してみてくださいね。
ステップ1:肯定から入る
最初に子どものよい面を伝えることで、保護者は「この先生は我が子のことをポジティブに見てくれている」と感じやすくなるでしょう。
形式的な褒め方ではなく、保護者が次の話を冷静に聞けるようにするために「肯定」から入ることを意識しましょう。
例文
- 〇〇ちゃんは、最近お友だちへの関わり方がとても優しくて、見ていてほほえましい場面がたくさんあります。困っている友だちにそっと寄り添うことも増えてきました。
- ▽▽くんは、好きな遊びへの集中力があり、一つのことにじっくり向き合える力があると感じています。
ステップ2:具体的な「困りごと」を園目線で伝える
続いて、その子の様子について「問題がある」という伝え方ではなく、「本人が困っている様子がある」という視点で話すことを心がけ、本題に入りましょう。
主語を「私(保育士)」や「周りの子」ではなく、「〇〇ちゃん本人」として、子どもや保護者の方が責められていると感じないように、配慮しましょう。
例文
- 一点だけ、園での様子でお伝えしたいことがあります。朝の会の時間に、椅子に座り続けることが難しい場面が、ここ数週間続いて見られています。
本人も何とかしようとしている様子なのですが、体がむずむずしてしまうようで、困っているようです。
- 活動の切り替えのタイミングで、気持ちの折り合いがつきにくそうな場面が続いています。泣いていたり、次の活動に気持ちが向かなかったりと、本人がつらそうな表情をしていることがあります。
ステップ3:家庭での様子を聞く
一方的に情報を伝えるだけでなく、保護者からも話を聞く姿勢を示すことが大切です。
「家ではどうですか?」と聞くことで、保護者は「一緒に考えてくれようとしているんだ」と感じてもらえるかもしれません。
また、家庭での様子を聞くことで、園での様子との共通点や違いが見えてきます。
例文
- おうちでは、気持ちの切り替えの場面などで、似たようなことはありますか?
もしあれば、様子を教えていただけますでしょうか?園でも参考にさせていただきたいと思っています。
- 園での様子をお伝えしましたが、おうちでの〇〇くんの様子はいかがでしょうか?保護者の方から見て、気になっていることや得意なことなど、何でも教えていただければうれしいです。
ステップ4:一緒に取り組む姿勢を示す
問題を伝えて終わりではなく、一緒に取り組む姿勢を示すことが重要です。
「園としてこう関わっていきたい」「共にサポート方法を考えたい」という姿勢を示すことで、保護者も安心感を抱きやすいでしょう。
例文
- 園では、切り替えのタイミングに少し早めに声をかけたり、次の活動を絵カードで伝えてみたりと、いろいろ工夫しています。
おうちでも何か試してみたいことがあれば、一緒に考えられたらうれしいです。
- 〇〇くんが園でも家でも、できるだけ安心して過ごせるように、保護者の方と情報を共有しながら、一緒にサポートしていきたいと思っています。何か、ご心配やご不安がありましたら、いつでもご相談くださいね。
ステップ5:公的な相談窓口を紹介する
保育士の役割は、発達が気になる子どもの「診断」や「判定」をすることではありません。
あくまで日々の保育の中で気になる様子を丁寧に観察し、必要に応じて保護者と情報を共有しながらサポートすることです。
そのため、特定の病院や医療機関を保育士が直接紹介することは、行わないことが多いでしょう。
もし、「専門機関を紹介して欲しい」と伝えられた場合は、市区町村の相談窓口や支援センターといった公的な機関を案内にとどめるとよさそうです。
例文
- 園でも引き続き関わっていきますが、もし気持ちの面で、専門家の方に相談してみたいと思われた時には、市の子育て支援センターや発達相談の窓口なども利用できます。
決して急ぐ必要はないですし、まずは情報として知っておいていただければと思います。
- 発達に関する相談は、保健センターや市の窓口でも気軽に受け付けていただけるようです。一緒に調べることもできますので、いつでもお声をかけてくださいね。
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保護者タイプ別の伝え方のポイント
保護者によって、子どもの状況への受け止め方は大きく異なります。
ここで保護者のタイプ別に伝え方のポイントについても見ていきましょう。
子どもの様子をまだ意識していない保護者へ
いきなり気になる点を伝えようとすると、「なぜそんなことを言われなければならないのか」という戸惑いにつながりやすいでしょう。
まずは子どものよい面を丁寧に共有し続け、信頼関係を育てることを優先しましょう。
日常的な会話を積み重ねる中で、「少し気になることがあって」と自然な流れで伝えることを意識するとよさそうです。
心配しているが相談を迷っている保護者へ
「何かあるのかもしれないとは思っているけれど、先生には言いにくい」という保護者もいるかもしれません。
こうした保護者には、保育士のほうから「何かあれば気軽に話してくださいね」と声をかけ続け、相談しやすい雰囲気をつくれるように心がけましょう。
保護者が話し始めた時には、すぐに解決策を提示するより、まず話を最後まで聞くことも大切ですね。
認めたくない・周囲に隠したい保護者へ
こうした保護者に対しては、保育士からのアプローチを急がないことを意識するとよさそうです。
「認めたくない」という気持ちの裏には、家族からのプレッシャーや、他の保護者からの目、これまでの子育ての経験への不安などが複雑に絡み合っていることがあります。
日常的に「いつでも相談してくださいね」という安心感を伝えながら、保護者が話してくれるまで待つという姿勢が大切になるでしょう。
人間関係良好!温かい園を探す言ってはいけないNGワードをチェック!
