凧あげや羽根つきなど、さまざまなお正月遊びがありますが、それぞれの由来をご存じでしょうか。子どもたちがお正月の風習に親しむきっかけとしてお正月遊びを保育に取り入れる際に、きちんと意味やはじまりを説明できるとよいですね。今回は、けん玉や福笑いなどお正月遊びの由来についてくわしく解説します。
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■目次
お正月遊びにはどんなものがある?
お正月遊びと聞いて、どんな遊びを思い浮かべるでしょうか。
かるたや羽根つきなどが定番ですが、ほかにもさまざまな種類の遊びがあります。
代表的なお正月遊びを挙げてみました。
- 凧あげ
- 羽根つき
- 福笑い
- コマ回し
- けん玉
- すごろく
- 百人一首
- かるた
ほかにも、めんこやお手玉、だるま落としなど、昔ながらの遊びは数多くあります。
保育活動にたくさんの種類のお正月遊びを取り入れれば、子どもたちが好きな遊びを見つけて遊べるうえに、日本の伝統に触れる機会も広がるかもしれませんね。
今回は、いろいろなお正月遊びの由来について紹介します。
お正月遊びの由来:凧あげ
凧あげは、古代の中国が由来と言われています。
かつて中国では凧が占いや戦いの道具として使われており、平安時代に日本に伝わったようです。
日本では貴族の遊びとして親しまれており、江戸時代になってから一般庶民のあいだで遊ばれるようになったと言われています。
庶民は、年初めに男の子の誕生をお祝いして健やかな成長を祈願するものとして遊んでおり、男の子の代表的な遊びとも言われていたそうです。
また、凧あげは空高く上がることから、「願い事を凧に乗せて天まで届ける」という意味も込められていたようです。
ちなみに、江戸時代に凧あげが一大ブームとなった当時、人々のあいだでは「イカあげ」として親しまれていたそう。
しかし、「いかのぼり禁止令」によって禁止されてしまったため、「イカあげ」ではなく「タコあげ」の名称で呼ばれるようになり、「凧あげ」という名前がついたと言われています。
お正月遊びの由来:羽根つき
女の子の代表的な遊びとして親しまれている羽根つきですが、その由来には2つの言い伝えがあります。
一つは、14世紀頃に中国で行われていた羽根に硬貨をつけたものを蹴り上げる遊びを起源とする説、もう一つは、奈良時代に日本で親しまれていた毬杖(ぎっちょう)遊びが由来であるとする説です。
羽根つきの羽根にはムクロジという植物の実が使われており、「無患子」という漢字から「子どもが患わない」として縁起のよいものと考えられていたそうです。
そのため、羽根つきには1年の厄をはらい、子どもの成長(特に女の子)を祈願する意味が込められていると言われています。
こうした由来から、現在でも女の子の誕生を祝うものとして羽子板を贈るという習慣が残っているのかもしれませんね。
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お正月遊びの由来:福笑い
福笑いの由来は明らかでなく、どのような目的で始められたのかもはっきりしていないようです。
しかし一説によると、江戸時代後期より人々のあいだで遊ばれるようになり、明治時代に入るとお正月遊びとして定着していったと言われています。
福笑いは、できあがった顔の面白さをみんなで笑い合って遊ぶことから「笑う門には福来る」ということわざのように、新年のはじめから笑いがあふれることはめでたいとして、お正月遊びとして親しまれるようになったのではと伝えられているそうです。
ちなみに、福笑いにおかめやひょっとこ、おたふくなどを使う理由についても明らかになっていません。
しかし、これらが福をもたらす縁起物として人々の生活になじみ深いものとされていたことから、親しみを込めて使われるようになったと言われています。
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お正月遊びの由来:コマ回し
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コマは、世界のいたるところにあり、起源や由来もさまざまあるようです。
日本のコマは、奈良時代に中国の唐から伝わったものとされ、当時は宮中の年中行事の余興として使われていたと言われています。
そして、平安時代になると貴族のあいだで遊戯として親しまれるようになり、子どもの遊びとして定着したのち江戸時代に庶民に広まっていったようです。
