ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)とは?非認知能力との違いや幼児教育現場での実践例をわかりやすく解説

    SEL(ソーシャル・エモーショナル・ラーニング)とは、日本語で「社会性と情動の学習」と訳され、学校や幼児教育の現場で注目されている教育プログラム。「友だちとうまく関われない」「感情のコントロールが難しい」といった子どもたちの課題に対し、事後対応ではなく「未然に防ぐ力」を育むアプローチとして期待されています。今回はSELの概要や明日から幼児教育現場で使える具体的な実践方法までわかりやすく解説します。

    taka / stock.adobe.com

    目次

    ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)とは

    ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)とは、自己認識、自己管理、社会的認識(他者理解)、対人関係スキル、責任ある意思決定という5つの非認知能力を育む教育プログラムの総称です。

    この言葉は、次の3つの英語の頭文字を取った略称です。

    • Social(社会性)
    • Emotional(情動・感情)
    • Learning(学び)

    日本語では「社会性と情動の学習」と呼ばれますが、シンプルにいえば、私たちが生きていくうえで欠かせない「心の力」を育むことを目的としています。学校教育だけでなく、家庭や職場、日常生活のなかで人生をより豊かにするために重要視されています。

    SELが注目される理由は「いじめ」「不登校」の増加の影響

    SELが、教育や保育の現場で急速に注目を集めている大きな理由の一つは、子どもたちを取り巻く環境の変化、特に「いじめ」や「不登校」の深刻化にあります。

    2024年度の文部科学省の調査によれば、学校における「いじめの認知件数」「不登校児童生徒数」の推移をみると、どちらも増加傾向であり、過去最多を記録しています。

    2025年不登校数、いじめ数

    引用:令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要/文部科学省

    こうした現状に対し、何か問題が起きてから事後対応をするのではなく、トラブルが起きる前に、子ども自身が「自分の感情をコントロールする力」や「相手を思いやる力」を育んでおくことで、いじめや不登校を未然に防ごうという考え方が広がっています。

    「心の力」を育むSELは、いじめや不登校などの予防策として期待されており、幼児期から取り入れていくことが大切です。

    SELにおける5つの能力領域

    SELでは、子どもたちが健やかに育つために必要な力を、以下の5つの領域に分類しています。

    ソーシャルエモーショナルラーニング※画像はイメージです(AI生成画像)

    • 自分を理解する力(自己認識)
      自分の今の気持ちや考えを理解し、得意なことや苦手なことを知る力
    • 自分をコントロールする力(自己管理)
      ストレスを発散させたり、目標に向かって自分の感情や行動をコントロールしたりする力
    • 他者を理解する力(社会的認識)
      相手の立場に立って気持ちを想像し、自分との違いを尊重して共感する力
    • 人間関係を築く力(対人関係スキル)
      友だちと協力し、困ったときには助け合いながら、良い関係を維持する力
    • 責任ある意思決定をする力(自分で選択する力)
      周りの状況を考え、相手を思いやりながら「どうするのが一番よい」を自分で決める力

    5つの力は、それぞれが独立しているものではなく、互いに深く関わり合っています。

    自分を整える力」を土台に、「他者を思いやる力」が育ち、その積み重ねが友だちや周囲の人を大切にした行動や判断へとつながっていきます。

    これらの力がバランスよく育つことで、子どもたちは困難に直面しても自分らしさを保ち、周囲と支え合いながら前に進んでいけるようになるでしょう。

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    SEL・認知能力・非認知能力との違い

    子どもの成長を考えるうえで、「認知能力」「非認知能力」という言葉を耳にすることがあるでしょう。それぞれの意味や違いを確認していきましょう。

    認知能力

    認知能力とは、知識を理解し、考え、活用する力のことです。読み書きや計算に加え、記憶力・集中力・論理的思考力・問題解決力なども含まれます。学校のテストで測られる学力は、認知能力の一部にあたります。