伝え方によっては、受け取る側を深く傷つけてしまう表現があります。
以下のNGワードに注意しましょう。
NGワード1:「発達障害ではないかと思います」「〇〇症の疑いがあります」
保育士が診断名を口にすることは、保護者を深く傷つけるだけでなく、園への不信感や、場合によっては苦情・トラブルにつながる可能性があります。
NGワード2:「育て方が影響しているかもしれません」「愛情不足ではないでしょうか」
保護者を責めるニュアンスを含むこれらの言葉は、保育士が伝えるべきことではありません。
保護者との信頼関係を一瞬で壊しかねない表現です。
NGワード3:「周りのお子さんに迷惑がかかっています」「他の子の邪魔になってしまっています」
この言葉は、我が子が「迷惑な存在」だと言われたように聞こえ、保護者を深く傷つけます。問題の本質を伝えるなら、「本人が困っている」という視点を中心にしましょう。
NGワード4:「普通ではありません」「同じ年齢の子と比べると…」
他の子との比較は保護者を追い詰めてしまうでしょう。その子自身の様子を丁寧に伝えることに集中するとよいですね。
保護者が「認めない・怒り出した」時の対応法
どれだけ丁寧に伝えても、保護者が感情的になることがあるかもしれません。
「うちの子に問題はありません」「先生の見方がおかしいのでは」と強く否定する保護者の多くは、我が子への深い愛情があるからこそ。
怒りや否定は、「受け入れたくない」という感情の表れであることが多いため、保育士の伝え方が悪かったから怒ったとは限りません。
まずその怒りや否定を「受け止める」姿勢を大切にしましょう。
怒り出した時の冷静な対応例
例文
- おっしゃりたいことはよくわかります。大切なお子さんのことですし、驚かれますよね。
困りごとがあるなら、もっと寄り添いたい、保護者の方と一緒に考えたいという気持ちからお伝えしました。
決して〇〇ちゃんを問題のある子だと思っているわけではないんです。また、日を改めてお話はできますでしょうか。ゆっくりお話しできる機会をいただけるとうれしいです。
などと日を改めてお話しすることを伝えるのもひとつの方法です。
「でも、事実として…」と反論したり「他の先生も同じ意見です」と、その場で結論を出そうとしたりするのは避けましょう。
怒りがある状態では、どんな情報も届きにくくなります。その場で分かってもらおうとするよりも、まず感情を受け止めることに集中しましょう。
時間をおいて再度話し合う方法
次の機会では「前回はご不安をおかけしました」と丁寧に伝え、保護者が話しやすい雰囲気をつくることを優先しましょう。
また、二度目以降の話し合いでは、担任だけでなく園長先生や主任も同席することで、「園全体で考えている」という姿勢が伝わりやすくなるかもしれません。
保護者とのやりとりの状況を伝え、園長先生や主任に対応法を相談することも大切です。
個人面談で伝える時の流れと会話例
個人面談は、発達に関する踏み込んだ話を伝えやすいかもしれません。
しかし、準備なしに臨むとかえって保護者を不安にさせてしまうこともあります。
ここでは、面談の流れと実際の会話例を紹介します。
面談前の準備チェックリスト
- 気になる様子の記録(いつ・どんな場面・どんな行動)を整理しておく
- その子のよい面・成長した点もリストアップしておく
- 園長先生・主任に事前に共有し、方針を確認しておく
- 面談の目的を「問題を伝えること」ではなく「一緒に考えること」に設定しておく
- 話が長引いた場合の対応を想定しておく
面談の開始から終了までの流れ
- 開始(場を温める)
- 子どものよい面を伝える
- 気になる様子を具体的に共有する
- 家庭での様子を聞く
- 一緒に取り組める方向性を話し合う
