内閣府が管轄する子ども・子育て支援新制度という制度があることをご存じでしょうか。制度の名前は耳にしたことがあっても、いつから始まったどんな制度なのかまでを詳しく知る人はあまりいないかもしれません。今回は、子ども・子育て支援新制度の詳細をわかりやすく解説します。同時に、この制度による保育士さんへの影響や課題も確認しておきましょう。
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■目次
子ども・子育て支援新制度とは
子ども・子育て支援新制度とは、内閣府が管轄する幼児期の子どもを対象にした学校教育や保育、地域の子育て支援などの質と量の向上を図る制度です。
消費税率引き上げによる増収分を活用し、平成27年4月から施行されています。
実施主体は内閣府ではなく市区町村
子ども・子育て支援新制度の実施主体は、内閣府ではなく市区町村です。このことから、各地域の市区町村は子育て家庭の状況や子育て支援などのニーズをしっかり調査し、「市町村子ども・子育て支援事業計画」を作成します。
平成28年には企業の子育て支援も応援!
子ども・子育て支援新制度が施行された翌年の平成28年には、企業による子育て支援を応援するため、「仕事・子育て両立支援事業」を創設。
これにより、企業からの事業主拠出金を財源とすることが可能になりました。事業所内保育の整備に加え、ベビーシッター派遣サービスの利用を促進し、働きながらでも子育てがしやすいように環境を整えています。
子ども・子育て支援新制度の主な施策
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子ども・子育て支援新制度は、具体的にどのような施策を行なっているのでしょうか。ここでは、子ども・子育て支援新制度の主な施策をご紹介します。
支援の量を拡充させる
子どもの年齢に加え、親の就労状況などに応じて多様な支援を用意しています。認定こども園の普及を目指したり、地域型保育事業の整備を行なったりして、待機児童の解消をするのが目的です。
支援の質を向上させる
支援の量を拡充する施策が子育て家庭を対象にしているのに対し、こちらの施策は保育士さん向けの施策となっています。
具体的には、保育所や認定こども園などの施設で子どもたちに目が行き届くように職員1人が担当する子どもの数を改善する職員配置の改善、職場への定着と質の高い人材の確保を目的として職員の処遇改善を行なうなどです。
地域の子育て支援を充実させる
子育て家庭や妊産婦を対象に、地域のニーズに応じた子育て支援を充実させる施策を行なっています。地域向けに行なっている子育て支援は、以下のとおりです。
- 利用者支援事業
- 地域子育て支援拠点事業
- 妊婦健康診査
- 乳児家庭全戸訪問事業
- 養育支援訪問事業
- 子育て短期支援事業
- 子育て援助活動支援事業
- 一時預かり事業
- 延長保育事業
- 病児保育事業
- 放課後児童クラブ
- 実費徴収に係る補足給付を行なう事業
- 多様な事業の参入促進・能力活用事業
上記のような子育て支援を充実させることによって、子育てをしながらでも安心して働ける雇用環境を整備しています。
子ども・子育て支援新制度が保育士さんに与える影響とは
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施策だけを見ていくと、主に子育て家庭を対象にしているかのように思えるでしょう。しかし、実は保育士さんにとっても就職先が増えるなどよい影響があります。ここでは、どのような影響があるのかを確認しておきましょう。
保育士さんの就職先が増える
支援の量を拡充することを目的としている制度のため、以下の保育施設の増加が見込まれるでしょう。
- 幼稚園
- 保育所
- 認定こども園
- 事業所内保育所
- 放課後児童クラブ
上記の通り、子ども・子育て支援新制度によって、認定こども園や放課後児童クラブなどの新たな施設が新設されました。
これにより、かつては幼稚園や保育所への就職が一般的だった保育士さんですが、保育士という資格を活かして働くことができる施設が大幅に増えています。その結果、保育士さんの勤務先も大幅に増えることになりました。
給与改善が見込まれる
子ども・子育て支援新制度により、職員の配置基準や処遇改善などの見直しが行なわれるようになりました。これは保育士さんの待遇を改善し、高い離職率を下げることを目的としています。
配置基準の施策としては、職員1人が担当する子どもの人数を変更するというものです。保育士さん1人が受け持つことのできる人数は子どもの年齢によって異なります。
- 0歳児:保育士さん1人に対し、子ども3人
- 1~2歳児:保育士さん1人に対し、子ども6人
- 3歳児:保育士さん1人に対し、子ども20人
- 4~5歳児:保育士さん1人に対し、子ども30人
なお、上記の人数は厚生労働省が定める一般的な保育園の配置基準です。実際は、国や自治体、施設の種類などによって異なります。
一方、処遇改善の施策では、教育・保育の現場で働く人たちを対象に収入を3%引き上げるための費用を国が補助しています。これにより、保育士さんの給与については基本給に月額9000円上乗せされることとなりました。
もともとは令和4年2月から9月までの実施期間としていましたが、公定価格の見直しにより、令和4年10月以降も継続されています。
子ども・子育て支援新制度の今後の課題とは
子ども・子育て支援新制度により、保育施設の増加が期待される中で、まだまだ量的な充足が達成されていない状況にあります。
これには必要な財源を確保できていなかったり、保育士が不足していたりするなどの背景があるようです。
また、地域によっては保育所の建設に対する住民の反対運動が起こり、開設を断念せざる負えない状況に追い込まれることもあります。
出典:子ども・子育て支援新制度における「量的拡充」と「質の改善」について/内閣府
子ども・子育て支援新制度は保育士にとってメリットがある制度です
子ども・子育て支援新制度は、就職先が増えたり、給与改善が見込まれたりするなど保育士さんにとっても影響がある制度です。
この制度により保育施設が増加しているので、就職先や転職先を探す際の選択肢も増えることが期待されています。
保育士バンク!では、これから保育士を目指す人や転職を希望する人を対象に就職・転職に関するさまざまなサポートを行なっています。
保育施設の情報収集はもちろんのこと、ご入職後も徹底的に寄り添いますので、お気軽にお問い合わせください。