    非認知能力

    非認知能力は、意欲・自制心・協調性・粘り強さ・感情のコントロールなど、数値では測りにくい「心や態度」に関わる力です。学びや人間関係を支える土台となります。

    項目 認知能力 非認知能力
    役割 知的な力
    知識を理解し、考え、活用する力。学力のベース
    心や態度の力
    学びや人間関係を支える、目に見えにくい土台
    主な具体例 読み書き、計算、記憶力、集中力、論理的思考力など 意欲、自制心、協調性、粘り強さ、感情のコントロール

    SELは、非認知能力のなかでも特に、自分の感情を理解し整える力や、他者を思いやり良好な関係を築く力などを意識的に育てる方法を指す点に違いがあります。

    このように、認知能力・非認知能力・SELは、それぞれの意味に違いがありながら、子どもの成長を支えるうえで重要なものです。

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      保育・幼児教育現場におけるSELを取り入れる重要性とメリット

      SELは、幼児教育の現場でも園内研修で学ぶ機会が増えています。乳幼児期を支える現場だからこそ、SELを取り入れる意味や重要性について考えていきましょう。

      初めての集団生活を学ぶ場だから

      保育・幼児教育の現場は、家族以外の人と共に過ごすことを初めて経験する場です。日常的に順番を待つ、譲り合うなど、思い通りにならない場面があります。

      こうした集団ならではの経験を通して、子どもは相手の気持ちに気づき、自分の感情のコントロールの仕方を少しずつ学んでいきます。

      自分の感情を知り、コントロールする力を育むため

      乳幼児期は、自分の中に湧き上がる「悔しい」「悲しい」といった感情の表現方法がわからず、戸惑いやすい時期です。

      SELを通して、自分の心の状態を「言葉」にする経験を重ねることは、自分のあらゆる感情を否定せずに受け入れることにつながります。(自己肯定)

      自分の気持ちをわかってもらえたという安心感があるからこそ、子どもは少しずつ自分を落ち着かせる方法も身につけていくことができるでしょう。

      「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」を支える土台となるから

      「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」は、卒園までに育まれる子どもたちの具体的な成長の目安を示したものです。SELで培われる力は、この10の姿を実現するための重要な土台となります。

      幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿

      1.健康な心と体 
      2.自立心 
      3.協同性 
      4.道徳性・規範意識の芽生え
      5.社会生活との関わり
      6.思考力の芽生え
      7.自然との関わり・生命尊重 
      8.数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
      9.言葉による伝え合い 
      10.豊かな感性と表現

      例えば、友だちと協力する「協同性」や、ルールを守る「道徳性」は、自分の感情をコントロールし、他者に共感する力があってこそ育まれるものです。SELを日々の保育に取り入れることで、10の姿に示される「豊かに生きる力」の基礎を養うために役立ちます。

      小学校生活へのスムーズな移行(小1プロブレム)を支えるため

      「小1プロブレム」とは、小学校入学という環境の変化に戸惑い、新しいルールに馴染めなかったり、集団行動が難しくなったりする状態を指します。

      こうした課題を乗り越える鍵もまた、SELが育む領域にあります。小学校では、さらに「自己コントロール」や「他者との協力」が求められる場面が多いでしょう。幼児期にSELを通じて、自分の不安を和らげる方法や相手を思いやる力を蓄えると、慣れない環境でのストレスに対応し、意欲的に生活するエネルギーとなります。

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      保育・幼児教育現場におけるSELの実践例

      ここでは実際に保育・幼児教育の現場で取り入れられるSELの導入例を紹介します。

      自分の気持ちを見える化する「感情カード」

      感情カードを楽しむ子どもと保育士※画像はイメージです(AI生成画像)

      子どもたちが今の自分の気持ちを客観的に捉え、言葉や形で表現する活動です。

      ねらい
      自分の感情を否定せずに認め、言葉にする「自己認識」の習慣を遊びながら身につける

      活動内容
      「うれしい」「かなしい」「おこっている」などのイラストを描いたカードを用意します。登園時や活動の節目に、「今の気持ちはどれかな?」と子ども自身に選んでもらったり、自分の名前カードを貼ったりして遊びの要素を取り入れます。

