2003年に全国保育士会が策定した「全国保育士会倫理綱領」は、厚生労働省による「保育所保育指針解説書」にも取り上げられた、保育士さんの意識向上のための行動規範となる条文です。この倫理綱領の概要や8項目の解説、過去問題から見る保育士資格試験の出題内容についてもお伝えします!
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■目次
保育士の倫理綱領はなんのためにある?
保育士には「倫理綱領」というものがあるのをご存じでしょうか。正確には「全国保育士会倫理綱領」で、「ぜんこくほいくしかい りんりこうりょう」 と読みます。
2003年に児童福祉法改正により保育士資格が法定化されたことを機に、全国保育士会が定めた保育士の基本的な考え方について書かれた文章です。
前文には、基本姿勢として以下のような条文が示されています。
- 私たちは、子どもの育ちを支えます。
- 私たちは、保護者の子育てを支えます。
- 私たちは、子どもと子育てにやさしい社会をつくります。
また、厚生労働省が公表している「保育所保育指針解説」のなかで、「全国保育士会倫理綱領」の内容について以下のように触れられています。
保育士に求められる子ども観やそれを踏まえた保育の基本姿勢及び保育士としての使命と役割を掲げた上で、子どもの最善の利益の尊重、プライバシーの保護、子どもの立場に立って言葉にできない思いやニーズを的確に代弁することなど、保育士の職務における行動の指針が示されている。
保育士の人間性と専門性の向上に寄与し、保育の質を維持し高めるために、保育士さんにとって職務上の重要な考え方が書かれていると認識しておくとよいでしょう。
【保育士の倫理綱領】8条について解説
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「全国保育士会倫理綱領」の本文は、以下の8つからなる条文で構成されています。
この8条についてくわしく見ていきましょう。
1. 子どもの最善の利益の尊重
私たちは、一人ひとりの子どもの最善の利益を第一に考え、保育を通してその福祉を積極的に増進するよう努めます。
子どもの人権を守る制度として「児童福祉法」「児童憲章」「子どもの権利条約」を理解し、子どもに対して長期的・体系的な福祉の増進と、保育士自らが多様性を認め実践する姿勢が大切と説かれています。
2. 子どもの発達保障
私たちは、養護と教育が一体となった保育を通して、一人ひとりの子どもが心身ともに健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境を用意し、生きる喜びと力を育むことを基本として、その健やかな育ちを支えます。
保育は常に「養護」と「教育」を一体として行なわれるという考えのもと、保育士さんは一人ひとりの発達の特性と成長過程に対して、個性を尊重しながら援助します。
そのため、子どもの発達に不可欠な安心・安定した情緒の形成をうながせる保育環境の整備が大切です。
また、食育の推進もこの中に含まれています。
3. 保護者との協力
私たちは、子どもと保護者のおかれた状況や意向を受けとめ、保護者とより良い協力関係を築きながら、子どもの育ちや子育てを支えます。
保育施設と保育士は、保護者に対して「子どもの発達を協働して支えるパートナー」であると考えます。
保護者自らが子どもにとっての「最善」を選択できるよう支援するなど、保育士・保育教諭の専門性を発揮することが望まれます。
4. プライバシーの保護
私たちは、一人ひとりのプライバシーを保護するため、保育を通して知り得た個人の情報や秘密を守ります。
利用者主体の情報共有とプライバシー保護の視点が示されています。
日常から個人情報に接する機会が多い保育士さんは、情報保護に対する意識を高め、取り扱いについて常に慎重に対応しなくてはなりません。
5. チームワークと自己評価
私たちは、職場におけるチームワークや、関係する他の専門機関との連携を大切にします。また、自らの行う保育について、常に子どもの視点に立って自己評価を行い、保育の質の向上を図ります
また、地域と円滑に連携をするために、自らの保育実践のふりかえりと評価を行ないながら、計画の充実を図るPDCAサイクルを活用して保育の質向上を図っていく必要があります
6. 利用者の代弁
私たちは、日々の保育や子育て支援の活動を通して子どものニーズを受けとめ、子どもの立場に立ってそれを代弁します。また、子育てをしているすべての保護者のニーズを受けとめ、それを代弁していくことも重要な役割と考え、行動します。
地域すべての子どもと保護者、子育て家庭の代弁者である意識を持ったうえで保育の実践や地域と連携したソーシャルアクションを起こし、子どもや家庭の問題解決に臨みます。
常に子どもに対する福祉の向上を目指した保育の実践が必要とされます。
7. 地域の子育て支援
私たちは、地域の人々や関係機関とともに子育てを支援し、そのネットワークにより、地域で子どもを育てる環境づくりに努めます。
地域全体での子育てを推進し、地域の保育機能を高める役割の中で、不足している部分があれば、自園での取り組みや、新しいサービスの創出などを実践していきます。
「子育てにやさしいまち・環境づくり」を担い、必要なときにお互いが協力し合える関係を地域と築くことも求められます。
8. 専門職としての責務
私たちは、研修や自己研鑽を通して、常に自らの人間性と専門性の向上に努め、専門職としての責務を果たします。
厚生労働省による「保育所保育指針」に記されている保育士の専門性を踏まえつつ、社会福祉の専門職としての強い自覚と責任感を持ち、知識・技術の習得に努めることが大切です。
この「全国保育士会倫理綱領」の条文すべてを実践することが保育士さんの責務 と言えるでしょう。
保育士の倫理綱領は資格試験にも出題!
保育士資格試験では、「社会福祉」で「全国保育士会倫理綱領」からの問題が出題されるケースが多くあります。
試験実施年度や前期・後期の違いによって出題箇所や内容はさまざまですが、前文が出題される場合と8条から出題される場合があります。8条の中から数カ所が抜粋される頻度も高いようです。
出題内容としては、穴埋め問題となることがほとんどです が、過去問題と同じ条文や前文が出題される場合も穴の箇所は毎回違うようですので、しっかり暗記する必要があります。
2023年4月に実施された前期試験では、「子ども家庭福祉」の問題で、1・4・6・8条から穴埋め問題が合計5問出題されたようです。
保育士の倫理綱領はどこで読める?
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「全国保育士会倫理綱領」は、前文と8条すべて含めても短く簡潔にまとまった内容になっていますので、すぐに読むことができます。
綱領本文はすべて保育士会のウェブサイトで閲覧可能 です。また同サイト内で、くわしい内容について解説された学習シートも公開されています。あわせて読めばより理解を深めることができるでしょう。
サイトでは、保育士さんが持ち歩けるよう手帳にはさめるサイズの携帯版リーフレットや、条文ごとに具体的な事例を掲載した詳細な解説を読むことができるガイドブックも販売されています。
保育士の倫理綱領を身につけてさらにステップアップ
現役の保育士さんにとっても、これから保育士を目指す方にとっても必読のバイブルといってもよいのが、「全国保育士会倫理綱領」です。
しっかり覚えて理解し、できることから保育の現場で実践 していくことで、保育の質や子どもたちの未来にも大きく貢献できるでしょう。
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