また、唐から高麗(こま)を通って日本に伝来したため「こま」という名前になったと言われています。
漢字表記については、中国で「獨楽」と表されていたことから、日本で「独楽」という漢字が使われるようになったそうです。
コマは、まっすぐに自立して回るその姿から「物事が円滑に回る」「お金がよく回る」として縁起物と考えられていたため、お正月遊びとして定着したと言われています。
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お正月遊びの由来:けん玉
けん玉は、フランスやギリシャ、中国など世界各地に起源があり、正確な由来ははっきりしないようです。
日本に伝わったのは江戸時代中期と言われ、シルクロードを通って長崎港から入ってきたとされています。
その頃のけん玉は、棒の上下に大小のお皿がついていて、そこに糸でつながった玉を乗せて遊ぶもので、お酒の席の遊びとして大人に楽しまれていたようです。
その後、明治時代になって文科省が児童教育解説書のなかでけん玉を紹介したことで、子どもの遊びとして親しまれるようになったと言われています。
大正時代に入ると、現在のけん玉のもとになった「日月ボール」が発売され、昭和期には子どもたちにとって身近なおもちゃとなったようです。
けん玉がお正月遊びとして定着した理由は定かではありませんが、古くから子どもたちの定番おもちゃとして親しまれてきたことが関係しているかもしれませんね。
お正月遊びの由来:すごろく
すごろくは奈良時代に中国から伝わったのが由来で、もともとは「盤双六」という2人が盤に向かい合って座り、白と黒の持ち駒で相手の陣地に攻めていく早さを競うゲームだったようです。
現在主流となっている双六は「絵双六」と呼ばれ、これは盤双六の影響を受けて作られた日本独自のものと考えられています。
江戸時代になると絵双六が流行し、簡単に遊べる「道中双六」や「出世双六」などが人気を博したことで、お正月にも親しまれるようになったと言われています。
双六は、ルールがシンプルで大人数でも楽しめることや運試しの要素もあることから、親戚などが集まる際のお正月遊びの定番となったようです。
お正月遊びの由来:かるた
かるたには2つの由来があるようです。
一つは、平安時代に貴族のあいだで行われていた「貝覆い」と呼ばれるもの。
貝覆いは、大ハマグリの貝を2枚使ってそれぞれに上の句と下の句をかき、ぴったりと合う組み合わせを探すという遊びだったようです。これが、今の百人一首に通じる「歌かるた」と言われています。
もう一つは、16世紀頃に日本に来たポルトガルの宣教師によってかるたが伝えられたという説です。
このかるたは南蛮かるたと呼ばれ、ポルトガル語で手紙やカードを意味する「カルタ(carta)」が語源と言われています。
日本で親しまれていたいろはかるたや歌かるたとは異なり、トランプに近いものであったようです。
室町時代には日本独自の「うんすんかるた」が誕生し、平安時代の貝合わせと結びついてかるたができたと言われています。
江戸時代になると、子どもたちがひらがなやことわざを覚えられるようにと、「いろはがるた」が作られたそうです。
お正月遊びの由来:百人一首
そもそも百人一首とは、鎌倉時代の歌人である藤原定家が優れた和歌を100種選んでまとめた歌集です。
平安時代より行われていた貝合わせ(バラバラになった貝の組み合わせをあてる遊び)をルーツとして、百人一首かるたが生まれたと言われています。
もともとは宮中の遊びでしたが、江戸時代の木版画技術によって、絵がかかれた歌かるたが庶民に広がっていったようです。
そして、江戸後期以降には百人一首のためだけの会が開かれるなど人々のあいだで親しまれるようになり、お正月遊びとして定着したと考えられています。
お正月遊びの由来を知って、保育に取り入れてみよう
今回は、定番のお正月遊び8種類の由来を紹介しました。
凧あげやコマ回しなど、多くの遊びは中国から伝わったものが多く、最初は貴族のあいだで遊ばれていたものが、徐々に一般庶民にも広まっていったのですね。
福笑いやけん玉など由来がはっきりしていないものもありますが、昔から子どもたちが親しんできた遊びだからこそ、現在でも定着し続けていると言えそうです。
昔ながらのお正月遊びには、健康を願ったり成長を願ったりとさまざまな意味が込められている遊びもあります。
普段遊んでいるだけでは気づきにくい隠された意味や由来を子どもたちに伝えて、保育園でお正月遊びに親しめるとよいですね。