      心を落ち着ける「カウントダウン」

      強い感情が湧いた時に、自分から進んで心を落ち着ける場所をつくる方法です。

      ねらい
      数に意識を向けることで、高揚した気持ちを切り替え、自分で感情をコントロールする力を養う

      活動内容
      怒りを感じた時に先生と一緒に「5、4、3、2、1」とゆっくりカウントダウンを行います。ただ数を数えるだけでなく、深く息を吐きながら数えるなど、呼吸と合わせることでよりリラックスできそうです。子ども自身が「心を落ち着かせたい時の方法」として身につけられるでしょう。

      また、保育園や幼稚園の定番の手遊び「はじまるよ♪」も数字が含まれているので、気持ちを切り替える際に使えそうですね。

      友だちと心を通わせる「サークルタイム」

      みんなで輪になって座り、互いの思いを共有し、聞き合う対話の活動です。

      ねらい
      自分の思いを伝える経験や、他者の話を聞く経験を通して、共感力や関係を築く力を養う

      活動内容
      朝の会や帰りの会で、昨日あったうれしいことや今楽しみなことを一人ずつ話す時間を持ちます。話す人だけでなく、「相手の目を見て聞く」「うなずく」といった聞き手の姿勢も取り入れ、温かい雰囲気を作るように心がけましょう。

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      【幼児期のSEL実践】日常生活における先生の声がけポイント

      子どもたちの心の育ちを支えるうえで、先生からの声がけは大切なもの。日々の何気ないやり取りのなかにSELの視点を取り入れてみましょう。

      感情に名前をつける「ラベリング」

      子どもが自分の気持ちを言葉にできず戸惑っている時に、その感情を代弁してみましょう。自分の心のなかで起きているモヤモヤの正体を言葉にしてもらえると、子どもは安心し、心を落ち着ける方法を学ぶことができます。

      声がけの例
      「積み木が倒れちゃって、悔しかったね」
      「仲間に入りたくて、悲しい気持ちになったんだね」
      「急に大きな音がして、びっくりしたね」
      「友だちが笑ってくれてうれしくなったんだね」

      また、身体の変化と感情の名前を結びつけて伝えると、子どもは目に見えない自分の感情をより具体的にイメージしやすくなるでしょう。

      解決策を子どもと一緒に考える「対話のヒント」

      トラブルが起きた際、すぐに正解を提示するのではなく、子どもが考える時間をつくってみましょう。相手の気持ちを想像したり、どうすれば解決できるかを自分たちで探ったりする経験は、他者と協力する力や納得感を持って行動する力を培うことに役立ちます。

      声がけの例
      「〇〇ちゃんは今、どんな気持ちでいるかな?」
      「二人ともおもちゃを使いたいみたいだね。どうすれば楽しく遊べるか、一緒に考えてみようか」
      「次はどうしたいか決まったら、先生に教えてね」

      子どもの様子を見て、なかなか自分の考えを整理することが難しそうな場合は「一緒に考えてみよう」と伝え、自分の気持ちを言葉で表現できるように向き合うことも大切ですね。

      活動の切り替えを支える声かけ

      楽しい遊びを中断して次の活動へ移ることが難しい子どもは多いもの。遊びをやめさせるのではなく、本人の「もっとやりたい」という気持ちを尊重した声かけを意識できるとよいですね。

      声がけの例
      「もっと遊びたかったね。それだけ今の遊びが楽しかったんだね」
      「あと何回やったらおしまいにする? 自分で決めていいよ」

      砂時計やタイマーを使って「あと少しで終わり」という時間を視覚的に伝えたり、「片付けの歌」を流したりすることで、子ども自らが切り替えられるようになるでしょう。

      【必見】先生自身の「心のケア」にも使えるSEL

      SELは子どもたちのためだけのものではなく、先生自身が心の状態を整え、健やかに働き続けるための考え方としても活用できます。

      「今、自分は少し余裕がないな」と自分の感情に気づいた時、一度立ち止まり気持ちを整えることが大切です。

      【心のケアの方法例】

      • 自己認識
        自分の気持ちに名前をつけてみる(例「今日は少しイライラしている」「疲れがたまっている」)
      • 呼吸や姿勢でリセット
        深呼吸を数回行ったり、身体を動かしたりして気持ちを落ち着ける
      • 小さな休憩
        休憩時間に軽く歩く・お茶を飲むなど、短時間でも自分をいたわる時間を意識的につくる
      • 感謝や振り返り
        一日の中でよかったことや達成したことをメモし、前向きに物事を考えられるような習慣をつくる

