2018年から運用が始まる新しい保育所保育指針では、第2章 保育内容における乳児保育に関する記述が付け加えられています。乳児保育に関する記述はどのように変更され、保育者がどのような働きかけを行うべきでしょうか?
新たに加わった乳児保育の3つの視点
今回の改定において、保育所は「幼児教育施設」であると明記され、今まで以上に、養護と教育が一体となった保育を展開していくことが求められています。また、小学校入学時以降の姿を視野に入れた保育を0歳の時期から行うという姿勢が示されました。
乳児期(0歳児)の保育では「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5つの領域が密接に繋がっています。例えば、”ふれあい遊び”の活動の中には、体をのびのびと動かす(健康)、保育者と十分に触れ合う(人間関係)、機嫌よく喃語を発する(言葉)といったように、複数の育ちの要素が含まれているのです。
そこで今回追記されたのが、5領域に分化する前の乳児期の育ちに関する新たな3つの視点「健やかに伸び伸びと育つ」「身近な人と気持ちが通じ合う」「身近なものと関わり感性が育つ」です。これらの視点について、保育士はどのように働きかけたり配慮をすべきか、事例を交えて紹介していきましょう。
1.健やかにのびのびと育つ
健康な心と体を育てると同時に、子どもが自ら健康で安全を考え、行動できるよう基盤を作っていく。
<心地よさを感じる>
・排泄をしたらオムツ替えをし、常に体の清潔を保つ。
・天気の良い日は窓を開け、風や日光の心地よさを感じることができるようにする。
・温度や湿度に配慮し、適切な環境下で保育を行う。
<のびのびと体を動かす>
・はいはい、つかまり立ち、つたい歩きなど発達に応じて体を動かすことができる環境を整える。
・一緒にふれあい遊びを行ったり玩具を使い、十分に体を動かして楽しめるよう工夫する。
・「◯◯ちゃんのあんよ」など、触れながら体の部位を呼びかけるなどし、自分の体に関心が持てるようにする。
<生活リズムの感覚が芽生える>
・食事の時間は和やかな雰囲気を作り、いろいろな食べ物に興味を持てるよう工夫する。
・睡眠時は心地よく眠れるように、音や光など環境に配慮する。
・家庭との連携を行い、一人ひとりの生活リズムを把握する。
2.身近な人と気持ちが通じ合う
受容的・応答的な関わりの中で、気持ちを伝える意欲を育て、他者との信頼関係を構築していく。
<身近な人と共に安心して過ごす>
・信頼できる担任保育士と一緒に過ごすことができるよう、担任同士で打ち合わせをし、十分に関わりが持てるようにする。
・子どもたち一人ひとりの反応に温かく応え、個人差を理解して適切な援助を行う。
<喃語や体の動きでやりとりをする>
・オムツ替えや着替えの際に「きれいきれいしようね」「気持ちよくなったね」など声掛けをする。
・体の動きや表情をよく観察し、「おもしろいね」「悲しかったね」とその子の気持ちを代弁する。
<身近な人と信頼関係を持つ>
・1対1で遊び、「抱っこしてほしい」「お腹がすいた」などの欲求を十分に受け止める。
・ミルクをあげる時の触れ合いを大切にし、優しく見守ったり語りかけたりする。
3.身近なものと関わり感性が育つ
身の回りのものに興味を持って関わり、感じたこと・考えたことを表現する力を育てる。
<身の回りのものに興味を持つ>
・壁面飾りやモビールなどを利用し、保育室の中に子どもが興味を持てるポイントを作る。
・音や形、色など素材を楽しめるような手作りおもちゃを用意する。
・安全に探索行動ができるよう、障がい物や危険な箇所がないか確認する。
<身の回りのものに自ら関わろうとする>
・絵本や玩具を見つけて子どもが自ら手を伸ばすことができるよう、配置を工夫する。
・保育室内の安全点検をこまめに行い、誤飲事故や指挟み、転倒による怪我を予防する。
<体の動きで気持ちを表現する>
・発声や体の動きによる表現を受け止め、言葉で共感したり、保育士自身もボディランゲージで伝えたり、やりとりをする。
・子どもたちがいきいきと遊ぶことができるよう、興味に応じた仕掛けをつくっていく。
5領域につながる育ちの捉え方
今回の改訂において、乳児期は排泄や食事、睡眠に関わるケアを行うだけでなく、信頼できる人たちとの関わりの中で、心を育てていくことも大切であると明示されています。乳児期から、幼児期以降の5領域の育ちにつながるような視野で、受容的・応答的な保育を目指していくことが保育士に求められています。