- 感謝と今後の関わり方を伝えて締める
面談全体の雰囲気が「問題を指摘する場」から「一緒に考える場」になるように配慮しましょう。
会話例(一連のやり取りとして)
これはあくまでも一例です。
まずは、子どもの状況を話し、これから一緒に見守っていく姿勢を伝えることを意識しましょう。
そのうえで保護者に「専門機関で一度みてもらったほうがいいですか?」などと相談された時は、公的な専門機関などを伝えるとよさそうです。
園長に相談しやすい!アットホームな職場を見つける 出典:多様なニーズに対応した保育の充実(障害児・医療的ケア児等)/こども家庭庁
気になる子への伝え方に関するよくある質問Q&A
発達障害や特性が気になる子への伝え方について、よくある質問をまとめました。
Q. 保護者に伝えたところ「うちの子は問題ない」と言われてしまいました。どうすればよいですか?
「一緒に様子を見ていきましょう」と受け止めたうえで、園での関わりは丁寧に続けていきましょう。
保護者の気持ちが変化するタイミングは人それぞれです。
次の個人面談や日々の連絡帳を通じて関係を積み重ねていくなかで、改めて話せる機会が生まれることがあります。
Q. 保護者から怒りをぶつけられてしまいました。どう対応すればよいですか?
その場で言い返したり、説明を重ねたりすることは逆効果になりやすいです。
「ご不快な思いをおかけして申し訳ありませんでした」と一度気持ちを受け止めたうえで、園長先生や主任に同席を求めるなど、担任一人で抱え込まない体制をとることが重要です。
Q. 担任として伝えるべきか迷っています。園長先生や主任に相談したほうがよいですか?
「このような様子が続いているのですが、保護者にどのように伝えるべきでしょうか」と事前に確認することで、園として方針を統一したうえで対応できます。
担任一人の判断で進めると、後からトラブルになるケースもあるため、チームで動くことが大切です。
Q. 記録はどのように残せばよいですか?
「落ち着きがない」などの主観的な表現ではなく、「〇月〇日、自由遊びの時間に友だちのおもちゃを繰り返し取ってしまう場面が3回あった」など事実ベースで残すようにしましょう。
こうした記録が保護者との面談時の根拠となり、園全体での方針統一にも役立ちます。
Q. 専門機関を勧めたいのですが、どこまで保育士が関わってよいのでしょうか?
特定の病院や医療機関を直接紹介することは職域を超えるリスクがあるため、市区町村の相談窓口や保健センター・児童発達支援センターなど公的機関の存在を伝えることを意識しましょう。
最終的にどこに相談するかは「保護者が判断すること」なので、踏み込み過ぎないように気をつけましょう。
悩みを解決!新しい一歩を踏み出すためにまずは相談
発達障害を保護者に伝える時は心に寄り添った伝え方を考えよう
発達が気になる子どもの保護者への伝え方に、決まった正解はありません。
大切なのは、日々の関わりのなかで信頼関係を積み重ね、保護者が「この先生は子どものことを本気で考えてくれている」と感じられる土台を作っておくことでしょう。
伝える言葉やタイミングひとつで、保護者の受け止め方が異なります。
「問題を指摘する」のではなく、「一緒に子どものことを考えたい」という姿勢で向き合うことを意識することが大切です。
なお、保育士バンク!では、保育士の方が現場で感じる悩みや疑問に寄り添うコラムを多数掲載しています。
保護者対応や発達支援に関する情報のほか、転職・キャリアに関するサポートも行っています。現場での困りごとや今後のキャリアについて、ぜひ一度ご相談くださいね。
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