      先生が自分の心を丁寧に扱い、落ち着いて子どもと向き合う姿は、子どもたちにとっての学びにもつながるでしょう。

      ただ、なかには今の職場で働くことが辛く、なかなかSELの手法を取り入れる余裕すらない…という方もいるかもしれません。

      そんな時は、ぜひ保育バンク!へお悩みをご相談ください。友人や同僚などに相談できないこともあるかもしれません。一人で抱え込まず、お気軽にお問い合わせください。

      保育士バンク!に相談

      なお、今の保育にマンネリを感じている方は心の余裕がないことが原因の場合も…お悩みの方はこちらの記事をチェックしてみてくださいね。

      ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)に関するよくある質問(Q&A)

      現場の先生方から寄せられることの多い疑問をまとめました。

      Q.日々の業務が忙しく、SELのための時間を確保するのが難しいです。

      A.SELは「新しい特別なカリキュラム」として時間を設けなくても、日常的に意識して取り入れられます。

      今回紹介した「感情のラベリング」や「活動の切り替え時の声かけ」のように、日常の保育のひとコマに取り入れることを意識するとよいでしょう。

      Q.何歳くらいから取り入れるのが効果的ですか

      A.言葉の理解が進む2〜3歳頃から少しずつ意識するとよいといわれていますが、「安心できる大人との関わり」という点では0歳から始まっています。

      乳児期は先生が気持ちを代弁し、幼児期は自分で解決策を考えられるよう促すなど、発達段階に合わせてアプローチを変えていくのがポイントです。

      Q.小学校ではどのような取り組みがされていますか

      A.「今の気分を天気に例えて発表する」「友だちへの上手な頼み方を練習する」などの活動が行われているようです。

      幼児期の経験が、こうした小学校での「言葉によるコミュニケーション」の大きな土台となります。

      Q.SELとSST(Social Skills Training)との違いは何ですか

      A.SELは「心の教育の全体」、SSTは、そのための「具体的な練習方法」という関係です。

      SSTは上手な断り方など、具体的な行動を繰り返すことで身に付ける訓練を指します。

      Q.道徳教育(Moral Education)とSELの違いは何ですか

      A.一言でいうと、「何を大切にするか(価値観)」を学ぶのが道徳、「どう行動するか(スキル)」を学ぶのがSELです。

      道徳は正しい答えを学び、SELはどうやって感情を落ち着かせ、相手と関わるかという技術を学びます。

      SELは「親切にしたいけれど、イライラしてできない」という時に、どうやって自分の感情を落ち着かせ、相手と関わるかという具体的な技術(スキル)を学びます。

      Q.家庭との連携はどう進めるのがよいでしょうか

      A.園での取り組みを園だよりなどで伝えたり、子育て相談のなかでSELを紹介したりしてみましょう。

      どのように子どもに声をかければよいのか、悩む保護者の方も多いため、ヒントとなるように伝えてみるとよさそうです。

      転職サポートに登録する 出典:令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要/文部科学省 出典:資料3 「幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の具体的な姿(参考例)」/文部科学省

      教育現場でソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)を取り入れてみよう

      SELは、子ども自身が自分の感情を理解し、他者と協力したり思いやったりする力を育む教育方法です。幼児期から取り入れることで、子どもたちの心の成長を支え、より安心して学べる環境をつくることができるでしょう。

      また、幼児教育の現場でSELを積極的に取り入れている園で働いてみたいという方は一度保育士バンク!にご相談ください。SELの研修を取り入れている園などもありますので、お問い合わせお待ちしています。

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